大きな一手が打たれました
全国市長会から厚労省に脱退一時金是正の意見
https://www.mhlw.go.jp/content/001178423.pdf
全国市長会の社会文教委員長である埼玉県本庄市長の吉田信解氏から、厚労省に対して脱退一時金に関して実態調査を求める意見が述べられ、厚労省の議事録に載りました。
最後に、外国人住民に対する生活困窮者支援、生活保護制度について、この生活困窮者を取り巻く環境の変化ということで、都市自治体の立場から一言申し上げたいと存じます。
我が国の在留外国人の数は年々増加傾向にあり、令和5年度において過去最多となっております。今日の我が国の経済状況により、国民のみならず、在留外国人の方々も生活面等において、少なからず影響を受けているところでございます。
都市自治体としては、外国人であろうと、住民の皆さん方が生活困窮に陥れば、適切に対応するよう、これまでも努めてきておりますが、多言語に対応する職員の不足などにより、窓口の相談体制など、苦慮しているところもございます。
また、生活保護に関しましては、永住権を持つ外国人の方などについては、厚労省の通知に基づき、我が国民に準じた措置を取らせていただいております。
この措置の中で、生活保護を受給する在留外国人が一定数おられ、そのうち、年金の受給年齢が65歳以上であるにもかかわらず、年金受給資格のない方がいらっしゃいます。
外国人住民の方々が、生活困窮に陥ってしまう原因は様々でありますが、その一例として、年金制度における脱退一時金制度を挙げますと、永住権を持つ外国人の方々についても、当該制度に基づいて一時金を請求し、受け取ることが可能となっております。
この一時金を受け取りますと、請求以前の全ての期間が年金加入期間でなくなり、その後、その方が再入国をすることもできますので、再入国をして改めて年金保険料を積み立てても、年金受給時期の生活に必要な資金としての年金を受給できない可能性がございます。
このことは、こういった外国人住民の方々が将来、生活困窮に陥る端緒ともなりかねない、このように危惧をしているところでございます。
つきましては、外国人住民の方々も安心して我が国で生活を営むためにも、生活困窮者支援制度などの充実のみならず、国が制度管理をしている年金制度についても、脱退一時金を受け取った後、再度入国している方がどの程度いるかなど、そういった実態を調査し、外国人住民の方々の生活基盤の安定につながるよう、国の責任において適切に対応していただきたく、御検討のほど、よろしくお願いいたします。
以上、全国市長会を代表して意見を申し述べさせていただきました。
なお、全国市長会とは、地方自治法第263条の3に規定されている首長らの全国的連合組織のうち、市長らによって組織されているものです。
全国市長会の社会福祉施策に関する提言と吉田信解市の長発言
この意見の前段階として、全国市長会において社会福祉施策に関する提言が決定されていました。
全国市長会ホームページ - 理事・評議員合同会議決定 令和6年度国の施策及び予算に関する提言(令和5年11月15日)
1.生活保護制度について
(1)生活保護制度については、必要な人には確実に保護を実施するという基本的な考え方を維持しつつ、今後とも制度が国民の信頼に応えることができるよう、就労による自立の促進、不正・不適正受給対策の強化、医療扶助の適正化等を円滑に実施するため、所要の措置を講じること。特に、高齢者の受給者が増加しつつある実態を踏まえ、年金制度等の社会保障制度全般について検証し、制度の見直しを図ること。
「生活保護制度」に関する枠組みの話の中で年金制度が触れられていることに注目すべきでしょう。脱退一時金の話は、単にそれ自体の制度改善にとどまらない。
この提言が決定された会議における吉田信解市長の発言を本人が説明しています。
厚労省によれば、外国の方々に特有の事情を踏まえて例外的に設けられている制度ということになっていますが、実はこれ、一度でなく再入国を繰り返して都度受け取ることが可能です。
ただし一時金ですから、一度受け取ると10年間は無年金状態になる。そしてこれを繰り返しているうちに高齢となり、働けなくなって無年金、そして生活困窮という事態に陥ることも予想できるとの指摘があります。
またこの制度は永住者資格がある外国人にも適用されており、年金脱退一時金を受給して帰国し、その後再入国するということを繰り返し、収入が少ないという理由でやがて生活保護の受給対象者となる、これも現在の制度運営上可能となっております。
なお、脱退一時金を受け取った72万件のうち、再入国している方がどのくらいいるのか、出入国を扱うのは入管で、この出入国管理と厚労省の年金の事務が連携されていないため、正確な数字は把握されていないようです。
また日本国民と同じく生活保護の対象になる永住者にも、脱退一時金の支給が認められているということには疑問があります。
我々都市自治体とすると、このまま放っておくと自治体の財政に深刻な危機をもたらすかもしれない事態が、我々に裁量権のない、国の制度に則って、現在また将来的にのし掛かる可能性が指摘されていること、そしてその実態がまだ良くわかっていない、という点を危惧するものです。
生活保護の事務というのは第一号法定受託事務であり、国が4分の3、実施自治体が4分の1を財政負担することとなっています。
そのため、脱退一時金の野放図な適用が放置されることは、究極的には自治体の財源問題であり、その切迫性が市長会からも訴えられたという現実は非常に重いものです。
なお、「生活保護受給者の消費支出は地域経済を支え、税収にもはね返る」という考え方があるようですが、こと外国人に関しては現代の消費実態も相まって妥当しないのではないかと思われます。
全国の議会からも脱退一時金制度是正の意見書が採択
地方自治法
第九十九条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。
現在、地方自治法99条に定めのある「国への意見書採択」を全国の自治体の議会から出してもらおう、という動きがあります。
市長会は行政の長で構成されますが、議会は行政側と分立・牽制関係にある機関ですから、双方から要求されるということ、日本国民たる有権者と直接接する立場にある地方議会からの意見の数が多いということは国を動かす起爆剤となります。
年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書について、福岡県行橋市議会議員の小坪慎也氏が働きかけています。
現在明らかになっている実績として、福岡県行橋市議会、群馬県長野原町議会が国に対する意見書を採択しており、他の自治体でも12月の議事日程で採択の見込みのところ、年明けの議事日程において採択予定のところがあります。
来年度に予定されている年金制度改革改正に向けて、現在動いていない他の自治体の議会でも採択されるべく、有権者から議員に陳情し、請願や議員発案により意見書が採択されるように働きかける運動が行われています。以下でテンプレートが用意されているので置いておきます。
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