事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

光前幸一弁護士『通報者探しと懲戒処分は違法、県民局長の告発の正当性・公益通報』朝日新聞12月12日紙面

こういう弁護士の暴論は「法教育」されない

光前幸一弁護士の論を採用する朝日新聞12月12日紙面

朝日新聞令和6年12月12日朝刊の紙面で、11日に兵庫県の公益通報窓口である財務部による告発文書の調査結果が公表されたことを受けた記事がありました。

4月4日に兵庫県独自の公益通報制度の利用として窓口提出された、元西播磨県民局長による通報が扱われた事案です。

なお、この紙面の内容は11日15時台の朝日新聞デジタルの記事と同様のようです。

前半部分だけでも3月12日付の怪文書と混同した論調であったため指摘してきましたが、弁護士が明示的に異常な事を書いているので改めてツッコミを入れていきます。

『通報者探しと懲戒処分は違法、県民局長の告発の正当性・公益通報』

 公益通報制度に詳しい光前幸一弁護士は「調査結果が県に是正を求めたことが重要なポイントで、今回の調査結果によって、元県民局長による告発の正当性が改めて明らかになったといえる」と指摘する。

 斎藤知事が繰り返してきた「元県民局長の告発は公益通報ではない」という説明は改めて否定されたとした上で、「県は通報者捜しなどの違法な対応を重ねてきた。調査結果が出る前に懲戒処分を科したことも、制度そのものを否定する大きな問題だ」と批判する。

光前幸一弁護士は、①通報者探しと②懲戒処分は違法、③県民局長の告発は正当、④公益通報ではないという説明が否定された、と主張します。

全部的外れです。

斎藤知事が言及してきたのは【3月12日付文書】についてであり、今回調査結果が出たのは【4月4日提出文書】なので、対応していないものを無理やり結び付けた論です。

そもそも制度が違うから通報対象事実が違い、後者の方が遥かに広い範囲の事実を「公益通報」にすることができる。

先に出した文書の悪性を後発の文書で塗り替えて「治癒」できる、ということになると世の中が破壊されるので、そんなことはしてはいけない。

4月4日提出文書の結果で是正措置が為されたことをもって(パワハラや贈答品の受け取りは認定されず)、「懲戒処分は違法」「県民局長の告発は正当」「公益通報ではないという説明が否定された」と言うことは、例えるならば、【民事訴訟で不法行為が認められたから刑事訴訟でも有罪判決が出る】と言っているようなものです。

「通報者探しは禁止」というデマと探索の例外、3号通報の探索禁止の法的義務を事業者に課す根拠の不存在

朝日新聞は『公益通報者保護法が禁じる「通報者捜し」』と書いていますが、一定の場合は通報者捜し=特定=探索をすることは法定指針でも想定されています。

本件は接点すら無い匿名通報であって、文書の記述が曖昧で具体的でなく証拠類の添付が一切無いため、敢えて公益通報者保護法に照らしたとしても「通報者捜し」をするのは実態調査に不可欠であるため許されないわけありません。

この点も報道では再三無視されています。

さらに、3号通報の事案で事業者に対して通報者の特定禁止の義務を導くのは法体系上おかしいということ、立法者が想定していない運用であり、消費者庁が勝手に決めたことだということも、9月時点で書いています。

光前幸一弁護士の主張は、法体系上、異常なものです。

法教育とか言う前に、自分らの業界を教育して欲しい。

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