事実を整える

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朝日新聞記事『斎藤知事は誹謗中傷性が高いと言ったが元県民局長の告発の「公益性」が改めて裏付けられた』の虚偽性

2つの文書の違い

朝日新聞記事「元県民局長の告発の「公益性」が改めて裏付けられた」

公益通報受け兵庫県が「改善策」 識者は「違法な対応を重ねてきた」 有料記事 添田樹紀 北沢拓也2024年12月11日 15時05分

 斎藤知事はこれまで、元西播磨県民局長(7月に死亡)による告発を「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」として、公益通報者として保護すべき対象ではないと繰り返し主張してきた。しかし、公益通報窓口の調査で告発内容の一部の真実性が認められ、一部の是正がなされたことで、元県民局長による告発の「公益性」が改めて裏付けられたことになる

兵庫県の財務部が、元県民局長から4月4日に提出された告発文書に関する調査報告書を公表したことに関して朝日新聞がこのような記事を書いていました。

元県民局長の告発の「公益性」が改めて裏付けられた」とありますが、これは虚偽と言ってよいでしょう。

3月12日付の文書と4月4日に提出された文書を混同した、悪質なものです。

3月12日付の文書と4月4日に窓口提出された文書:制度と対象事実の異同

これまで何度も説明してきましたが、3月12日付の文書と4月4日に提出された文書の違いを端的に言うとすれば、そもそも制度が違うこと、通報対象事実が違うこと、実際に扱われた文書の手続が違うこと、などが指摘できます(内容も一部異なるらしいが、公開情報じゃないので割愛する)。

県の財務部から公表された公益通報結果は【4月4日に県の財務部に申し立てられた通報】に関する【兵庫県の公益通報制度】における話であり、公益通報者保護法の話とは同じではありません

通報対象事実は4月4日提出文書の方が遥かに広範なのであり、公益通報者保護法に基づく公益通報では箸にも棒にも引っかからない事実でも掬えるものになっています。

兵庫県斎藤知事公益通報パワハラ

ただし、兵庫県はどの事実に該当するのかということを、11日の公表時には明らかにしていません。

3月12日付文書は作成者との接点すら無い完全匿名でした。

が、4月4日のものは、兵庫県の窓口に対して実名で提出されています。

こうした事案の違い・次元の違いがあり、片方の文書の扱いの結果から、もう片方の文書の性質や、その文書の扱い、その先の懲戒処分の適切性を論じることはできません。

朝日新聞記事は3月12日付文書に関する同27日の斎藤知事の発言を4月4日告発文書と関連付けている

前掲朝日新聞記事に添付されている図では、3月27日の斎藤知事の「うそ八百」という発言も掲載され、『識者は「違法な対応を重ねてきた』と書いています。

つまり、この記事では3月12日付文書に関する斎藤知事の発言や、元県民局長への懲戒処分に関して、4月4日提出文書に対する報告でもって評価をしているということ。

4月4日提出文書については、元県民局長の正当性はあるでしょう。

が、それは3月12日付文書など(懲戒処分の理由には他に人事データ専用端末の不正利用、職務専念義務の違反、ハラスメント行為、も含まれていた)を理由とした懲戒処分の不適切性を意味するものではないし、ましてや公益通報者保護法上の「公益通報」性を裏書きするものではありません。

素朴な感覚で「改善に繋がったので公益性はあった」と言うのはいいですが、3月12日文書と紐づけた上でそれを言うのは、実態と乖離しています。

「業務改善に繋がっても公益通報じゃない」という裁判例があるくらいですからね。

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