SNS以上にマスメディアの問題が大きい
- 浜田聡議員『兵庫県知事に関し不適切報道、総務省は対応すべき』
- 『告発文書2つの区別が重要、公益通報の報道はミスリーディング』
- 「調査で実態解明可能な程度の具体性に欠けるため公益通報と扱わずとも良い」
- 実際はほとんどが伝聞情報・複数回回答可能な県職員対象のアンケートの仕様
- 浜田聡議員「立岩陽一郎氏が「斎藤元彦知事が殺してしまった」と言ったのは調査対象では?」
浜田聡議員『兵庫県知事に関し不適切報道、総務省は対応すべき』
NHKから国民を守る党の浜田聡議員が12月19日の参議院総務委員会にて、『兵庫県知事に関して不適切報道、総務省は対応すべき』といった旨の質疑を行っていました。
上掲動画では5h23mあたりから。
兵庫県の事案を「放送事業者の報道の問題」として捉えた唯一の質疑と思われるためその一部を紹介します。
『告発文書2つの区別が重要、公益通報の報道はミスリーディング』
浜田議員は、兵庫県の当時の西播磨県民局長が書いた文書に関して『告発文書は2つあることの区別が重要、報道はミスリーディング』と指摘しています。
該当箇所は5h47m辺りから。
兵庫県知事をめぐる問題において、3月12日に西播磨県民局長が各方面に出した告発文書について取り上げます。まず、この兵庫県における告発文書は2つあること。つまり3月12日のもの、そして4月4日のものがあるということ。そしてその区別が重要であることをお伝えします。簡単に両者の違いを述べます。3月12日の告発は匿名で行われ、公益通報というよりは怪文書と言っていいような文書でした。いっぽう4月4日の告発は公益通報制度を通じた正式な通報で実名で提出されています。また、3月12日の告発は兵庫県において公益通報として認められず懲戒処分の対象となったのに対し、4月4日の告発は公益通報として受理され、保護されました。そして3月12日の告発文書の内容は広く知られていますが、4月4日の告発は正式な通報窓口を通じて為されたものであり具体的な公表は為されていません。この違いは極めて重要なものですが、この区別が曖昧にしてテレビなどで報道されていることについて私はテレビ局によって視聴者をミスリーディングする意図がうかがえるものとして懸念を表します。
まず、参照法令と手続が異なります。
兵庫県/兵庫県職員公益通報制度県又は公社等の事業又は職員等の行為について、通報対象となる事実の範囲が明記されています。
- 法令違反
- 職務上の義務違反
- 又はこれらに至るおそれがあるもの
- 上記に準ずるものとして、県政を推進するにあたり県民の信頼を損なうおそれがあるもの
他方で、公益通報者保護法の対象は、上の項目で言えば1番の法令違反の行為のみです。「通報対象事実」と書かれているのがそれですが、法律の別表と【公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令】に記載されている法令への違反や処分の理由となる事実のみが対象です。例えば、公職選挙法や地方公務員法は、対象外です。*1
次に、4月4日の告発についての調査結果が12月11日に公表されました(パワハラ認定はされないという報道が7月20日時点で出ていたが未公表だった)。
この際に「県が公益通報として扱ったんだから、局長の文書は公益性があり、よって、知事による懲戒処分は違法だ!」というような言説が吹き荒れました。
しかし、兵庫県の独自制度は、上掲の通り公益通報者保護法を直接参照はしないので、4月4日の文書がその手続において公益通報として扱われているからといって、3月12日付の文書が公益通報だとか、公益性があるという話にはなりません。それらは独立事象です。通報対象事実が県の方が法律よりも広範だからという以前の話です。
この点を勘違いした報道が朝日新聞などからも為されているのは本当に悪質だと言えます。
「調査で実態解明可能な程度の具体性に欠けるため公益通報と扱わずとも良い」
今回取り上げるのは3月12日の告発文書であります。この文書が公益通報者保護法に定める公益通報に該当するかは議論がありますが、この告発文書についてはアゴラに掲載された記事で公益通報には該当しないという意見には説得力があり、今回資料として用意させていただきました。
浜田議員は3月12日の告発文書について、「調査で実態解明可能な程度の具体性に欠けるため公益通報と扱わずとも良い」という主張に同意するということを議場で明言しています。
アゴラの記事において要点をいくつか読み上げます。当該告発文書の中で匿名性を維持したまま調査によって事実関係が把握できる可能性が十分にあると言えるのは一部のみであり、仮にこの一部を調査するにしてもコストが現実的ではない可能性があるということ。兵庫県の事案の告発文書は調査によって実態解明可能な程度の具体的な記述に欠けるため、通報要件を満たしていないか、全体の記述が公益通報に相応しくないため「不正の目的でなく」の要件をみたしておらず公益通報として扱わなくて良いということ。このような怪文書が公益通報として扱わなければならないとして事業者に義務を負わせられる世の中はおかしくなる、ということでございます。いずれも重要な指摘と思います。
公益通報制度は不正を暴き、社会の透明性を高めるために重要な仕組みです。しかし、その制度が悪用されることによって企業や社会の活動が阻害されることは社会にとって望ましくありません。
あれ?どこかで聞いたことがある表現のような…
ということはともかく、省庁答弁はどの質疑にも「個別の番組にかかわる問題については、まずは放送事業者による自主的自律的な取り組みによって適切な対応が行われることを期待したい」「個別の通報が公益通報に該当するかや、保護要件を充足しているかどうかについてはコメントする立場に無い」といったようなものに終始していますが、こういわざるを得ないのは理解できます。
本来は公益通報者保護法3条や6条の保護要件を充足するか?という話と、2条の「公益通報」に該当するか?という話は別なのですが、3条や6条の話で公益通報かどうか?と論じているものが多いことに要注意です。省庁答弁は、しっかりとこの切り分けをしているので安心感があります。
実際はほとんどが伝聞情報・複数回回答可能な県職員対象のアンケートの仕様
また、浜田議員からは百条委員会が実施した県職員アンケートが、複数回回答可能な仕様だったということが指摘されていました。これは従前、兵庫県議会議員の増山誠氏が百条委員会事務局に確認した内容を投稿していました。
過去記事でもまとめてますがアンケート回答結果の「記名」部分を検証したスライドを掲載します。
「【Q7】知事のパワーハラスメントについて」という項目の【記名】の者による回答のうち、「A:目撃、経験等により実際に知っている」についての自由記述欄をすべて確認しましたが…
- パワハラとは真逆の事実が書かれているもの
- 知事ではない者の発言
- 業務上の通常の範囲の指示に過ぎないこと、それをきっかけとした思い込み、
- 情報源不明の伝聞及び再伝聞情報
- 具体的な知事の言動無し
- 自己の人事への不満を言い募るだけのもの
こういった記述が大半を占めます。
このアンケート結果として公表されている資料は、百条委員会の事務局が精査・整理したものではなく、回答した職員がアンケート回答の際に選択した項目がそのまま使われているという事が分かります。
しかしながら、このような代物であるにもかかわらず、ネット上の言説の研究者が、「A:目撃、経験等により実際に知っている」の回答者「140」という数字をそのまま実際に体験・目撃した者として扱い、「斎藤支持者の認識は陰謀論の特徴」とまで書く例も見られました。
【集計結果の数字だけ見て、元資料をちゃんと読んでない】というのは研究者として致命的ですが、これはアンケート結果についての報道が影響した可能性があります。研究者であっても、報道によって誤った認識が長期に渡って固定化される例は、過去にも見られました。
ただ、多くの職員が伝聞なのに「自分事」として回答した背景には、斎藤知事に近い幹部が指摘・叱責を受けた事例を他の部局も含めてシステムで共有していたことがある、ということが伺えます。
浜田聡議員「立岩陽一郎氏が「斎藤元彦知事が殺してしまった」と言ったのは調査対象では?」
そして、フジテレビ系の「めざまし8」という番組において「Infact」のジャーナリストである立岩陽一郎氏が、元県民局長に関して「(斎藤元彦氏が)人を追い込んで殺してしまった。こういう状態に知事が居て、そこに副知事も加担していた」などと発言したことについても浜田議員が質疑していました。
自死の原因が明確になっていない状況下でのこのような発言は大きな問題であると考えます~省略~いずれにせよ自死の背景が明らかになっていない中で、同氏による斎藤知事が人を殺したという旨の発言がテレビ報道されたのであれば大きな問題であると考えます。この問題の調査が必要であると考えます。
記録として保存させて頂いてます。 pic.twitter.com/PQtiQTvmBv https://t.co/nFptNOE0S0
— たか🇺🇦医療労務コンサルタント (@taka_19750416) 2024年11月23日
立岩氏の主張は時系列からしても奇妙です。
県民局長の懲戒処分は5月7日です。
その後、7月19日の百条委員会で事前に県民局長が、対象によって異なりますが「噂」「聞いた」「あくまで憶測」などと書面で陳述した部分があるものが公開されましたが、これに先立つ7月7日に自死されています。懲戒処分後に知事が「追い込んだ」ということは、一見すると無理があるストーリーです。
この理由を軽々に論じるわけにはいきませんが、まさに実態解明が為されるべきなんじゃないでしょうか?
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*1:公益通報者保護法2条3項に定義がある。
3 この法律において「通報対象事実」とは、次の各号のいずれかの事実をいう。
一 この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。以下この項において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実又はこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実
二 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)