地震、大雨、暴風、感染症流行等の場合に学校が休みになる基準は何でしょうか?
子供が公立の学校に通っているなどの場合、この点が気になりますよね。
臨時休業=休校の基準について整理していきます。
なお、休校の判断権者についてはこの記事で言及しています。
地震、大雨、台風の場合の臨時休業の基準
震災時の休校判断については学校教育法施行規則に定めがあります。
第六十三条 非常変災その他急迫の事情があるときは、校長は、臨時に
授業を行わないことができる。この場合において、公立小学校について
はこの旨を当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会(公立大学法
人の設置する小学校にあつては、当該公立大学法人の理事長)に報告し
なければならない。
非常変災とは自然災害をはじめとする緊急事態全般を指す用語です。ただし、感染症の場合の休校は学校保健安全法が根拠規定となります。
非常変災時の臨時休業=休校の基準
この場合は臨時休業を決める基準を定めている法令はありません。よって、各自治体や教育委員会、学校がマニュアルを作成して対応しているのが現状です。これは地域によってマニュアル作成主体が違いますし、基準もその地域や学校によって様々在り得ます。
なので、その地域にお住まいの方が教育委員会に確認するか、学校等で休校の基準が書かれた文書が配布されるはずなので、それに依るべきことになります。教育委員会が公にしているものよりも、学校の基準が優先して適用されると考えるべきです。
大阪の震度6弱の地震に関連して各自治体について調べてみました。
自治体別の臨時休業の基準
例えば和泉市の非常変災時の措置については、震度5弱以上の地震が当日の0時以降、登校前に発生した場合、臨時休業と定められています。東大阪市の非常変災時の措置については、登校前に震度5弱以上の地震が発生した場合は臨時休業となっています。
大阪市の非常変災時の措置について定めたものはネット上では公開されていませんが、大阪市教育委員会に臨時休業の要件を伺ったので以下にまとめます。
- 朝7時の時点で大阪市に暴風警報・暴風雪警報・特別警報が発令している
- 朝7時の時点でJR大阪環状線と市営地下鉄の両方が運行停止している
- 地震に係る警戒宣言が発令(内閣総理大臣が発令)している
- 警報等がなくても気象状況や通学路の状況等を鑑みて学校長が判断する
学校独自に基準を定めている場合もあります。例えば大阪市の小学校の一例がこちらです。魚拓:http://archive.is/7tCXK 微妙に休校の基準が違うのがわかります。
これらを見ると、地震の場合、大阪市では気象庁発表の震度という類型的基準は採用せず、実際の交通事情などの具体的事情に照らして判断される構造であるということです。
蛇足ですが、和泉市や東大阪市は「登校前」に事象が発生すれば一律臨時休業としているのに対し、大阪市は7時以降に各種警報や地震が発生しても、ひとまずは休校にはならないという運用を採っています。この考え方は賛否があるかもしれませんが、都市部は建物が密集していることから、比較的耐震力が高い学校に来た方が安全である確率が高いことと、途中で引き返すことによる交通の混乱を防止するためにも、大阪市の考え方はやむを得ないのではないかなと思います。
緊急速報メールで、避難準備、勧告、指示は来ますよ。
— 山善商会🌼小吉倶楽部🌼ロボット判定されまくり。 (@mouzou_yamas) June 22, 2018
今回の様に、学校によっては登校中、登校済みの所は返さずに預かってくれた方がありがたいですね。避難所となる学校で待って貰えたら親は安心。片親の家庭なら、あの状況で帰宅もままならないので給食提供も親は安心と思いました。
とても参考になります。
— Nathan(ねーさん)@ロシアワールドカップ (@Nathankirinoha) June 22, 2018
「学校は避難所になる」というのは重要な視点ですね。
学校に来るように仕向けている制度設計がダメだとは決して言えないということですね。
このように、肯定的な意見もあるということは一応示しておきます。
インフルエンザ等感染症の場合の出席停止・臨時休業基準
この場合は学校保健安全法に根拠があり、出席停止の権限者は校長、臨時休業(俗にいう学級閉鎖・学年閉鎖・学校閉鎖)の権限者は「学校の設置者」が規定されています。
これを受けて、学校保健安全法施行規則の21条では校長は感染症による出席停止が可能とされ、18条に感染症の種類の列挙がなされています。
「学校の設置者」とは国や地方自治体、学校法人など様々ですが、地方自治体周りで言えば大学は首長、それ以外は教育委員会が管理を行うこととなっています。教育委員会から学校長に判断が委任されている例がほとんどです。
とはいえ、校長や教育委員会のみならず、都道府県の保健部局等の外部から休校等の要請が来ることもあります。それを受けて校長等が休校を判断しても、越権行為などとはなりません。
気象庁の「特別警報」と地震の関係
自治体や学校が公表している臨時休業の基準に「特別警報が発令している場合」というものがあります。注意すべきは、多くの場合はここでいう「特別警報」には大地震は含まれていない可能性が高いということです。
気象庁の大地震の扱い
気象庁に伺ったところ、震度6弱以上の地震は法体系上の位置づけとしては特別警報となっているが、発表する際の名称としては「緊急地震速報」であり、警報解除は観念できないものとなっているとのことでした。おそらく地震の大きさによって類型的に危険を測ることが困難なためだと思いますが、その不都合を回避するために気象庁では震度6弱以上の場合には特別警報に「位置づける」と記述しています。
つまり、震度6弱以上の大地震が発生していても、発表上の扱いは「特別警報」ではないということです。現に、自治体の多くは「特別警報」の発令と地震の発生については分けて記述しているところが多いです。
これは混乱しました。臨時休業の基準を特別警報が出ているかどうかで定めている自治体や学校の場合、「じゃあ地震の場合はどうなんだ?」となることが多々あると予想されます。実際、私も理解するのに時間がかかりました。
たとえば枚方市の非常変災時の措置基準のページを見ると(こちらでも可)、特別警報については記述がありますが、地震の場合については既述がなく、今回の事態に対してどう考えていいのかわかりません。
魚拓:https://web.archive.org/web/20180622024322/https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000011/11927/kinnnyuuzinosotinituite.pdf、http://archive.is/jZdyd
そのせいで、別途文書等で臨時休業を発表するということになっていました。
魚拓:https://web.archive.org/web/20180622024649/https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000019/19298/hijouhennsaiji.pdf
自治体や学校ごとに臨時休業の基準を公表しているところは、こういったことを理解していないと思われるところもあるのだろうと思います。ここは各自治体で改善すべきことだと思います。
日本気象協会のtenki.jpの表記
現時点で日本気象協会が運営しているtenki.jpを見ると、特別警報の項目には「地震」がありません。これは地震が継続的な事象ではなく、状態が継続するということが観念できないものだからということと、地震が発生する危険が高いという状況が把握できるほど現在の科学的知見は発達していないからでしょう。
魚拓:https://web.archive.org/web/20180622023411/https://tenki.jp/bousai/warn/6/30/2710000/
よって、「警報が出ていないから地震は無く、臨時休業にはならない」とは言えないのであって、このズレが面倒なことになっていると思います。
この辺りが分かりにくい自治体や学校があれば、改善するよう要求するべきでしょう。
まとめ
- 感染症の場合は法令に休校等の基準が定められている
- それ以外の地震・大雨・暴風・台風等の場合には休校等の基準は法令にはない
- ただし、自治体や学校毎に基準が定められている
- 地震・津波・火山は気象庁の発表上は「特別警報」ではないので情報把握に注意
- 最も重要なのは学校で配布される休校の基準の資料
災害時の情報発信・情報収集は人の命にかかわる問題であるため、より誤解が生じないように各所で表現を工夫するなどして欲しいと思います。
以上