事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

蓮舫議員、菅総理の施政方針演説内容を事前漏洩、ツイート削除:東大教養学部の石井部長の式辞を思い出せ

蓮舫が首相施政方針演説を漏洩し、ツイート削除
蓮舫議員が、1月18日の菅総理の施政方針演説内容の冒頭部分の画像を午前中に事前漏洩していた問題で、ツイート削除していたことが分かりました。

蓮舫が重大なルール違反!総理の施政方針演説原稿を無断でネット公開→自民議員「国会軽視も甚だしい」 | KSL‐Live!

他、この話がどう問題なのかについて。

蓮舫議員、菅総理の施政方針演説内容を事前漏洩、ツイート削除:魚拓

蓮舫が首相施政方針演説を漏洩し、ツイート削除

https://twitter.com/renho_sha/status/1350976736499019781魚拓

https://twitter.com/renho_sha/status/1351033393232936960魚拓

蓮舫議員が菅総理の施政方針演説内容を事前漏洩したもののツイート削除しましたが、消せば増えます。

質問通告「漏洩」だとして騒いでいた蓮舫ら立憲民主党議員としてのダブルスタンダード

魚拓

立憲民主党議員ら(国民民主党に一時期在籍し、結局戻った議員など)は、過去には官僚が答弁作成のために私人たる関係者への聞き取りをした行為が「質問通告内容の漏洩」という、意味不明の批判をしていました。

森ゆうこ議員「質問通告内容の漏洩・流出」は公務員の守秘義務違反なのか? - 事実を整える

この件を「漏洩」と言うなら、蓮舫議員が全世界に発信した行為は「漏洩」以外の何物でもありません。

原稿内容は予定稿、発言されて初めて正式なものになる:東大卒業式での「大河内総長の肥った豚よりも痩せたソクラテス」

当時の東京大学教養学部長 石井洋二郎 氏の式辞をみれば、今回の蓮舫議員の件の何が問題なのかが分かるはずです。

平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞 - 総合情報 - 総合情報

東京大学の卒業式といえば、もう半世紀も前の話になりますが、東京オリンピックが開催された年である1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉が思い出されます。曰く、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」。
当時、私はちょうど中学校にあがる年頃でしたが、この言葉は新聞やテレビでかなり大きく報道されましたので、鮮明に記憶に残っております。また、子供心に、さすが東大の総長ともなると気の利いた名言を残すものだと、感心したこともなんとなく覚えております。皆さんの中にも、どこかでこの言葉を耳にしたことのある人は少なくないでしょう。
ところが、これはある機会に一度お話ししたことがあるのですけれども、じつはこの発言をめぐっては、いろいろな間違いや誤解が積み重なっているんですね。

まず第一の間違いは、「大河内総長は」という主語にあります。というのも、これは大河内先生自身が考えついた言葉ではなく、19世紀イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用だからです。
東大の総長ともあろうものが、他人の文章を無断で剽窃したのか、と思われるかもしれませんが、もちろんそういうわけではありません。式辞の原稿を見てみますと、そこにはちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」と書かれています。「なれ」という命令ではなく「なりたい」という願望になっている点が少し違っていますが、それはともかく、ここでははっきりJ・S・ミルの名前が挙げられていますから、これは作法にのっとった正当な「引用」です。ところが、マスコミはまるでこれが大河内総長自身の言葉であるかのように報道してしまった。そして、世間もそれを信じ込んでそのまま語り継いできたというのが、実情です。
次に第二の間違いですが、これはもっと内容に関わることです。じつは、ジョン・スチュアート・ミル自身は「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とも「なりたい」とも、全然言っていないのですね。さきほど題名を挙げた『功利主義論』の日本語訳を見てみますと、こう書いてあります。

満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。

大河内総長の言葉とはだいぶ違いますね。ちなみに、英語の原文はこうなっています。

It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied.

この原文を見ると、どうやらさきほど引用した日本語訳は正確なようですから、大河内総長のほうがこれをまったく別の文章に改変してしまったとしか考えられません。たぶん漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのでしょう。その結果、「満足した豚」は食べたいものを食べたいだけ食べるということで「肥った豚」になり、「不満足なソクラテス」は食べたいものにも安易に手を出さないということで「痩せたソクラテス」になったものと推測されます。しかしこれでは原文とまったく違ったニュアンスになりますから、ミルが語った言葉として紹介するのはさすがに問題なのではないか。下手をすると、これは「資料の恣意的な改竄」と言われても仕方がないケースです。
ところが、間違いはこれだけではないんですね。じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれていたのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところがもとの草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった、というのが真相のようです。これが第三の間違いです。
つまり、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけです。まず「大河内総長は」という主語が違うし、目的語になっている「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」というフレーズはミルの言葉のまったく不正確な引用だし、おまけに「言った」という動詞まで事実ではなかった。というわけで、早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているという次第です。

蓮舫議員が公開したのは冒頭部分でしたが、それでもその内容が実際に読まれるかどうかは菅総理次第なわけです。

菅総理が読み上げる前に原稿を上げる行為が、嘘や誤解の拡散になり得る。

当時の東大教養学部の石井部長が示した過去の教訓の理解が活きたシーンでは無いでしょうか。

以上