事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

森ゆうこ議員「質問通告内容の漏洩・流出」は公務員の守秘義務違反なのか?

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森ゆうこ議員が指摘する「質問通告の内容を官僚が事前に外部に提示すること」は公務員の守秘義務違反なのでしょうか?判例実務を確認しましょう。

国民民主党の4議員が記者会見

「国会議員の質問権の侵害だ」予算委質問の事前漏洩で原口国対委員長 - 国民民主党

舟山委員長は、「野党議員がきちんと事前通告した質問を外部に漏らしてその質問を封じ込めようとするのは、国会議員の質問権の侵害にあたり、看過できない」と、議員質問の意図的な漏洩を強く批判した。

 森ゆうこ参院予算委理事も「昨夜、くだんのネット番組の内容を知り、すごくびっくりした。私が通告した質問だけでなく、さらに細かい役所とのやり取りまでもがさらされていた。私の質問権の侵害であり、憲法51条によって保障された国会議員の発言の自由、憲法そのものや民主主義への重大な挑戦だ」と、述べた。

国民民主党の一部議員の記者会見ですが、めちゃくちゃなことを言っていますね。

メディアでも「問題視されている」と伝えられています。

森ゆうこ議員「質問内容が流出」 政府側への事前通告:朝日新聞デジタル

「質問権の侵害」とはどういう意味か?

渡瀬裕哉氏の指摘のように、事前に質問内容が漏れると、追及される関係団体からの圧力がかかって質問自体ができなくなるかもしれない、ということを言いたかったんだろうと思います。

国民民主党のHPでは、そのようなロジックがまったくかかれていないのでどういう意味で質問権の侵害だと言っているのか不明ですが、このような理屈しか有りえないでしょう。

憲法51条の免責特権は何ら関係が無い

憲法51条というのは後に詳述しますが、国会議員の免責特権の話です。

質問通告の内容を外部が知ることについての話で取り上げるのは無関係なので不適当です。

「憲法」「国会議員の発言の自由」というそれっぽいワードを持ち出して自己正当化を図るのは愛知県知事の大村知事と共通するものがあります。

参考:愛知県の大村知事「河村市長の抗議は行政による検閲で憲法違反」の詭弁:トリエンナーレ表現の不自由展

高橋洋一嘉悦大学教授が把握した内容

森ゆうこ議員は、6月にも国家戦略特区について同様の質問をしていました。

その質問内容は、毎日新聞の報道内容をベースにしたものです。

それを官僚も高橋洋一氏も知っているので、その後、毎日新聞から取材があったかという確認があったというだけのようです。

それに、10月11日の当時は台風19号が関東に上陸する直前であり、通告期限後の忙しい時期に詳細な確認をしているわけがないというのは誰にでも分かる話です。

質問内容が国民に知れ渡ることがマズイのか?

通告内容はのちに国会の場で全国民に知れ渡ることになり、アーカイブも残ります。

それが「漏洩」して何がマズいのでしょう?

原口議員は「漏洩」がマズイのではなく国家公務員法上の問題があったのでは?と言っていますが(高橋洋一氏は通告内容ではなく通告事項に関連するものを聞いただけだが)、同じことを言っているというのが分からないのでしょうか?

通告内容の事前周知は国家公務員法上の守秘義務違反なのか?

国家公務員法 (秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。
○2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。
○3 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。

質問通告の内容を外部者が事前に知っていたとして、所轄庁の長が許可しているとはいえないでしょうから、質問通告の内容が「職務上知ることのできた秘密」に該当するか?が問題になります。

国家公務員法100条1項の「職務上知ることのできた秘密」の意味

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内閣官房:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hozen/090824/siryou.pdf

究極には「秘密」に該当するか?の問題でしょう。

最高裁決定 昭和48(あ)2716 昭和52年12月19日

同条項にいう「秘密」であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、右「秘密」とは、非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるものをいうと解すべき(最高裁決定 昭和48(あ)2716 昭和52年12月19日

この事案では、非公知であった「営業庶業等所得標準率表」と「所得業種目別効率表」が問題になりました。これを公表すると、青色申告を中心とする申告納税制度の健全な発展を阻害し、脱税を誘発するおそれがあるなど税務行政上弊害が生ずるとされたために「秘密」とされました。

最高裁決定 昭和51(あ)1581 昭和53年5月31日

国家公務員法109条12号、100条1項にいう秘密とは、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいう(最高裁決定 昭和51(あ)1581 昭和53年5月31日

この事案では外務大臣と米国大使の間で交わされた沖縄返還協定の会談に関する概要が非公知であり、会談内容については当事国が公開しないという国際的外交慣行があることから、これを漏示することは相手国のみならず第三国の不信感も招き、将来の外交交渉が阻害されるから、実質的にも秘密として保護するに値するとされました。

政府の閣議決定

これは政府が質問書に対する答弁書の形でも閣議決定をしています。

衆議院議員逢坂誠二君提出政府職員の通報が公益通報保護制度の対象になるか否かの基準に関する質問に対する答弁書

国家公務員法第百条第一項に規定する「秘密」とは、一般に知られていない事実であって、他に知られないことについて相当の利益を有するもの、すなわち、非公知性及び秘匿の必要性の二つの要素を具備している事実をいうところ、具体的な事実が当該「秘密」に該当するかどうかは、事案に即して個別具体的に判断すべきものであるため、一概にお答えすることは困難である。

質問通告の内容は「秘密」なのか?

さて、本題です。

通告内容が議員から公開されていない場合には「非公知の内容」と言えるでしょうから、ここでは「秘匿の必要性」が争点になるでしょう。

まず、一般に質問通告の内容というのは、後に全国民に公開される国会において明らかになるものです。それに原口議員らが自ら言うように、通告内容を事前公開していることは多々あると言うのですから、一般的に通告内容を秘匿すべきものとして扱っているという慣行は存在しないと言えます。

次に、今回、森ゆうこ議員が通告した内容は国家戦略特区と特区ビズ社との関係についてのものですが、これは毎日新聞の6月の報道や国家戦略特区のHP上に記載のある情報をベースにしたものであり、森ゆうこ議員が新たに取得した非公知の情報は無いと言えます。

 

しかも、高橋洋一氏は「前に毎日新聞からの取材があったがその後取材があったか、と聞かれただけ」であると言っているのですから、何の不都合があるのかさっぱり分かりません。

魚拓はこちら

森ゆうこ議員自らが11日の時点で質問項目として「国家戦略特区」に関することを予定していることからも、何ら問題の無い行為であると言えるでしょう。

毎日新聞と森ゆうこ議員が国家戦略特区について難癖をつけている、ということは6月時点で明らかなので、質問内容についても、「国家戦略特区について」というだけで大部分が予想できるものでしょう。

参考:【毎日新聞の捏造】原英史国家戦略特区ワーキンググループ委員と特区ビズの関係

参考:原英史はコンサル会社との特区ビジネスで「収賄罪相当」「公平性の逸脱」なのか

森ゆうこ議員の通告内容は守秘義務違反にはならない

以上、森ゆうこ議員の通告内容は、仮に事前に外部に知れ渡ったとしても守秘義務違反にはなりません。

特に、高橋洋一氏に確認されたのは質問の詳細ではなく、質問項目とそれに関する何らかの毎日新聞からの取材があったかどうかに過ぎないので、完全に問題ありません。

森裕子の質問通告の遅れというハラスメント問題

台風接近中の質問通告、霞が関に波紋 SNS投稿相次ぐ :日本経済新聞

そもそもの発端は森裕子議員自身の質問通告の遅れによる役人へのハラスメントです。

問題のすり替えで逃げ切りを図ろうとしているだけであり、国会議員としての適格性を疑います。除名されればいい。

以上