事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

【令和元年台風19号】内閣府が災害対策本部を設置⇒今さら!遅い!という勘違いが相次ぐ

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令和元年台風19号の被害を受けて内閣府が災害対策本部を設置しました。

「今さら!」「遅い!」と言う勘違い、もうやめましょうよ。

安倍総理、内閣府に非常災害対策本部を設置

安倍総理が内閣府に非常災害対策本部を設置したのは、台風19号が過ぎ去ったあとの13日午前9時30分頃です。

安倍首相、非常災害対策本部の設置を表明 | 共同通信

速報時間は13日の 09:50 (JST)です。

こちらは9時36分です。

「いまさら?」「遅い!」という勘違いコメント

このタイミングでの非常災害対策本部の設置について、「いまさら?」「遅い!」などといって憤って見せている人たちがいます。

まぁ、災害が起こる度に繰り返されるいつもの風景ですね。

これはあまりにも無知から来る勘違いです。

災害対策基本法上の各種「災害対策本部」

内閣府が設置する「各種の災害対策本部」は災害対策基本法に根拠があります。

ただ、国=内閣府が設置するものと都道府県・市町村が設置するものとでは名称も設置要件も異なります。関係規定を並べます。

都道府県災害対策本部
第二十三条 都道府県の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、都道府県知事は、都道府県地域防災計画の定めるところにより、都道府県災害対策本部を設置することができる。(以下省略

市町村災害対策本部
第二十三条の二 市町村の地域について災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるときは、市町村長は、市町村地域防災計画の定めるところにより、市町村災害対策本部を設置することができる。(以下省略

非常災害対策本部の設置)
第二十四条 非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。(以下省略

緊急災害対策本部の設置)
第二十八条の二 著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣府に緊急災害対策本部を設置することができる。(以下省略

都道府県や市町村が設置するものは「災害対策本部」

内閣府が設置するものは「非常災害対策本部・緊急災害対策本部」です。

設置できる要件を見ると、都道府県・市町村と内閣府では違いがあるのが分かります。

災害の規模等から事後的に設置される内閣府の災害対策本部:激甚災害指定も同様

都道府県や市町村では【災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合において、防災の推進を図るため必要があると認めるとき】に設置可能です。

対して内閣府は【非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるとき】です。

前者は「災害が発生するおそれ」「必要がある」で設置可能です。

後者は「発生した場合において」「特別の必要がある」ときに設置可能です。

要するに、内閣府が非常災害対策本部・緊急災害対策本部を設置するのは基本的に事後的であることが法律によって予定されているのです。

ここでの「災害対策」は「被害拡大防止」や「復興支援」と評価される事項にも渡る話であるということです。

これは激甚災害指定も同様です。「災害」には自然現象の規模だけでなく、「被害状況」も含めた意味があるということです。被害状況を把握できないのに激甚災害指定なぞできる訳がない。

現場の自治体の情報収集と判断が優先:設置の義務は無い

当たり前のことですが、地域の自治体の方が、国よりもその地域の事情について詳しく把握できる状況にあります。

ですから、まずは都道府県や市町村が「災害対策本部」を設置して対応し、その後に内閣府が非常or緊急災害対策本部を設置するというのは至極当然の話なのです。

自衛隊も、基本的には自治体からの要請を受けて部隊を派遣します。

なお、「災害対策本部を設置しなければならない」とはなっていませんから、設置の義務はありません。

そういった形式的な組織を作らなくとも、既に情報収集、対策を実行しています。

それまで何もしていない、ということではないのです。

「非常災害」とは

逐条解説災害対策基本法第3次改訂版 では、「非常災害」に指定されるのは諸般の事情を斟酌して決めるとあり、具体的な運用としては概ね以下の通りとあります。

①風水害の場合、死者・行方不明者が百人以上であり、かつ、全壊・流出戸数が百戸以上である場合

②死者・行方不明者が百人未満であっても、全壊・流出戸数が相当数に及ぶような場合(例としては昭和三十九年の新潟地震、昭和五十八年の三宅島噴火等がある)

③災害応急対策の実施の為特に必要がある場合(例としては、行方不明者の捜索の必要があった昭和五十九年の長野県西部地震がある。)

上記③以外は被害の規模を考慮した事後的な判断だということがわかります。

情報連絡室の設置・災害救助法の適用の閣議決定など

台風19号 政府「情報連絡室」で情報収集 自衛隊は即応態勢 | NHKニュース

大型で非常に強い台風19号が接近しているため、政府は今月8日に総理大臣官邸の危機管理センターに設置した「情報連絡室」で情報収集などを進めています。

総理大臣官邸では杉田官房副長官と沖田内閣危機管理監らが警戒に当たっています。

安倍総理大臣は官邸に隣接する総理大臣公邸で待機しています。

非常災害対策本部を内閣府に設置するよりはるか以前から総理官邸では「情報連絡室」を設けて情報収集に当たっていましたし、防災情報のページ - 内閣府を見ると災害救助法をどの地域に適用するかの閣議決定も行っています。

こういう事前の動きを見ずに「災害対策本部が設置されたか否か」で判断する1ビット脳は本当に害悪でしかありません。

つい半月前の千葉県の台風被害の際にもこのような視点で非難が浴びせられていましたが、現場からは以下のような指摘があります。

各省庁は既に「災害対策本部」を設置していた

内閣府が災害対策基本法上に明文の根拠がある非常or緊急災害対策本部を設置するのとは別に、各省庁において「災害対策本部」が設置されることがあります。

今回も、国交省において災害対策本部が11日の時点で設置されていました。

これは、災害対策基本法36条1項の所掌事務として各省庁の防災計画に基づいて設置されるものです。

(指定行政機関の防災業務計画)
第三十六条 指定行政機関の長は、防災基本計画に基づき、その所掌事務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。

国土交通省防災業務計画(令和元年8月修正) - 国土交通省

第 3 節 国土交通省非常災害対策本部及び国土交通省緊急災害対策本部等

災対法第2条第1項に規定する災害(以下単に「災害」という。)が発生した場合において災害応急対策及び災害復旧のための活動を迅速かつ一体的に推進するため、「国土交通省災害対策本部の設置に関する訓令」(平成15年国土交通省訓令第8号)に基づき、非常災害が発生したときは国土交通省非常災害対策本部(以下「非常本部」という。)を、著しく異常
かつ激甚な非常災害が発生したときは国土交通省緊急災害対策本部(以下「緊急本部」という。)を、それぞれ臨時に設置するものとする。

施設等機関及び地方支分部局の長は、災害が発生するおそれがある場合若しくは災害が発生した場合に、所掌事務に係る防災対策を推進するため、必要に応じて、非常本部及び緊急本部に準じた組織(以下「災害対策本部」という。)を設置するものとする。また、必要に応じ、現地に災害対策本部に準じた組織を設置するものとする。

「災害が発生するおそれ」 の段階で「災害対策本部」を設置する、とあります。

こちらは予測した上で「事前」に設置するものであるということが書いてありますし、「設置するものとする」とあるので必ず設置されるものです。

では、どういう場合に「おそれ」があるのか?ということについては国土交通省災害対策本部設置基準 で細かく書いてあります。

なお、この防災計画と設置基準は各省庁によって異なります。

防衛省は災害対策本部を設置していないのか?という愚問

防衛省が災害対策本部を設置する場合というのは、かなり限定されています。

防衛省防災業務計画を見ると、予想される具体的な地震が指定されていて(南海トラフ地震など)それが発生した場合や「原子力災害」など項目が指定されている場合に災害対策本部が設置されます。

それ以外には、「災害が大規模な場合その他特に必要があるとき」「大規模地震対策特別措置法第9条の規定により警戒宣言が発せられたとき大規模地震対策特別措置法第9条の規定により警戒宣言が発せられたとき」に防衛省や現地に災害対策本部が設置されるようになっています。

また、防衛省自身が設置するもの以外に、「災害対策基本法上の非常or緊急災害対策本部が設置されたとき」にはそちらに人員を派遣することも行うようになっています。

災害対策室・災害対策連絡室の設置

第四 大規模災害時の措置

2 非常本部等への連絡員の派遣及び対策本部等の設置等
⑴ 災害の発生に際しては、必要に応じて、別に定めるところにより、統合幕僚監部に災害対策室(室長:統合幕僚監部運用部長)又は災害対策連絡室(室長:統合幕僚監部運用部運用第2課長)を設置するものとする。

「災害対策本部」という名称以外にも災害対策のために動く組織はあるのです。

政党の「災害対策本部」は任意の組織

国政政党や地方政党が「災害対策本部を設置」と言うことがありますが、これは法律上の根拠はありません。あくまでも任意の組織です。

別に、こういう名称の組織を設置していなくとも、災害対策・復興支援を行っている政党はあります。ここでも「災害対策本部を設置していないから何もしていない」などとは言えないということを付言します。

まとめ

  1. 災害対策基本法上の「災害対策本部」は都道府県と市町村
  2. 同法上、内閣府が設置するのは「非常災害対策本部」と「緊急災害対策本部」であり、基本的に被害の規模を斟酌して事後的に設置される
  3. 各省庁の「災害対策本部」は法律上ではなく各省庁の設置基準がある
  4. 政党が「災害対策本部」を設置することもあるが上記とは無関係で自主的に設置してるだけ

昨年の大阪の地震でも災害対策本部が設置された際の情報が錯そうしましたが、災害にかこつけて「権力批判をしてみた」という人たちが誤解を撒き散らすのは本当にやめてほしいと思います。

 以上