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韓国の人種差別条例:京畿道,ソウル,釜山の「戦犯企業ステッカー・購入制限」は日本ヘイト条例

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韓国の京畿道(キョンギド)、ソウル市、釜山市の条例で「戦犯企業ステッカー」或いは「戦犯企業製品購入制限」を規定する条例が可決されました。

WTOルールに違反してるのではないか?と言われていますが、それ以前に人種差別撤廃条約上で禁止されている人種差別に該当するのではないでしょうか?

京畿道の戦犯企業シール・ステッカー条例

韓国 「戦犯企業のステッカー」条例可決・成立 日本製品排除の動き - FNN.jpプライムオンライン

京畿道議会も日本戦犯企業ステッカー法案通過、ソウル・釜山・忠北に次いで4番目の「反日条例」-Chosun online 朝鮮日報

 京畿道議会が10日、道内の各校が保有している日本の戦犯企業生産製品の認識票(ステッカー)=写真=を貼り付けることができるようにする「京畿道教育庁 日本戦犯企業の記憶に関する条例案」が賛成111名、棄権1名で可決された。
 この条例案は、首相室が発表したリストを根拠に、戦犯企業284社で製造された20万ウォン(約1万8000円)以上の備品に戦犯企業の製品であることを知らせるステッカーを貼ることを決めた。教育監(教育委員会に相当する教育庁のトップ)は傘下機関や各校の戦犯企業製品保有・使用実態を調査し、毎年公表しなければならない。ビームプロジェクター、ビデオカメラ、プリンタ、コピー機などの製品が該当するものと見られる。

日本「戦犯」ステッカー可決 貼るのは生徒の判断 韓国:朝日新聞デジタル

ステッカーを貼るかどうかは生徒らが話し合って決め、「正しい歴史認識」を養う機会にするという。

条例案を見ると、ステッカーを貼るのは学校等の公的機関で保有している高額備品についてステッカーを貼るということで、商品化して販売する際には関係ないものとなっています。

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ソウル市・釜山市の戦犯企業製品購入制限条例

「日本戦犯企業製品購入制限」条例案、ソウル・釜山市議会可決-Chosun online 朝鮮日報

日本製品の購入制限条例可決 「戦犯企業」を規定=ソウル市議会-Chosun online 朝鮮日報

ソウル市議会は同日、臨時会本会議で、「日本戦犯企業製品公共購入制限に関する条例案」を採決なしの満場一致で可決した。同条例案は、首相室傘下の調査委員会による調査結果を根拠に規定された戦犯企業284社(株式保有、吸収・合併なども含む)で作られた製品を、ソウル市やソウル市教育庁が購入しないことや、こうした文化が形成されるよう市長や市教育監(教育委員会に相当する教育庁のトップ)が努力しなければならないと規定している。

省略

同日、釜山市議会もソン・ヨング議員=共に民主党=が代表発議した「日本戦犯企業製品公共購入制限および表示に関する条例案」を可決した。この条例案は、戦犯企業製品の購入を制限するだけでなく、戦犯企業が作ったものと調査で分かった製品にステッカーを貼るという条項も含まれている。

こちらも一定の公的機関に対して指定された企業から製品を購入することを制限するよう努力義務を課すものであり、対象企業の営業・販売そのものを規制するという類のものではないのが分かります。

ソウル特別市、日本の戦犯企業製品公共の購入制限に関する条例案

ソウル特別市教育庁の日本の戦犯企業製品公共の購入制限に関する条例案

釜山市も異議なく可決されています。

제280회 부산광역시의회 임시회 본회의 - 부산시의회 회의록

韓国の条例は人種差別に当たるのか?

あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約

第1条

1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。

第2条

1 締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため、

(a)各締約国は、個人、集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。

(b)各締約国は、いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しないことを約束する。

(c)各締約国は、政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。

(d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。

(e)各締約国は、適当なときは、人種間の融和を目的とし、かつ、複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。

いわゆる国連の人種差別撤廃条約では、「あらゆる形態の人種差別」について禁止しており、「集団又は団体に対する」ものも例外なく、地方自治体の政策も対象になっていることが書かれています。

しかし、「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いは1条2項によって認められています。

ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられています。

参考:外務省人種差別撤廃条約Q&A

実際に入居拒否をしたことが差別的だとして違法になった裁判例はあります。

戦犯企業製品購入制限・ステッカーは人種差別なのか

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検討報告書ソウル特別市、日本の戦犯企業製品公共の購入制限に関する条例案

最初に「戦犯企業を指定しているのであって日本人や日本企業全体を対象にしているわけではない、戦犯企業には韓国人も在籍しているから人種差別ではない」という韓国側の主張がありうるでしょう。

しかし、条例案を見ると明らかに「日本戦犯企業」と日本籍企業を狙って指定しており、対象企業も290前後と広範にわたっていると言えるのでそれは関係ないと言えるのではないでしょうか?こうした扱いに合理的根拠があるのかは甚だ疑問です。

次に、「日本企業の経済活動を直接規制するものではないから差別的取扱いをしたことにはならない」という主張が考えられます。

確かに、「戦犯企業ステッカー」は学校等の公的機関で保有している高額備品についてステッカーを貼るということで、日本企業が自社製品を商品化して販売する際には関係ないですし、「戦犯企業製品購入制限」は、一定の公的機関(教育機関も含む)に対して指定された企業から製品を購入することを制限するよう努力義務を課すものであり、対象企業の営業・販売そのものを規制するものではありません。

しかし、いずれも「このような文化を形成するよう努力する義務を課す」ことも条例に組み込まれています。そうすると将来的には公的機関に対するものにとどまらず、日本企業が韓国の地で経済活動を行うことが実質的に困難になっていくことが予想されます。

これは日本に対する偏見を行政が意識的に創出・助長するものと言わざるを得ないでしょう。

人種差別撤廃条約上も「あらゆる形態の人種差別」を撤廃するよう求めており、単に権利・自由を「享有・行使することを妨げ」るだけではなく、「害する目的又は効果を有するもの」も禁止しています。

韓国の各都市・地域の条例は、対象となる日本企業の経済活動を阻害する効果があると言えるのではないでしょうか?「韓国産製品を購入するように」というのなら人種差別ではないでしょうし、合理性があると言い得ると思いますが、対象日本企業の製品に絞っていることの人種差別撤廃条約上の合理性は無いとでしょう。

そして、最終的には今回指定された企業だけではなく、日本系の企業全てが対象になりかねないという危険性を孕んでいると思われます。

「ムンジェイン政権だからであり韓国人は関係ない」というのは誤り

よく最近の韓国側の行為について「ムンジェイン政権が悪いのであって、多数の韓国人は関係ない」などという言説があります。

しかし、京畿道議会の「戦犯企業ステッカー」条例は賛成111名、棄権1名で可決されていますし、ソウル市・釜山市の「戦犯企業製品購入制限」条例は異議なしの全会一致で可決されています。民主的な選挙を経て当選した野党議員らもすべて賛成しているということです。

日本製品の不買運動の旗を韓国の役所が掲出することを取りやめたということが報道されましたが、実態としてはそういう常識的な判断のできる公的機関が少なくなってきたということでしょう。

したがって、京畿道・ソウル市・釜山市の条例は多数の韓国人の意思として成立したものであるという理解をする他なく、多数の韓国人によって日本人ヘイトがナチュラルに行われているということを意味すると言えます。

※もちろん相当数の韓国人は日本ヘイトをしていないが、もはや割合として無視できない程度にまで膨れ上がっている。

まとめ:韓国の条例は「日本人ヘイト条例」

韓国の条例は、人種差別撤廃条約が通常想定している「人種差別」とは異なるものであるというのは確かです。

対象が企業であり、直接的に日本企業の権利自由を制限するものではないからです。

しかし、だからといってこのような条例が「まったく差別的ではない」などと見過ごされて良いのでしょうか?

以上