事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

二度目の村上総務大臣『一般論として公職の候補者が他候補の選挙運動を行う場合は数量制限等に違反の恐れ』二馬力選挙答弁報道

二番煎じの報道やめよ

村上総務大臣『一般論として公職の候補者が他候補の選挙運動を行う場合は数量制限等に違反の恐れ』

令和7年1月17日、村上総務大臣がいわゆる「二馬力選挙」に関して『一般論として公職の候補者が他候補の選挙運動を行う場合は数量制限等に違反の恐れ』と閣議後記者会見で述べたことが報道されています。

総務省|村上総務大臣閣議後記者会見の概要(令和7年1月17日)

が、この報道は二番煎じです。

昨年12月3日の参議院本会議でも二馬力選挙について同様の答弁・報道済みの内容

実は、上掲の内容は、既に昨年12月3日の参議院本会議でも二馬力選挙について同様の答弁・報道済みの内容でした。昨年11月の兵庫県知事選において、立花孝志候補が自身の当選の意思無く斎藤元彦候補の当選を狙って種々の行為をしていたことが問題視されていました。

辻本清美議員の質疑に対する答弁で以下述べています。

村上総務大臣 量的に制限のある選挙運動についてある候補者が他の候補者の選挙運動を行うことはできるかというご質問でございます。この選挙運動の規制についてのお尋ねでございますが、一般論で申し上げますと、選挙運動は公職選挙法で認められている範囲内で行われる必要があり、公職の候補者が他の候補者の選挙運動を行う場合にはその態様によっては公職選挙法上の数量制限などに違反するおそれがあると考えています。

「公職選挙法上の数量制限など」については、令和7年1月10日付の質問主意書に対する答弁書で、詳細に説明されています。

令和7年1月10日【小西洋之 公職の候補者が他の候補者の選挙運動を行う場合の公職選挙法違反等に関する質問に対する答弁書】

参議院議員小西洋之君提出 公職の候補者が他の候補者の選挙運動を行う場合の公職選挙法違反等に関する質問に対する答弁書

第216回国会質問主意書・答弁書一覧:参議院

ここでは「公職選挙法上の数量制限など」について、具体的な条文を挙げた上で以下の行為が考えられるとしていました。

  1. 選挙運動使用ビラの内容が法定証紙の貼っていない他の候補者のための投票依頼である場合
  2. 街頭演説として法定の標旗を掲げていない他の候補者のための投票依頼をする演説を行った場合
  3. 選挙運動のために使用する自動車又は拡声器により法定の表示をしていない他の候補者のための投票依頼をした場合
  4. 新聞広告の内容が公選法施行規則の新聞広告掲載証明書を提出していない他の候補者のための投票依頼である場合
  5. 法定の選挙公報の掲載分の内容が他の候補者のための投票依頼である場合
  6. 選挙運動のために使用するポスターの内容が法定証紙を貼っていない他の候補者のための投票依頼である場合
  7. 政見放送の内容が他の候補者のための投票依頼である場合
  8. 個人演説会において法定の表示をした立札又は看板の類の刑事のない他の候補者のための投票依頼をした場合
  9. このほか、例えば選挙運動のために使用する通常はがきの数の制限について、態様によって数量制限に違反する場合がある

国会答弁と質問主意書への答弁書で詳細説明した後に総務大臣記者会見で述べただけのレベルを、それまでの経緯無く報じるというのは、疑問です。

今回の報道は、兵庫県選挙管理委員会が「公平性の観点から問題がある」との見解を示し、17日に総務省に法整備を求める要望書を提出したことから行われたものですが、SNSでは今回初めてこの認識が示されたと考える者や、「一般論」の説明である認識を持たずに先般の兵庫県知事選挙で実際に公選法に違反する行為があったと総務大臣が考えているという認識を持った者も居り、注意が必要です。

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