女優の柴咲コウが種苗法改正案の審議入りに際してツイートしましたが、削除されました。彼女に乗っかってまた変な連中がデマ拡散しているので情報を整理します。
※追記:種苗法改正反対派がよく引用する元農水大臣の山田正彦が捏造と印象操作をしていることが明らかになりました。
- 柴咲コウ「種苗法改正は自家採取禁止」
- 京大教授の恥さらし、藤井聡が柴咲コウを利用
- 種子法廃止で「外資ガ―!」「モンサントガー!」はありましたか?
- 元農水大臣山田正彦のデマ記事
- まとめ:議論するならまともに
柴咲コウ「種苗法改正は自家採取禁止」
柴咲コウが「種苗法改正は自家採取禁止」と警鐘を鳴らすようなツイートをしました。
しかし、改正案では一般的に自家採取禁止となるわけではなく、登録品種を使わなければいくらでも自家増殖して良いので、このツイートは不用意です。彼女も現在はこのツイートを削除しています。
種苗法については以下の方々が詳細に説明していますのでそちらを読んでください。
種苗法の一部を改正する法律案について:農林水産省 自家採取は一律禁止になりますか。
改正種苗法について色々言われているけれど、提出時法案はこちら。https://t.co/1OxLaUVJle
— Bernardo Domorno (@Dominique_Domon) 2020年4月29日
種苗法改正は素晴らしい。農業育種の世界でもついに作者の権利が認められる。今まで海外・国内でパクられても、泣き寝入りするしかなかった。改正後、種苗を増やす際、無料/有料/許可せずかを作者が選択可能に。特許権や音楽の著作権と同じで当然の話。従来の無料コピー容認が異常!農業は崩壊しない。 https://t.co/7bDoAsJqGL
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) 2020年4月26日
京大教授の恥さらし、藤井聡が柴咲コウを利用
以下では柴咲コウのツイートを利用して種苗法に関する誤った認識を拡散するレベルの低い連中に対して明らかにおかしな点を指摘するにとどめます。
柴咲コウさん、ありがとうございます!
— 藤井聡 (@SF_SatoshiFujii) 2020年4月30日
種子法は日本の農を守る砦なのに、売国=外資を儲けさせるために現政府はこれを潰そうとしています。今後の「コロナ→食糧生産力低下→食糧危機」流れの中でますます深刻です.
コロナ禍中のドサクサ売国行為..やめさせねばなりません。https://t.co/7BK0Vm73FG
まず「種子法」と「種苗法」はまったく別ものです。
「種子法」は2年前に廃止されましたが、その議論においても藤井聡は種苗法との混同をしており、相変わらず議論資格が無いことを暴露しています。
失敬!誤記です!!種子法でなく「種苗法」。どちらもグローバル企業のための改正。種苗法はこれまで「農家でできた作物の種苗を使ってまた作付けするのOK」で、これで日本の農が守られてきたのにこれからそれが×になって、種苗持ってる外資企業等から又買わにゃいかんってもの。最悪の売国法改正。
— 藤井聡 (@SF_SatoshiFujii) 2020年4月30日
この議論をまともにしていたらこの間違いは無いでしょう。
「グローバル企業のための改正」もデタラメです。
種子法廃止で「外資ガ―!」「モンサントガー!」はありましたか?
種子法デマについてはhiroさんが何度も記事化してまとめているのが分かりやすいと思います。
藤井聡らTPP亡国論などを喚きたてていた連中が指摘していた「外資ガー!」「モンサントガー!」「日本が売られる~!」という事態ですが、種子法廃止の公布がされて3年、廃止が施行されて2年が経ちましたけど、そういう事例はありましたか?
元農水大臣山田正彦のデマ記事
種苗法の詳細については、例えば元農水大臣の山田正彦氏のこちらのインタビューをご参照下さい。https://t.co/Ss6HjW7MrE
— 藤井聡 (@SF_SatoshiFujii) 2020年4月30日
恥を知らない藤井聡は自分で説明せず元農水大臣の山田正彦の記事に丸投げしているわけなんですが、この記事自体が全体的におかしいので指摘していきますよ。
山田は「農家はすべての種や苗を新たに購入し続けるか、もしくは育成者権者に対価を払って自家採種の許諾を得なくてはなりません。」などというデマの他に、少なくとも法律案を知らなくてもわかるような明らかにおかしいことを言ってます。
「種苗法は国内法ですから、海外での取り締まりはできない」???
「種苗法は国内法ですから、海外での取り締まりはできない」
???
いったい何を言ってるんでしょうか?
「国内法は海外の取り締まりは出来ない」
これ、全ての規制法についても当てはまりますよね。
この理屈で「意味が無い」などと言うなら、たとえば昨年問題になった韓国による半導体製品の輸出管理の強化の問題では「外為法」の領域の話ですが、外為法も意味が無いということになりますよね(棒)
もちろん当該製品には国際的な輸出規制の枠組みも存在している
さて、現行法では種苗法21条4項で育成者権が輸出等で侵害された場合を捕捉しており、10年以下の懲役も可能となる罰則もあります。今般の改正ではこのあたりの規定が拡充されます。(21条の2~4が新設され、所要の整理が為される)
で、シャインマスカットについては(ブドウ品目)韓国 品目別検疫条件一覧表(携帯品):植物防疫所(魚拓)や、諸外国に植物等を輸出する場合の検疫条件一覧(早見表):貨物編を見れば分かるように【輸出検査(検疫)なしで輸出可能】な場合もあるので、ここで言われているような方法での取り締まりは機能しません。
中国向けはそもそも検疫条件を設定していないため輸出禁止になっています。
もちろん今般の種苗法の改正で持ち出しが有効的に規制できるのかは議論があるでしょうが、直接的な取り締まり以外の改正による海外流出への対策はたとえば以下が検討されています。
- 海外流出時に技術的に困難となっている権利侵害の立証を容易にする
- 訴訟において裁判所が証拠書類提出命令を出すか否かを判断する際、裁判官が
- 対象書類を実際に確認できる手続を拡充
- 海外からの出願者に日本国内の代理人設置を義務づける規定
- EPA等において、加盟国間で育成者権の共通の取扱いを規定する場合への対応
「流出させない」ことと「流出した後の国際法的救済」ことは別個の話で、前者が完璧にできなければ意味が無いなどという雑な議論は意味がないどころか単なる誘導でしょう。抑止力というものを完全に無視してますからね。
意匠登録と無関係の事例を持ち出し、現行法を適用すれば済むという欺瞞
「中国や韓国で…意匠登録」と「2019年の種牛の受精卵」の事案は無関係です。
シャインマスカットについて聞かれているのに和牛の種牛の事案を持ちだすのは話をズラしている印象ですし、この事案は『検疫を受けてなかったために中国の現地税関が』拒否し、日本では「家畜伝染病予防法違反」で逮捕された事例です。
つまり知財関係の法律で捕捉したのではなく検疫関係の法律で「たまたま引っ掛けることができた」に過ぎません。検疫が機能しない場合はどうするのか?という問題もありますし、被害を受けた者が民事的な救済を受けるためには一般法に基づくしかなく厄介です。
和牛の受精卵の事案の参考:http://archive.is/RCZgT
もちろん現地での意匠登録は可能ならするべきでしょうが、そのための手続きも煩雑でしょうし、何より現地法に依存しなければならないというのは日本国の自律した主体の在り方として本来的に採るべき手段ではありません。
いちいちおかしな点が1つの記事の中にたくさんある時点で、記事中の山田正彦の言を借りて言わせてもらうと「意図は別のところにある」としか思えません。
まとめ:議論するならまともに
種苗法が保護するのは「育成者権」=野菜や花、コメ等の新品種の創作を担保する知的財産権で特許権、意匠権、商標権と全く同列(=同権利を故意に侵害した場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金または併科)。こうした私有財産を認めない"共産社会”を理想化する人々が反対しているのだろうか https://t.co/dxRkmh3Pmu
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) 2020年4月30日
柴咲コウさん 種苗法改正案審議入りへ警鐘「日本の農家さんが窮地に…」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
— 日 本 共 産 党 ⚙ 🌾 (@jcp_cc) 2020年4月30日
「#新型コロナ の水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます」https://t.co/IfM5MmfXRI
柴崎コウさんが種苗法改正に反対のツイート。「新型コロナの水面下で、『種苗法』改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」 https://t.co/gc6ozlc1XO
— 福山和人 (@kaz_fukuyama) 2020年4月30日
オウム真理教への破防法適用に反対した自由法曹団に所属してる弁護士や破防法に基づく調査対象団体の日本共産党が種苗法の改正に反対しているというのは何だか意味深ですね。
以上