事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

「余命大量懲戒請求」事案で初の判決:金竜介弁護士に33万円

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余命三年時事日記というブログに影響されて弁護士に対して数百人が大量懲戒請求をした事案で、初の判決がありました。

41歳の男性に対して33万円の損害賠償が命じられました。

ただ、この男性の場合は特殊な事例であり、男性以外の他の被告に対する訴訟では異なるものになる可能性があることに注意です。

41歳の男性は答弁書も提出せず出廷もしなかった

報道では「被告が反論せず法廷にも姿を現さなかった」とあるように、擬制自白が成立していました。

そのため、原告である弁護士側の主張を41歳の男性が全面的に認めたことになります。

この男性以外の被告は反論しており、それによっては被告が損害賠償義務を負わなかったり、損害賠償額が低くなる可能性があります。

金竜介弁護士はどういう主張をしていたか

この事案では、同じ時期に弁護士会の幹部ではない金竜介らに対して、苗字が一文字の者だけを懲戒請求していたという状況でした。

金竜介弁護士は「ただ日弁連の名簿から名前で選ばれた」「国籍ないし民族を理由として懲戒請求しており、人種差別にあたる」「1文字の姓の弁護士を選んで、懲戒請求をしている。明らかな人種差別だ」などと主張していました。

人種差別的な言動があった場合、それによって名誉毀損や侮辱とされた際には損害賠償額が高く算定されています。たとえば以下の事案がそうです。
(「人種差別だから違法」、ではないことに注意)

違法な懲戒請求に対する損害賠償額の目安は50万円

弁護士に対する懲戒請求が違法になる基準を示した最高裁判例では、懲戒請求をしたY1とY2ら(Y2は弁護士)が違法な懲戒請求をしたことによる損害額が50万円と認定されました。

今回の金弁護士の請求額も55万円であり、損害として認定された額の10%程度が弁護士費用相当の損害があったとする慣例に従えば相場通りの請求(50万円+5万円)でした。

しかし、今回の判決は合計33万円(おそらく30万+3万)の賠償額でした。

軽微な事案+人種差別的か?

仮に人種差別的な懲戒請求であると認められるとすると、上記で示した相場の50万円よりも高い請求になったはずです。しかし、そうではないのはなぜか?

上記最高裁判例の事案では、 懲戒請求を受けた側の弁護士が相当の反論を弁護士会に対して行う必要があった事案でした。単位弁護士会の綱紀委員会で却下された後も日弁連に異議申立を行うなど執拗な事案でした。

しかし、今回の事案は懲戒請求書に書いてある事実が真実であったとしても全く違法ではないものでした(単に朝鮮学校に対する無償化を求める行為・私は反対ですが、主張すること自体はまったく違法でもなんでもない)。懲戒請求者は異議申立もしていないようです。

そのため、反論に要する負担は少なく、損害はほとんど発生していない軽微なものと思われます。

したがって、軽微な事案の賠償額+人種差別的、もしくは単に軽微な事案であるとして33万円という額になった可能性があります。

今回の事案は人種差別的か?

金竜介弁護士は「人種差別的な懲戒請求に対して賠償がなされた初の判決」

と言っていますが、判決文を読んでないのでわかりませんが、報道にはそのような趣旨の内容が判決文に含まれているということは今のところ確認できません。

そして、本当に判決で人種差別的であると認定されたとしても、それは被告が全く反論しなかったせいである可能性があります。

なので、単に軽微な違法懲戒請求として33万円の損害額が認定された可能性が残ります。

※追記:東京新聞と朝日新聞デジタルの一部では、人種差別的であることも認定されたとありました。魚拓:http://archive.is/WlAjO

ささきりょう、ノースライム弁護士らの和解金額は

時期は異なりますが、同じく「余命信者」から大量懲戒請求を受けた者に佐々木亮、北周士弁護士がいます(他にもいます)。

彼らが示した和解金5万円が妥当なのかどうか、今回の判決が仮に単なる軽微な違法懲戒請求であるとして33万円であったとすれば、妥当だということになります。

他方、33万円が軽微な事案+人種差別的であるとして増額された結果だとすると、和解金額が妥当だったのかどうか、未だ不明ということになりそうです。

以上