
憲法上の話と実際上の話の混同
『トランプがインディアン原住民はアメリカ市民じゃないと主張』誘導
トランプ政権、アメリカ原住民はアメリカ国民ではないと主張https://t.co/Zx6AywwJRu
— RCJ (@rcj_united) 2025年1月24日
これがバズってますが、一般人としては「その通りなのかぁ」と受け取るしかないでしょう。なので、この人を責めるわけではありません。
元記事が本文でちゃんと書いてることについてタイトルで釣っているんです。ま、本文でも認識誘導してますけど。
背景としては、トランプ大統領が不法移民や一時滞在の母親と合法的な米国市民や永住権者ではない父親との間に生まれた子は自動的な市民権獲得の対象ではないと憲法修正14条1項の解釈運用を変更する大統領令を出した結果、訴訟が提起されたので、それへのトランプ政権側の対応について書いている記事です。
元記事のタイトルは"Excluding Indians"=「インディアンを除外」とだけ書いてますが、本文では トランプ政権の弁護士の主張として以下書かれています。
“all persons born in the United States and not subject to any foreign power, excluding Indians not taxed, are hereby declared to be citizens of the United States.”
「課税されていないインディアン」としています。
これは、合衆国憲法修正14条2項にもある文言です。
修正14条2項の『課税されてないインディアン』と1項の『管轄権に服する』
https://constitution.congress.gov/constitution/amendment-14/
Section 2
Representatives shall be apportioned among the several States according to their respective numbers, counting the whole number of persons in each State, excluding Indians not taxed. But when the right to vote at any election for the choice of electors for President and Vice-President of the United States, Representatives in Congress, the Executive and Judicial officers of a State, or the members of the Legislature thereof, is denied to any of the male inhabitants of such State, being twenty-one years of age, and citizens of the United States, or in any way abridged, except for participation in rebellion, or other crime, the basis of representation therein shall be reduced in the proportion which the number of such male citizens shall bear to the whole number of male citizens twenty-one years of age in such State.
合衆国憲法修正14条2項では明示的に『課税されてないインディアン』という語が現れており、憲法上の言い回しだという事が分かります。
そして、修正14条1項の「管轄権に服する」の解釈に関する判例でも、『課税されてないインディアン』は、自動的な市民権付与の対象外であると理解されてきました。
リーディングケースの判例とされているのが1898年の米国vsウォン・キム・アーク裁判です。
ここでは、【外国の君主またはその大臣の子供】【外国の公船で生まれた子供】【我が国の領土の一部を敵対的に占領している間に生まれた敵の子供】【各部族に直接忠誠を誓う(課税されていない)インディアン部族のメンバーの子供】が、この管轄権に服さない者として限定列挙されていました。
1924年インディアン市民権法によって全インディアンに米国の市民権が付与

米国vsウォン・キム・アーク裁判の後、1924年インディアン市民権法によって、全インディアンに米国の市民権が付与されました。
では、この法律と修正14条1項との関係は?
矛盾しません。
なぜなら、修正14条1項は「禁止規範」ではないからです。
禁止規範的な書きぶりだと、「合衆国において出生し、または帰化し、その裁判権に服するすべての者以外は、合衆国およびその居住する州の市民ではない」とか、「…合衆国およびその居住する州の市民と認めてはならない」となります。
そうではなく、「合衆国において出生し、または帰化し、その裁判権に服するすべての者」について米国市民権があることを宣言しているだけです。
だから、下位規範である法律たる1924年インディアン市民権法で、課税していようがいまいが全てのネイティブアメリカンにアメリカ市民権を付与するとしても、それは憲法修正14条に反しているなどということにはなりません。
トランプを再びリーダーに選んだのは、先進アホリベラル達に疲れきって、かつての楽しくて強くて文化も経済もリッチだった米国を取り戻したい大衆の切実な思いなんだよね。
— 🇺🇸 🇯🇵Blah DARK MAGA😈 (@yousayblah) 2025年1月20日
「文化盗用ダァ?うるせー何言ってんだ!インディアン、カッコいいじゃねーか!」って踊って騒げる、そんな時代に戻れるよ。 pic.twitter.com/4wGmnuD1SD
まとめ:トランプ政権は憲法上の文言・解釈論を述べただけで現実のインディアンの市民権を否定していない
似たようなことは日本国憲法24条第1項で『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し』とあるのは、国家が同性婚制度を作ることを排除しているわけではなく、想定していないため触れてないだけ、という解釈にも当てはまります。この解釈の下では、現行日本国憲法のまま法律で同性婚に関する法律を作っても、憲法に反するということにはなりません。
トランプは、この1924年インディアン市民権法も無効だの廃止だのと主張しているということはありません。
したがって、トランプ政権の主張は、単に憲法上のフィールドにおける「課税されてないインディアン」の話をしているだけであり、現実に存在するネイティブアメリカンの市民権を否定するものではありません。
なぜトランプ政権がこの「課税されてないインディアン」の話を持ち出したのか?ということは、前掲記事の最下部に、「米国と不法移民や一時滞在者の子供たちとのつながりは、インディアン部族の構成員とのつながりよりも弱い。後者のつながりが生まれることで自動的な市民権を得るのに不十分だとすれば、前者は間違いなく不十分だ」とトランプ政権は主張した、という記述から読み取れます。
つまり、ある集団は市民権を付与されるべき実態をどれだけ有するのか?という事について具体的に説明するためのものでした。
トランプ政権に関する印象操作はこのレベルで行われているということが如実に分かる話でした。
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