ユナイテッド航空の乗客引き摺下ろしの件について
引き摺下ろしたのは「航空警察」であり
ユナイテッド航空が雇用する「警備員」ではない。
この点が見過ごされています。
したがいまして、被害者がダイレクトにユナイテッド航空に対して暴行による傷害についての損害賠償請求ができるかというと、かなり怪しいです。
結論としては、これは「企業イメージの問題」であり、「対応」の問題ではないです。
オーバーブッキングはアメリカでは運賃に穴を空けないために意図的に行われていますからね。
※追記を参照ください。
ユナイテッド航空が他にも問題があるということはその通りですし、アジア系に対する差別的対応があるというのもその通りだと思います。
何か悪い事があると全て他の悪い事と紐づけて考えられ、原因として捉えられるのは世の常ですが、それが上記の認識を妨げることになっているんじゃないでしょうか。
追記1:厳密にはオーバーブッキングではないというご指摘を受けて
コメント欄でオーバーブッキングではないということ、対応そのものにも問題があった可能性が高い事について指摘を受け、ユナイテッドの運送約款を確認しました。以下のようにまとめられます。
- 運送約款1条:"Oversold"=いわゆるオーバーブッキング
- Oversoldとは顧客に購入された有効なチケットでチェックインした場合のこと
- Oversoldの場合の扱いは約款25条「搭乗拒否に係る補償」の規定による
- 今回は、満席状態で「社員と交代させろ」という事態であり、顧客同士の利益調整の事態とは異なる。
- 約款には「社員と交代させろ」ということが可能な規定があるとは読むことができない。
したがって、ご指摘の通りなのだろうと思います。ありがとうございました。
この後の法的展開の予測にも影響が出てきます。
この件の法的展開の予測
オーバーブッキングの損害はユナイテッド航空に請求できますが、引き摺下ろしの損害は警察が所属する国家(州?)賠償請求のはず。 訴訟提起されてもユナイテッド航空は何ら痛痒も感じないはずです。
まさか航空警察がユナイテッド航空の履行補助者という法律構成でユナイテッド航空が被告になるとは思えない。
まぁ、アメリカの法律等を知らないのでわかりませんが、国内法上は通常このように考えられます。
運賃の穴を防ぐためにオーバーブッキングを意図的に常態化させていることや、オーバーブッキングの負担を顧客に押し付けることがどうなのかという議論はありますが、少なくとも「引き摺り下ろし」に関してはユナイテッド航空には非がありませんね。
ユナイテッド航空としては「航空警察なにしてくれてんの?」って感じですね。
追記2:運送約款では対応できないケースだった可能性の指摘
コメントにおいて、今回のケースは運送約款では対応できない事案だったという指摘があり、それは約款を見て私もそのように思いました。
とすると、航空警察の行為によって負傷したことについても何等かの責任を負うのではないか、という予測はありうるということになります。ここからはアメリカの不法行為法や航空関係法令を知らないので単なる憶測になります。
不法行為に基づく損害賠償として請求されることに加え、アメリカではその枠組みの中で「懲罰的損害賠償」が認められていますから、ユナイテッドと航空警察のやりとり等を勘案し、航空警察の行為がユナイテッド航空の侵害行為と考慮される可能性もあるのではないかと思います。
これ以上はアメリカの法律(州の法律も関係する?)を知らないのでわかりません。
アメリカ企業は日本のテレオペレーターのような対応をしない
アメリカ資本の企業内で働いていたとき、その企業のミスで顧客に迷惑をかけていた(超大規模な余剰業務が発生)ことがあります。そこで、「ネゴ」と呼ばれる職務でテレオペレートしている人の対応に耳を傾けていたことがあります。
そこでは
「会社としてできることはここまで」
「できないものはできない」
このような対応を、堂々と行っていました。
電話の長さからして、顧客の側がぐちぐち「自分の気持ち」云々を言っていたと思われます。しかし、「申し訳ございません」の一言もありません。決して顧客にへりくだる対応はしませんでした。
このような対応がいいのかどうかは別問題として、アメリカ企業はこのような対応をするものです。
逆に、日本のテレオペレータはどんなに理不尽なことを言われても「丁寧な対応」をすることを強制されており、可哀相だと思いました。
良くも悪くもアメリカはこのような社会です。
オーバーブッキングの補償金を提示した時点で、ユナイテッド航空としては乗客に対する責任は果たしたという考えでしょう。
日本社会で暮らしている私達にとっては理解しがたいですが。
「従業員を賞賛」は世間受けが悪い
ここにCEOが従業員を賞賛したというメールが紹介されていますが、明確に「シカゴ航空警察」と従業員をわけています。
これは従業員に対してであればトップとして在り得る話なのですが、これが社外に公開されてしまったことは運が悪かったですね。
終わり