アメリカのトウモロコシを日本が「追加で輸入する」という報道があり、その件について情報が錯そうしていましたが、農水省に確認したという2者の報告を見ると、以下の記事での見立て通りなんだろうと思いました。
- 酪農家ツイッターユーザーの農水省への問い合わせ
- ある自治体の畜産課への問い合わせ
- サイレージ用とうもろこしの代替にはならないという主張への回答
- J-CASTニュース:追加輸入ではなく前倒し輸入
- まとめ
酪農家ツイッターユーザーの農水省への問い合わせ
今回の輸入トウモロコシの件、ツイッターを見てるだけではちっとも分からないから、農林水産省に問い合わせたよ🌽🐮
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 28, 2019
1 今回の飼料用デントコーンの追加輸入がツマジロクサヨトウによる国内デントコーンの被害対策であることは事実。それは8月上旬ごろにはもう決まっていた。
一連のツイートはこちらでまとまっています⇒輸入トウモロコシの件、農林水産省に問い合わせたよ🌽🐮 - Togetter
重要部分を紹介すると
- 輸入は農協や他の民間飼料会社がそれぞれ行い、備蓄にかかる倉庫代などを国が一部補助する。
- ツマジロクサヨトウの行動範囲は広がりを見せているが、今のところそれほど被害が拡大しているわけでもない。飼料会社の前倒し輸入も「不足が無いよう、念のため」という程度。
- 日 本 が 「 全 量 買 い 取 る 義 務 」 な ど 発 生 し な い (FTA協定外の、単なる個人的発言)。
『日 本 が 「 全 量 買 い 取 る 義 務 」 な ど 発 生 し な い』
この方も行間をあけて強調しているように、これが全てです。
さらに、ある自治体の畜産課への問い合わせ結果も報告していました。
ある自治体の畜産課への問い合わせ
(8/29追記)トウモロコシが、日本初確認の害虫(ツマジロクサヨトウ)の被害を受けた某自治体の畜産課にも問い合わせました🐮🐛
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 29, 2019
1 ツマジロクサヨトウによる被害はデントコーンだけでなく、他の品種のトウモロコシにも及んでいる。スウィートコーン、フリントコーンも被害が確認されている。
2 とはいえ被害は壊滅的という訳ではない。飼料の輸入を増やしたりする必要は今のところ無い。
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 29, 2019
3 この自治体のトウモロコシは二期作を行なっており、一作目は豊作であった。現在の二作目で、ツマジロクサヨトウなどの害虫から被害を受けており、農水省とも連携しつつ、経過を見ながら対応中。
害虫被害のために前倒し輸入するかは今後の事態の推移によって変わる流動的なものに過ぎない、ということでしょう。
サイレージ用とうもろこしの代替にはならないという主張への回答
牛のエサの玄人と名乗る方から質問がありましたので、みたび 農水省の方とお話させて頂きました。
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 30, 2019
エサの玄人「害虫被害が出ているのはサイレージ用トウモロコシ。米国から輸入するのは濃厚飼料。代替えできない。サイレージを食べている牛に濃厚飼料を与えると最悪牛は死ぬ。私は15年研究してる。」
農水省「今回害虫被害が出ているのはサイレージ用のトウモロコシ。(輸入するとはまだ決まってないけど)アメリカなどから輸入するのは濃厚飼料。代替えというか、サイレージ用のトウモロコシが万が一不足すれば牛の栄養が足りなくなります。」
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 30, 2019
農水省「その時は濃厚飼料用のエサを「牛の様子を見ながら」「少しずつ足してもらえればと思い」前倒し輸入の準備をしている。これが農水省にできる害虫対策の1つ。」
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 30, 2019
農水省「現場の方が、栄養の不足が無いというなら足さなくてもいい。第一牛の体調が悪くなるほど極端にエサを入れ替えるような畜産農家さんなどいないだろう。」
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 30, 2019
お忙しい中回答ありがとうございました!
そもそも牛への飼料はサイレージに限ったものではなく子実タイプのものもあるので、 「サイレージでないと牛は死ぬ」というのはデマですね。そりゃ100%を子実タイプにするわけではなく、配合飼料の割合を増やすといった対応になるに過ぎないでしょ。
「代替性がない」と言いますが、完全に同じ物だったらそもそも「代替」ではないわけです。
J-CASTニュース:追加輸入ではなく前倒し輸入
米国トウモロコシ「250万トン追加輸入」は本当か 農水省に聞くと... : J-CASTニュース
「3か月分の追加輸入」と、「害虫被害とトウモロコシ輸入の関係」について、J-CASTニュースが29日、農林水産省の担当者に話を聞いた。結論としては、「追加輸入ではなく、害虫被害が広がる可能性を考慮して、前倒し輸入で確保する場合は、最大3か月分、保管料を全額補助する」という趣旨で、「3か月分を年間必用量に追加して輸入する訳ではない」との説明だった。たとえば、先に(19年)10~12月分を確保(契約)しておき、仮に不足が生じなければ、当初予定分の輸入は見送ればよい、というわけだ。
中略
農水省担当者によれば、安倍首相の発言は上記の対応を説明したもので、また、日本が飼料用トウモロコシを輸入する相手国はその約95%が米国なため、仮に前倒し輸入をするならば、米国からの輸入になる可能性が高いとも説明した。そもそも、今回のトウモロコシの話は、9月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別枠の話だ。
中略
「粗飼料」と「濃厚飼料」についても、農水省は一部報道を踏まえ、補足解説した。害虫被害も懸念される国内生産分(年間約450万トン)は粗飼料(葉や茎も利用)で、輸入分(同約1100万トン)は濃厚飼料(実を利用)だ。粗飼料用の害虫被害が懸念されるのに濃厚飼料を前倒し輸入しても、両者は用途が異なるため単純に代替できない、との批判もある。これに対し農水省は、粗飼料には、トウモロコシだけでなく牧草なども使うケースがあるが、仮に牧草だけになると栄養価が低くなるため、牧草と濃厚飼料を混ぜて粗飼料用に加工することもできるとしている。
J-CASTでも、決まった量を輸入する事が義務付けられるというわけではないという言質を取っています。9月の日米貿易協定とは別枠だというのも、ロイターやWSJ、NHK等の当初からの報道で確認できる内容です。
完全にとうもろこしサイレージだけ食べてる牛を育てている所なんてほとんどありません。
それに、粗飼料は何もとうもろこしサイレージに限らず、牧草(これがサイレージの原義)やイネ、ソルガムなどの粗飼料があるのですから、とうもろこしサイレージが食べられなくなったらダメだ、という論はおかしいのが明らかです。
まとめ
1、2、4の「追加輸入」の言い方は正確ではなかったです。失礼しました。
— メス牛@ま〜だ2番草が始められない (@Houboku01) August 28, 2019
正確には「前倒し輸入」または「夏の輸入分を前倒しで追加」ということになります。
文章下手でごめんなさい。今回のトウモロコシの件が、アメリカの命令でもなければ安倍総理の手柄でもないことが分かって頂ければ!
「虫害対策のためだ」と言った安倍総理の発言が多少誤解を生んだのかもしれませんが、間違いではないですし、トランプ大統領がアメリカ国内の農業クラスタに対して成果アピールをするための場だったということで、トランプおじさんが話を盛ったに過ぎないという事でしょう。
農水省のこの説明が本当に正しいのかは今後の展開次第なので(今後の日米の話合いの中でさらにアメリカ側がふっかけてくる可能性はある)、現時点で評価を決めることはできないなぁというのが誠実な態度じゃないでしょうか。
以上