事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝日新聞が「新解釈・解釈追加」と歴史修正し出した件:放送法の政治的公平政府解釈

「解釈を変えた」のは朝日新聞の方では?

放送法4条政治的公平の政府見解と総務省の運用

第46回国会参議院逓信委員会昭和39年4月28日

○政府委員(宮川岸雄君) 公安及び善良な風俗を害しないとか、政治的に公平である、こういうような、あるいは、意見が対立している云々というようなことにつきましての、個々の番組に対する判断というものは非常にむずかしい問題でございまして、人によっては、この程度が公平であるが、人によっては、多少これは公平を欠いているというような判断が、人によって相当違うものであろうかと考えるわけでございます。したがいまして、先ほどの御説明をもう少しふえんさしていただくならば、ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、これが直ちに公安及び善良な風俗を害する、あるいは、これが政治的に不公平なんである、こういうことを判断する——一つの事例につきましてこれを判断するということは、相当慎重にやらなければもちろんいけませんし、また、慎重にやりましても、一つのものにつきまして、客観的に正しいという結論を与えることはなかなかむずかしい問題であろうと思うのであります。

放送法4条の「政治的公平」の政府見解と総務省の運用はこの通りです。

平成16年に山形テレビの自民党広報番組とテレビタックルに対して「一つの番組」で判断して行政指導してます。それは昭和39年の答弁の通り、一つの番組での判断を排除しないというのが政府解釈だからです。

2015年の高市総務大臣答弁は、「補充的説明」をしただけだというのが政府見解ですし、そのように理解するべき合理性があります。

この点の詳細は以下。

朝日新聞が「新解釈・解釈追加」と歴史修正し出した件

ところが、朝日新聞は2023年3月に小西洋之議員が総務省文書を持ち出して高市大臣に辞任を迫った際には、以下のように「新解釈・解釈追加」と歴史修正し出しました。

3月3日時点でも礒崎氏への取材で「補充的説明」という言質があったのに「新解釈」と書いていましたが、その後、8日午前までに膨大な数の「新解釈・解釈追加」と書かれた記事が生まれています。

安倍政権下の内部文書か、放送の公平性巡りやりとり 立憲議員が公表 2023年3月2日 20時04分 朝日新聞デジタル魚拓

高市氏、放送法の文書「捏造」と反論 本物なら議員辞職で「結構だ」 安倍龍太郎2023年3月3日 17時20分 朝日新聞デジタル魚拓

放送法の解釈追加、官邸側の働きかけ認める 礒崎元首相補佐官が証言:朝日新聞デジタル魚拓

(時時刻刻)官邸の圧力、克明 衆院選前に番組問題視、発端 放送法文書 朝日新聞デジタル魚拓

「俺の顔つぶせば首が飛ぶ」「言論弾圧では」 公開の文書、経緯克明 2023年3月7日 21時13分 朝日新聞デジタル魚拓

安倍氏、NHK番組挙げ「明らかにおかしい」 放送法めぐる文書公開 安倍龍太郎2023年3月7日 19時37分 朝日新聞デジタル魚拓

放送法めぐる内部文書、総務省が作成認める方針 参院予算委に報告へ 2023年3月6日 23時24分 朝日新聞デジタル魚拓

首相補佐官からの問い合わせ、総務相認める 総務省、7日にも報告へ 安倍龍太郎2023年3月6日 12時18分(2023年3月6日 20時58分更新)朝日新聞デジタル魚拓

新解釈、官邸側の意向認める 礒崎元補佐官「放送法、総務省と意見交換」2023年3月4日 5時00分 朝日新聞デジタル魚拓

放送法「内部文書」、真偽は 与党、資料配布許可せず 参院予算委2023年3月4日 5時00分 朝日新聞デジタル魚拓

「私の態度が気にくわなかったか」 高市早苗氏、放送法の文書めぐり 江戸川夏樹2023年3月3日 22時01分 朝日新聞デジタル魚拓

「新たな解釈を加えた」「放送法に新たな解釈が追加されるまでの経緯」「放送法の政治的公平性をめぐり、極端な場合は一番組でも不公平になりうるとの解釈が追加される過程」「安倍政権下で政治的公平性をめぐる新解釈が加わる過程で」

こういう文言でもって説明されています。2日の高市答弁時点でそういう表現なので、最初からその方向性だったのでしょう。

社説はさらに以下のような表現です。

(社説)放送法の解釈 変更の経緯、解明急げ 2023年3月4日 5時00分 朝日新聞デジタル魚拓

首相補佐官の立場で、ひとりの政治家が法律の解釈を実質的に変えるよう行政に迫る。官僚たちは抵抗するが、首相も追認する――真実であれば、見過ごせない疑惑が浮上した。一部否定している関係者もいる。事実の解明が急務だ。

 立憲民主党の議員が総務省職員から入手したとして同省の内部文書を公開した。そこには、首相補佐官だった礒崎陽輔・前参院議員が、安倍政権下で4カ月間にわたって再三、解釈を改める必要はないと言いながら実質的な放送法の解釈変更を迫る様子が克明に記されている。

 放送法は、放送番組の編集にあたって、政治的に公平であることを求めている。公平かどうかは、ひとつの番組単位ではなく、放送事業者の番組全体をみて判断すべきものとの立場を政府は長らく維持し、国会答弁で繰り返し明らかにしてきた。個別の番組について客観的に評価することは難しいと考えられてきたためだ。

 ところが2015年、当時の高市早苗総務相が従来の見解とは異なる国会答弁をした。ひとつの番組のみでも政治的公平に反する場合があるとし、翌年には違反を繰り返せば停波を命じることもあると発言した。

 個別の番組への事実上の検閲や言論弾圧に道を開く、民主政治にとって極めて危険な考え方だ。厳しく批判されたが、この重大な路線変更がなぜ行われたのかはわかっていなかった。今回の文書は、この大臣答弁が礒崎氏らの意向に沿ったものだった可能性を示している。

 特定の番組を名指ししながら「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」という考えの礒崎氏を前に、「本来であれば審議会を回すか、法改正となる話」(総務省出身の首相側近)との異論はかき消されていく。事実であれば、路線変更の舞台裏を示すきわめて重要な記録といえる。

 だが、きのう、松本剛明総務相の反応は煮え切らなかった。文書が存在することは否定しなかったが、記載内容に疑義があるため精査中だと繰り返し、国会での議論も進まなかった。

 当の高市氏は国会で「捏造(ねつぞう)文書だ」と主張したが、礒崎氏は「法の解釈について総務省と意見交換をしたのは事実」と述べている。総務省は一刻も早く、真相を明らかにするべきだ。

 岸田首相がまるでひとごとのように「私の立場で何か申し上げることは控える」と及び腰なのは無責任だ。舞台は当時の官邸であり、放送法をいかに運用するかは市民が毎日触れる情報のあり方に大きな影響がある。陣頭指揮をとって国民に納得のいく説明をしてもらいたい。

昭和39年の国会答弁や平成16年の山形テレビの自民党広報番組やテレビタックルへの行政指導の事案をひたすらに無視してるのが分かります。

朝日新聞の放送法の政治的公平政府解釈に関する過去の記事:解釈変更をしたのは朝日

朝日新聞の記事データベースで朝日新聞紙面・朝日新聞デジタル・AERAの記事を検索しましたが、2015年5月12日の高市総務大臣答弁の際には記事が書かれてすらいませんでした。

で、2016年2月に安倍総理が放送法解釈について高市総務大臣答弁との関係を問われて政府統一見解を出した際には、以下の記事が見つかります。

「番組見て全体を判断」 電波停止発言で政府統一見解 相原亮 2016年2月13日02時10分 朝日新聞

高市氏「メディア萎縮していない」 停波発言、自身の報道巡り 2016年2月16日16時30分 朝日新聞

「番組一つ一つ見て全体判断」 首相、停波発言の容認強調 2016年2月16日05時00分 朝日新聞

が、朝日新聞自身はこれを「解釈変更」だとか「新解釈追加」とは書いてません。

唯一、当時民主党議員だった山尾志桜里議員が「一つの番組でも判断できるという強権的な拡大解釈をした政権はない。なぜ解釈を変えたのか」と発言したことを取り上げた程度です。

要するに、放送法に関する政府見解に関して、2023年3月に解釈変更をしたのは朝日新聞の方ではないか?

確かに上掲記事は淡々と「政権はこう言ってる」とだけ報じているのみですが、本当に「新解釈追加」だと思ってるならもっと強調していたはずでは?

「敢えて黙っていた」「社としての解釈を示したことは無い」ならそれまでですが。

流石に「解釈変更」とは書けないから「解釈を追加」「事実上の解釈変更」と書いているのでしょうが、「補充的説明」とは別概念であり、妥当な表現ではないでしょう。

が、「新解釈」と書いてる記事もあり、その時点で解釈変更の含みがあるのでアウト。

このような歴史修正はおおいに記録・認識されるべきでしょう。

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