事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「日本がCFIUSのホワイト国から除外」が誤解招くので米国財務省ページのソースを置いておく

CFIUSのホワイト国から日本が除外


「日本がCFIUSのホワイト国から除外」

この報道は誤解を招くので米国財務省ページのソースを置いておきます。

日経新聞「日本がCFIUSのホワイト国から除外」

米外資新規制、日本「ホワイト国」外れる 強まる安保色 (写真=AP) :日本経済新聞

日経新聞では、アメリカの外国投資委員会(CFIUS)が、新たな規則を制定したということが書かれ、その中で「日本がCFIUSのホワイト国から除外」と表現しています。

CFIUSとは「安全保障の観点から対米投資を規制する対米外国投資委員会」と記事にもあるように、自由貿易が原則の輸出管理・貿易の話ではありません。

例外国・適格国は英国・豪州・カナダのみ、2年間で将来的に拡大の方針

アメリカの財務省に1月13日付のプレスリリースで以下のFIRRMAの改正による2月13日発効の最終規則が発表されています。

Treasury Releases Final Regulations to Reform National Security Reviews for Certain Foreign Investments and Other Transactions in the United States | U.S. Department of the Treasury

The Committee on Foreign Investment in the United States (CFIUS) | U.S. Department of the Treasury

よくある質問

How did the Department of the Treasury determine the eligible foreign states under the regulations? Will the list be revised in the future?

CFIUS identified these countries due to certain aspects of their robust intelligence-sharing and defense industrial base integration mechanisms with the United States.

今回、日経新聞が「ホワイト国」と言っているのは、ここでいう"excepted foreign states"と “excepted real estate foreign states.”です。

「CFIUSは、当該諸国(英国・豪州・カナダ)について、米国との強固な情報共有および防衛産業基盤統合メカニズムの側面から認定しました」

とあるように、いわゆるファイブアイズ諸国にしか例外外国・適格外国認定をしていないわけです(ニュージーランドは除外されている)。
このこと自体は日経の記事にも書いてある

よって、日本が「含まれていない」のはある意味で当然と言えると思います。

FIRRMAの改正で"excepted foreign states"="eligible foreign states"制度を新設した

よくある質問

Because this is a new concept with potentially significant implications for U.S. national security, CFIUS is initially identifying a limited number of foreign states and may expand the list in the future. 

中略

As detailed in the regulations, from February 13, 2020 to February 13, 2022, the countries identified as eligible foreign states are considered “excepted foreign states” and “excepted real estate foreign states.”

この部分では"excepted foreign states"=例外外国(これが条文上の用語。実務上は"eligible foreign states"=適格外国と呼ぶらしい)制度の対象となった国は2年間有効で、その後見直しが入るということです。

また、適格外国の対象は将来的に拡大する方針だということも書かれています。

したがって、日本が「除外された」「外された」と言うのは実態からかけ離れています。新設された制度なのだから。
(ただ、日本が米国から優遇される立場になるのではという期待は、界隈ではあるようなので、今回の件が「想定外」なのかは私は分かりません。)

ただし、日本国の現状に問題が無いわけではないので、以下のような問題意識は妥当するでしょう。

「ホワイト国」は輸出管理でも使用を止めた用語

そもそも「ホワイト国」という名称は実務上の便宜的呼称であり、正式名称や法規に記載のある名称ではありませんでした。

輸出貿易管理令の一部を改正する政令が閣議決定されました (METI/経済産業省)

2019年8月2日に閣議決定された内容では、元々の分類区分である「グループA」の呼称で呼ぶようにしたとしています。

よって、日経新聞でCFIUSの件で「ホワイト国」という用語を使うのは時宜にかなったものではないですし、「日本が除外された」というのは、新設された制度なので誤解を招く表現でしょう。

実際、以下のように狂喜乱舞する人が居ますが、これは日経新聞だけを読んでるせいでしょう。

以上