感染症専門家である岩田健太郎医師がダイヤモンドプリンセス号の内部に入ったところ、その管理体制が杜撰であったとするYouTube動画をUPし、ツイッターでも「COVID19製造機」「岩田先生」がトレンド1位となっています。
- 「COVID19製造機」と神戸大学岩田健太郎教授が批判
- 防衛省がカウンターインテリジェンス?
- 防衛省と厚労省のダイヤモンドプリンセス号の検疫体制は異なる?
- 岩田先生の主張はその通りなのでは
- やはり旗国法主義の国際慣習法が影響したのか
- まとめ:「COVID19製造機」のYouTube動画は貴重
「COVID19製造機」と神戸大学岩田健太郎教授が批判
※動画は岩田氏により削除されたので書き起こしをしてる記事を置いておきます。
ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策は「むちゃくちゃ」。船内に入った岩田健太郎さんが告発(全文書き起こし) | ハフポスト
岩田健太郎先生が本日ダイヤモンド・プリンセスに入ったところ、中の感染対策が酷い状況だったそうです。職員もマスクをつけたりつけなかったり、発熱者が歩いて医務室へ行ったり。中国やアフリカ、下手すればシオラレオネよりもレベルの低い感染対策だったと怒りのYouTubeをアップされています。 https://t.co/wk7oGRDQXk
— インヴェスドクター (@Invesdoctor) 2020年2月18日
いくらCDCがないとはいえ、もうすこしマシかと思っていました。気を失いそうになるくらい愕然とし、20年以上の医者人生でこれくらい自分の感染リスクを強烈に感じたことはありません。アフリカのエボラ対策でも北京でSARSに立ち向かってたときもここまで恐くはありませんでした。DMAT気の毒です。
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) 2020年2月18日
神戸大学岩田健太郎教授がダイヤモンドプリンセス号の内情について「COVID19製造機」と批判しました。
- 乗員がマスクをつけたりつけなかったりしている
- ゾーニングが出来ていない
- 発熱者が歩いて医務室へ行っている
- 発熱のオンセットを記録してそれからカーブを作っていくという統計手法「epi-curve」のデータは全然取ってない
ざっくりいうとこれらの状態が指摘されていました。
防衛省がカウンターインテリジェンス?
岩田教授の動画UPからほどなくして、河野太郎防衛大臣、防衛省自衛隊が連続でツイートしています。
自衛隊では、隊員が活動する場所や業務内容の感染リスクの程度により防護基準を定めています。
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2020年2月18日
作業内容や活動場所ごとの防護の様子を紹介します。 https://t.co/hYgrzXrLkL
自衛隊では、隊員が活動する場所や業務内容の感染リスクの程度により防護基準を定めています。この基準は厚生労働省が定めたものよりも厳しいものであり、隊員が装備する防護装備も種類が多くなっています。
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) 2020年2月18日
陽性の患者さんを病院へ救急車で搬送する場合には、運転手や同乗する衛生員は作業用の防護衣を着用します。 pic.twitter.com/qgRA5Fc3cE
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) 2020年2月18日
「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内においては、階段やロビー等の公共スペースの消毒作業を実施しています。直接、乗客・乗員と接触することはありませんが、念のため防護衣を着用し作業しています。 pic.twitter.com/V93rdaK6of
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) 2020年2月18日
「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内において、診療、薬剤配布等を行う医官等は、マスク、ガウン、フェイスシールド等を着用し乗客との意思疎通と安全の確保の両立を図っています。 pic.twitter.com/VwrIrLOkYG
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) 2020年2月18日
自衛隊は、「ダイヤモンド・プリンセス号」内で薬剤の仕分け等を実施していますが、その作業スペースに乗客・乗員の方や船内で診療・消毒作業等の作業に当たっている隊員が入ることはありません。ただし、その際にもサージカルマスクと手袋を着用し作業しております。 pic.twitter.com/qNAlBzUNvs
— 防衛省・自衛隊 (@ModJapan_jp) 2020年2月18日
これらは防衛省による岩田教授に対するカウンターインテリジェンスではないか?と考える人が複数おり、そうなんだろうと思います。
21:18 ◯田教授、告発ツイート
— にこ ( ´ω` ) (@nikoyky) 2020年2月18日
23:01 自衛隊公式、大臣視察報告①
23:31 自衛隊公式、DP号での活動報告②
「厚労省より厳しい基準」と言及
各種防護体制の画像添付③
23:54 河野大臣アカが紹介④
「防護基準」再度言及
…これ狙ってやってんだろうね。 pic.twitter.com/ghEpw12GkY
防衛省と厚労省のダイヤモンドプリンセス号の検疫体制は異なる?
日経のこの記事、というか管轄権の問題そのものがどうでも良くなるレベルでダイアモンド・プリンセスの内部の状況酷かったんやな…
— ぱらみり(準軍研には手を出すな!) (@paramilipic) 2020年2月18日
旗国主義なんて話にならないくらいのとんでもないブラックホールですよ…
クルーズ船対応「旗国主義」の穴 義務なかった日本:日本経済新聞 https://t.co/5FrxUUH7P3
旗国主義とか沿岸国管轄権とか、もはやそういうレベルではないというか厚労省は行使可能な管轄権すらまともに行使できていない状態。衛生管理の不備という違法状態を自ら生み出している。感染の危険がある場所を局限し、感染の恐れのないセーフティエリアの設営すらしてないとか…
— ぱらみり(準軍研には手を出すな!) (@paramilipic) 2020年2月18日
乗客の感染拡大は時期的には検疫前(クルーズ中や日本以外の寄港地)から感染したものが発症した可能性も高いんだけど、乗員や検疫官他の従事者の感染は、行政の不作為(感染制御の欠如)によるところが大きいんじゃないの
— ぱらみり(準軍研には手を出すな!) (@paramilipic) 2020年2月18日
乗員乗客の感染については、その発症時期からしてイギリスが旗国のダイヤモンドプリンセス号の運営に帰責性があると言えますが、検疫後の検疫官・厚生労働省職員・DMATの感染については、たとえイギリスの不手際の影響があったとしても、日本側でコントロールすべき内容であることは間違いなく、 対応が杜撰だったというのはそうなんだろうと思わざるを得ない気がします。
じゃあ、防衛省と岩田健太郎教授の言っていることが食い違っているように見えるのは、一体何なのか?
病院船?今はそんなこと話す状況ではないのでは…?
— ぱらみり(準軍研には手を出すな!) (@paramilipic) 2020年2月18日
いや、確かに必要でしょうね。
厚生労働省ではなく防衛省が管理する医療施設として、ね
みたいな顔になってる(どんなだ
おそらく防衛省も厚労省のやり方に不満なのではないでしょか?
岩田先生の主張はその通りなのでは
一つ有益なことをつぶやいておくと、日本のツイッタラー感染症医として多数のフォロワー数を誇る岩田先生とEARL先生は、一時TLで深刻なレベルで争っていたくらいマジで仲が悪い
— Johannes.com (@Johannes0908) 2020年2月16日
だから、この二人が新型コロナウイルスについて同じことを言っていたら、それは感染症学的に正しいと考えてまず間違いない
拝聴しました。DMAT関係の先生からきなくさい話は確かに聞いていたので岩田先生の話は確かにありえる話ではありますね。感染環境学会メンバーの話を聞きたいところです。あの先生いろんなとこにしがらみもありますから。DMAT仕切ってるのは誰なんでしょうねぇ?
— EARLの医学ツイート (@EARL_Med_Tw) 2020年2月18日
ちなみに、ぼくを招聘しようと働きかけた官僚の将来が危惧されるぞ、という警告を受けました。それは筋違いです。招聘したのが悪いのではなく、勝手に追い出したどこかの偉い人が悪い。厚労省や内閣はフェアな人事を。
— 岩田健太郎 (@georgebest1969) 2020年2月18日
話を聞く限りは感染管理の理論という意味合いでは疑う余地のない正論です。ただ実際に見てみないと分からない部分がありますのと、感染管理とは別の(ほんとくだらない話なんですが、業界内でのこれまでのいざこざあれこれ)的なのがあったりで、これだけでは明確なコメントはしかねるのが本音です
— EARLの医学ツイート (@EARL_Med_Tw) 2020年2月18日
厚生労働省、または政府の担当者からの反論を望みます。実はここで提起されていることは、数日前、外国の知人からも言われていたので。 https://t.co/4shPvNaNcr
— 江崎道朗 (@roBKdKrO3RctH2E) 2020年2月19日
いろいろ見て回ると、少なくとも岩田教授の主張は決して嘘では無いということ、しかし、日本側の対応の全てが無責任なのかというとよく分からない、という辺りなのではという暫定的な感想です。
なぜなら、以下のような感染者が居るからです。
エイブルさん達、二週間くらい部屋から出てませんものね。空調ダクトから、と考えると、乗客には接することなく、一室で作業していた厚労省職員の感染なども頷けてくる。感染者の部屋の分布図とか、見てみたい。 https://t.co/nRJSPn3J8j
— kentarotakahashi (@kentarotakahash) 2020年2月18日
イギリスのエイブル夫妻ですが、BBCのインタビューにも毎回登場していたそうですが、2週間部屋から出ていないのに検査陽性となったようです。
クルーズ船調査の責任者「船内に待機措置は適切」 | NHKニュース:魚拓
船内での感染を防ぐ対策では不十分な点があったと指摘しています。
岩手医科大学の櫻井滋教授は、今月11日から2日間、日本環境感染学会の調査チームの責任者として横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で調査を行い、感染予防対策の指導に当たりました。
NHKでは乗員の問題点が書かれてますが岩田教授の指摘する状況は触れられてません。
やはり旗国法主義の国際慣習法が影響したのか
旗国法主義の下でも、入港や検疫等に関しては寄港国の管轄が及びますが、船内の規律については、国連海洋法条約第12部、SOLAS 条約、MARPOL条約、STCW 条約、ILO147号条約、ILO海事統合条約等といった根拠がない限り、寄港国は外国船に対し自国の法律の執行を抑制するのが国際慣習法ではないですか? https://t.co/R8HsavvpPf
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2020年2月12日
もしかすると私の発言が不明瞭だったのかも知れませんが、検疫法に基づいて上陸を拒否していること(それは日本の権限でできること)を前提とした上で、船内の問題については、日本政府が自国の船舶の時と全く同じには振る舞えないことを伝えたかっただけです。言葉足らずでしたら、申し訳ありません。
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2020年2月12日
海法の専門家でもある商法の野村修也教授の指摘の通り、検疫に関しては領海内の内水であり寄港国の管轄が及びますが、船内の規律については国際条約上の特段の根拠規定がない限りは、寄港国は外国船に対し自国の法律の執行を抑制するのが国際慣習法ではないかと思います。https://t.co/7QJyU4CFAm https://t.co/Uy4iTCX9wp
— androiduse (@androiduse) 2020年2月18日
私のツイートが一人歩きしているようですが、船内の検疫作業が日本の権限と責任で行われていることは大前提です。
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2020年2月19日
その上で言えば、船内は、船主の私有物であると同時に運航会社が管理する場所であり、また、旗国の管轄権が及ぶ領域であるため、船内での検疫活動については、船長を通じて船主や運航会社及び旗国と調整することが必要な場面も多く、その意思決定プロセスはかなり複雑だと言うことができると思います。
— 野村修也 (@NomuraShuya) 2020年2月19日
厚労省の対応がずさんだったとして、その理由としては(ぱらみり氏の仰るように決して言い訳にはならないが)旗国法主義の国際慣習法があることで、ダイヤモンドプリンセス号の内部の管理体制としてイギリス側たる船舶側と日本政府とでどちらにイニシアティブがあるのか、ということが曖昧であったことが原因である可能性が考えられます。
官僚はルールから演繹して行動する生き物なので。
参考:クルーズ船対応「旗国主義」の穴 義務なかった日本 (写真=共同) :日本経済新聞
参考:【新型肺炎】クルーズ船対応にルールなし 船籍国・英政府の動き見えず(1/2ページ) - 産経ニュース
※ぱらみり氏からは旗国法主義関連の記事の有用性は否定されてるが、なお有効のように思える。
医師として義憤を覚え、もっと良い対応をと願うのは当然の事です。私も心情的に全面同意します。ですが、法と国境の壁が其れを許さないのです。
— 寄り道 (@edgeofstreet918) 2020年2月18日
本来なら義務も責任もないダイヤモンド・プリンセスの対処をしているだけで、一昔前なら政権が吹っ飛んでいた超法規的措置です。
まとめ:「COVID19製造機」のYouTube動画は貴重
岩田先生の専門性と実力は誰もが認めるところだが、そうは言っても1人の人が発信した内容、いかに衝撃的でも鵜呑みにしないことが大事。
— ばりすた☕️脳神経内科医 (@bar1star) 2020年2月18日
船内の感染対策の実情はまだしも、乗船下船の経緯は不透明な所が多すぎる。
船外の我々にできるのは安易な陰謀論に飛びつく前に、情報を集めて吟味することだ。
行政の不作為を告発することは大事です。しかし、その種の告発は内容の正しさはもちろんのこと、発信のタイミングと相手(対象)がポイントとなる。なぜ下船が始まる直前のタイミングで、広く一般に例の動画を拡散したのか。一般人に「パニックを起こすな」と散々言ってきたこととは大きく矛盾する。 https://t.co/Amkb3SJxmO
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2020年2月19日
私の一応の理解はまとめると以下です。
- 厚労省の対応が杜撰だったのではないか
- ダイヤモンドプリンセス号の内部管理体制のイニシアティブを日本側が取れていないことが原因ではないか
- それは旗国主義ルールで国際法上の扱いが曖昧ということが影響したのではないか
- 防衛省は厚労省とは異なる体制を敷いており岩田教授の発信と矛盾しないのではないか
いずれにしても、岩田教授の発信は軽視してはならないと思います。
以上
追記
お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません。
— はしもとがく(橋本岳) (@ga9_h) 2020年2月19日