カルロスゴーンを保釈した裁判所と警察・出入国管理庁の責任について思うところを書いていきます。
- 被告人カルロスゴーンがレバノンに逃亡
- 法務省、出入国管理局、検察、弁護士も把握せず
- ゴーン被告人を保釈をした裁判所と逃亡のおそれ
- 保釈者を視察する警察の責任
- 地方空港の国際線・国内線の扱いが曖昧でプライベートジェットの出国を許したという指摘
- レバノンとは容疑者引渡条約(犯罪人引渡条約)を結んでいない
被告人カルロスゴーンがレバノンに逃亡
🔴 عاجل - كارلوس غصن يصل إلى لبنان رغم الإقامة الجبرية المفروضة عليه في اليابان https://t.co/3wqY85yq8Z pic.twitter.com/BZi06Y4p41
— فرانس 24 – عاجل (@BreakingF24_ar) 2019年12月30日
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レバノンメディアがカルロスゴーン氏がレバノンに居ることを報じ、フランスフィガロ紙が報じていました。
法務省、出入国管理局、検察、弁護士も把握せず
日産 ゴーン元会長レバノン到着か 海外渡航禁止の保釈条件 | NHKニュース
「カルロスゴーン」の名前での出国が確認できないということから、別名での出国か、まったく異なる不正な出国手段を用いたということになります。
入国管理局が把握していないということは、不法出国ということであり、保釈条件に違反するとともに旅券法違反ということになります。
弁護団としてはせっかく保釈を取ったのにどうしたものかと考えていると思います。
ゴーン被告人を保釈をした裁判所と逃亡のおそれ
ゴーン氏を保釈した裁判官に対する批判が高まると思うので予め言っておくけど、保釈した裁判官に責任はない。法律上、逃亡の可能性が高いことは保釈を認めない理由とはされていないし、被告人の逃亡リスクは推定無罪と適正手続きの保障を維持するためには、ある程度仕方がないと割りきるしかない。
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) 2019年12月31日
被告人が出頭しないと、一審は裁判を開始できません。
— 事情通 (@JIJOsBizAdv) 2019年12月31日
その意味で、保釈を許可した裁判官たちは、万死に値します。
https://t.co/4sC81H9ou6
ゴーン被告人を保釈をした裁判所に責任があるのかどうかはわかりませんが(法的な責任は無い)、逃亡のおそれがあることは、ある程度仕方がないというのはその通りだと思います。
裁判官 島田一による裁量保釈
刑事訴訟法上、保釈不許可の理由に「逃亡のおそれ」はありません。
刑訴法89条の権利保釈の条文からは条文上は「保釈が原則」なのです。
(実態は逆転しているが。だからこそ「人質司法」などと揶揄されている)。
刑訴法90条の裁量保釈には「逃亡のおそれ」等を「考慮」して「保釈許可ができる」とあるだけで、不許可の「理由」として「逃亡のおそれ」があるわけではないというのは、法律上の説明としては山口弁護士の言ってることで間違いないです。
ただ、現実には保釈請求時に裁量保釈を念頭に逃亡のおそれが無いことを主張することもあり、裁判所内部でその点は検討されているはずです。
それにしても、上掲の保釈許可決定書に「逃亡のおそれが低いことを記述していない」というのは、気になるところです(実務上そういうものなのでしょうか?)
保釈金15億円は没取
逃亡は保釈取り消し事由なので、今後は保釈が取り消され、保釈金が没取(没収ではない)され、おそらく全額の15億円が国庫に納められるでしょう。
ゴーン氏にとっては15億円すら安いものだったのかもしれません。
保釈者を視察する警察の責任
第十七章 保釈者等の視察
(保釈者等の視察)
第二百五十三条 警察署長は、検察官から、その管轄区域内に居住する者について、保釈し、又は勾留の執行を停止した者の通知を受けたときは、その者に係る事件の捜査に従事した警察官その他適当な警察官を指定して、その行動を視察させなければならない。
2 前項に規定する視察は、一月につき、少なくとも一回行うものとする。
警察官はカルロスゴーンを「視察」 していたハズです。
犯罪捜査規範上は「少なくとも月に1回」ですが、本件においてはどれくらいの頻度行っていたのでしょうか?
検察・警察は秋元司議員のチャイナ企業疑獄事件の捜査に力を入れているので、そちらに人員を割いていた中、年の瀬というタイミングを狙われたのかもしれません。
地方空港の国際線・国内線の扱いが曖昧でプライベートジェットの出国を許したという指摘
ホリエモンが指摘していますが、地方空港の国際線・国内線の扱いが曖昧であるため、入管がチェックする機会も無くプライベートジェットでの出国を許したのではないかと推測がされています。
こういう事が可能ということは、日本がスパイ天国であることの証左でしょう。
ただ、ここまでの可能性を考慮して裁判所が保釈可否の判断をするべきかと言うと、何か違う気がします。警察の視察、出入国回りのチェック体制でどうにかするしか無いのではないでしょうか?
その上で、今後はカルロスゴーンのような人物が保釈請求した際にはコネクションを駆使して逃亡を図るおそれが高いという判断をするべきでしょうが、それを普通の被告人に対してまでも一般化するのは避けるべきだと思います。
外国人であるカルロス・ゴーンに、日本の法への遵法精神など一切ない。また彼が出国できたということは、入管など正規のルートを経ずに日本の出入国が出来ることを明示している。テロリストにとっても楽勝国家であろう。ゴーンの国外逃亡はまさに「多様性」を象徴する事案だ。
— 飯山陽『 イスラム2.0』四刷決定、みなさまありがとうございます! (@IiyamaAkari) 2019年12月31日
「裁判所と被告弁護人の責任」とか言ってるツイートを発見したが、出入国管理の問題だろう。あんな特徴のある顔の人を見逃したとすればチェック体制の不備、他の方法で逃亡したのなら制度的な問題。誰かを叩いて溜飲を下げて終わり、問題はそのまま、それどころか悪化という悪弊、今年限りにすべきだ。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) 2019年12月31日
ゴーン氏の逃亡の件は、保釈に反対した検察の懸念が現実化したものだが、検察は逃亡の恐れも罪証隠滅の恐れもない事件でも強硬に保釈に反対するので、裁判官に対する説得力を失っているのではないだろうか?
— モトケン (@motoken_tw) 2019年12月31日
検察にはもっとメリハリをつけろと言いたい。
レバノンとは容疑者引渡条約(犯罪人引渡条約)を結んでいない
日本とレバノンは容疑者引渡条約(犯罪人引渡条約)を結んでいないので、日本は任意にレバノン政府に対して要求することしかできないということになります。
ゴーン氏はフランス・ブラジル・レバノン国籍を持っていると言われていたので、レバノンに逃亡する可能性はあると認識されていたはずですが、フランスの経済紙レゼコーでは「ゴーン元会長はトルコを経由して30日夜にレバノンの首都に到着した」と書いているように、無関係の国を経由すれば怪しまれないのでしょう。
また、MTVによれば「楽器を移すための箱に入れて日本から出発した」とあります。
X線検査は強制処分なので令状が必要であるという判例があるので、どうしたものやら。
日産カルロスゴーンの犯罪容疑事件は日本とレバノンの法務当局同士のやり取りに左右されることとなりました。
以上