もう一つの論点が発生
- Colabo弁護団「暇空茜=水原清晃の住所等は合法的手段で」
- 弁護士らの見解は様々「倫理上問題ない」「不当懲戒請求ではないがやりすぎ」「懲戒相当かもしれない」
- 類似の先例:代理人としての発信者情報開示請求後に本人としての訴え提起のために利用することは適法
Colabo弁護団「暇空茜=水原清晃の住所等は合法的手段で」
Colabo弁護団が記者からの「(暇空茜(=水原清晃の)特定に繋がったのはどういう所からなのか?」という質問に対し、「暇空茜(=水原清晃)は普通に合法的な方法で暇空茜を特定しました」と回答していました。
それに関して、懲戒請求相当ではないか?という疑問が生じました。
曰く、暇空氏から既にColabo弁護団の一員である中川卓弁護士(Twitterでは「弁護士アンバサだよ@basadayobengosh」)にTwitter上の発信に関して懲戒請求を行っていたところ、そこに記載されている暇空氏の住所情報を流用したのではないか?というものです。
中川卓さんの懲戒請求第二弾出しました
— 暇空茜 (@himasoraakane) 2022年12月1日
本当に僕の個人情報が流用されたとしたら恐ろしいです
こんな倫理を守れない弁護士は懲戒されるべきだと思います
合法的に得た手段が「懲戒請求送達より以前の日付の証明付きで」説明されたら謝ります pic.twitter.com/lt4FAigyEt
どうやら二弾目の懲戒請求を出したようです。
なお、暇空氏の本名が水原清晃であることは暇空氏本人が何度もネット上に公開して認めているので、この点に関しては問題になりません。
弁護士らの見解は様々「倫理上問題ない」「不当懲戒請求ではないがやりすぎ」「懲戒相当かもしれない」
・神原先生は懲戒請求されると請求者の住所を知ることができることは直近の大量懲戒請求の経験から知っている
— 国際企業法務弁護士🤡婚活の本質 (@big_lawfirm) 2022年12月1日
・アンバサ先生はちょうど住民監査請求が盛り上がっている最中で暇空に懲戒請求された
・当該懲戒請求はTwitterで画像付きで投稿されて話題になった
こういう経緯ですね。 https://t.co/ayLpzFVsnW
私個人の感覚としては、この件で懲戒請求はやり過ぎ感がある。(不当懲戒請求ではなかろうが。)
— 弁護士 吉峯耕平 (@kyoshimine) 2022年12月1日
だって、暇空さんは実名は公開していて、Colaboは訴えてこいって立場だったんだから、仮に弁護団の情報入手が個人情報保護法に違反していても、それは形式的な瑕疵にしか過ぎないんだよね。枝葉の問題。
事業者として取得した情報か疑義(論点)があり、少なくとも「人の…財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」に該当するのでは。感覚的にも何が問題なのか分からない。あと、今は弁護士倫理ではないです。 https://t.co/wW5Phf3QOp
— 渡辺輝人 🇺🇦連帯 (@nabeteru1Q78) 2022年12月1日
補足ですが、相手方との関係で守秘義務は問題にならないので、個人情報の収集、利用が品位を害する態様じゃないか、という問題意識でした。職務基本規程上の明確なルールは無いという理解です。
— 国際企業法務弁護士🤡婚活の本質 (@big_lawfirm) 2022年12月1日
懲戒手続で得たのではなく、裁判記録の閲覧で得たなら多分大丈夫そうです。ただ、無関係の裁判の事件記録をどうやって見たの?という話ではありますが。検索システムとかはないので。 https://t.co/SUS7Lqq2R0
— 国際企業法務弁護士🤡婚活の本質 (@big_lawfirm) 2022年12月1日
不当懲戒請求訴訟を提起したり、虚偽告訴罪で刑事告訴をするのに使うのは如何ですかね。情報主体の同意を必要とするとか言われたら、訴訟提起はできなくなりますが。 https://t.co/J6CS30IuGn
— 小倉秀夫 (@chosakukenho) 2022年12月1日
弁護士らの見解は様々です。
「倫理上問題ない」「不当懲戒請求ではないがやりすぎ」「懲戒相当かもしれない」といったニュアンスのものが見つかります。
個人情報保護法では「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」には目的外利用が許されています。
が、そもそも当該弁護士は同法上の「個人情報取扱事業者」なのかどうかという点と、そうだとしても依頼人の財産(不法行為に基づく損害賠償請求権)の保護のために必要がある場合として認められるのではないか、ということが言われ、少なくともこの観点からの違法性は問題にならないという筋が強そうですが、暇空氏が「Colaboは訴えてこい」という態度であったことが「本人の同意を得ることが困難」要件との関係でどうなるかはわかりません。
したがって、最終的には弁護士倫理の問題として懲戒相当かどうかという話に。
弁護士職務基本既定
(名誉と信用)
第六条
弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。
弁護士法
(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条 弁護士及び弁護士法人は、この法律(弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員又は使用人である弁護士及び外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士にあつては、この法律又は外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律)又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
類似の先例:代理人としての発信者情報開示請求後に本人としての訴え提起のために利用することは適法
弁護士による個人情報、相手方の特定に関する相場観を測るために、類似の先例を探ることは有益でしょう。
「別件で知った相手方の情報を元に特定をして訴訟提起した」という事案として、以下の発信者情報開示請求後の裁判例があります。
高裁で逆転したネット中傷「悪徳弁護士」事件、発信者情報が「別の裁判で証拠にできる」意義 - 弁護士ドットコム
プロバイダ責任制限法4条3項では、「発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉または生活の平穏を害する行為をしてはならない」とあります。
【依頼人の代理人として得た発信者情報を自らが本人として訴訟提起するために利用した】、という方法が「みだりに用い」に該当するかが争われましたが、地裁では違法の判断だったものの高裁で逆転し適法となりました
⇒東京高裁令和2年9月17日判決 令和2年(ネ)222号
東京高裁判決では①「開示を受けた者」は依頼人であり代理人の弁護士ではないから同規定の義務を負わない、②単に目的外利用をしただけでは「みだりに用いて不当に~害する行為」をしたことにはならない、との法理を前提に適法であるとしました。
その上で、この事件の弁護士は依頼人から同意を得て発信者情報を利用し、被告のネット上の発信によって生じた自己の損害賠償請求権を行使するために使用したという事情から、「みだりに~害する行為をした」とは言えないとされました。
その後の具体例として室井佑月氏の代理人として動いた米山隆一弁護士の例があります。
ただ、今回のColabo弁護団の場合には発信者情報開示請求によって暇空氏の住所を得たわけではないので、この裁判例は直接的には関係ありません。
【懲戒請求書に記載されている懲戒請求者の個人情報を、自己が訴訟提起するためではなしに、他人の代理人として当該懲戒請求者に対する別件訴訟提起の際の相手方の特定のために利用する行為が弁護士法上の懲戒自由に該当するか】という問題。
もっとも、Colabo弁護団が、中川弁護士に対する懲戒請求書以外のルートで暇空=水原氏の住所情報を知ったということであれば、ここで検討したことは無関係になります。
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