採択自治体が次々と
【脱退一時金】大阪府議会で意見書採択
脱退一時金の制度・運用の是正を狙いとして、地方議会における国に対する意見書(地方自治法99条に根拠)が採択される例が相次いでいます。
これまでに福岡県行橋市議会、群馬県長野原町議会で採択されていたことが分かっていますが大阪府議会でも12月12日に採択されており、文面がHP上に公開されています。
年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書 12 月12 日 原案 可決
年金制度における外国人への脱退一時金の是正を求める意見書
国民年金や厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)で日本国籍を有しない方が我が国を出国する際は、脱退一時金を請求することができる。同時に年金受給資格を喪失するため、将来的には無年金や低年金となる。脱退一時金の裁定件数は増加傾向にあり、令和3年度は9万6千件に達し、過去10年の累計値は72万件を超えた。年金を受給するためには最低10年間の加入期間が必要だが、仮に我が国に在留を続け生活が困窮した場合、生活保護の支給対象となる。
また、同制度は再入国を妨げていないため、のちに我が国で再度就労することができる。外国人労働者の産業別内訳は、製造業を筆頭に卸売業、小売業、ならびに宿泊業、飲食サービス、建設業など雇用の流動性が高く派遣労働が多い職種である。
入国時には就労ビザや留学ビザであっても、やがては永住資格などの申請を行うことができるようになっており、永住資格を持つ外国人であっても脱退一時金の申請を妨げるようにはなっていない。
日本人は基本的に公的年金を脱退することはできず、この現状を放置することは国民の間に強い不公平感を与えることになりかねない。特に派遣社員が雇止めになった等の場合は、極めて大きな格差が生じている。
無年金で我が国に在留を続け、結果として生活が困窮となった外国人が増加すると、将来的に地方の財政負担につながる。脱退一時金を請求した方は永続的に帰国する前提であるという制度の趣旨に立ち返るとともに、政府において必要な実態把握を行い、在留資格に関する議論の進捗も踏まえながら次期年金制度の改正に向けて必要な検討を行うよう強く要請する。以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和5年12月12日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 各あて
法務大臣
厚生労働大臣
内閣官房長官大阪府議会議長
久谷 眞敬
この意見書の文言ですが、以下で掲載されている、全国の1700自治体に配布された陳情書にある意見書案と比べてみると面白いと思います。
京都府亀岡市議会でも意見書採択
12月18日には京都府の亀岡市議会でも意見書が採択されています。
令和5年第2回亀岡市議会定例会12月議会会議結果 - 亀岡市公式ホームページ
脱退一時金を含む年金制度の検討を求める意見書(案)12月18日 可決
脱退一時金を含む年金制度の検討を求める意見書(案)
我が国における外国人の受入れ及び共生社会の取組が進められている中にあって、国際的な労働力移動に伴う、社会保障の在り方についても、時代に即した対応が求められています。
国民年金や厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)で日本国籍を有しない方が我が国を出国する際は、脱退一時金を請求することができますが、同時に年金受給資格を喪失します。また、入国時に就労ビザや留学ビザであっても、永住資格などの申請を行うことができるようになっており、その資格を持った外国人であっても脱退一時金の申請を妨げるようにはなっていません。脱退一時金の裁定件数は増加傾向にあり、令和3年度は9万6,000件に達し、過去10年の累計数は72万件を超えました。
現在、我が国では「保険料の二重負担」を防止するために加入すべき制度を二国間で調整するとともに、年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする社会保障の二国間協定を23か国と結んでいます。
これら脱退一時金や社会保障の二国間協定なども含め、現行制度が時代に即したものとなるよう、次期年金制度改正に向けて、現状の制度運用における課題やその実態を把握した上で、必要な検討を行うよう求めます。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
令和5年12月18日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
法務大臣
財務大臣
厚生労働大臣
出入国在留管理庁長官亀岡市議会議長 菱田 光紀
宛
大阪府の意見書の文言と比べると、かなり変わっていることに気づきます。
また、名宛人となっている政府の機関名も注目です。
脱退一時金制度運用の是正に共産党議員団が反対傾向
上掲画像は亀岡市のものですが、大阪府のページでも採決においてどの会派が賛成・反対したのかが分かるようになっています。
大阪府は民主党と共産党の会派が、亀岡市は共産党の会派が反対しています。
他方で、日本維新の会と公明党の会派は賛成しているのが分かります。
武見厚労大臣も言及した「次期年金制度改革」に向けて
脱退一時金に関する稲田朋美議員の質疑に対して武見敬三厚労大臣も答弁で言及していましたが、「次期年金制度改革」に向けて各所がスケジュールを共有しています。
大阪府議会や亀岡市議会の意見書にも「次期年金制度改革」があるのが分かります。
これは令和6年度中に法改正が為されると見込まれており、そのためには令和6年の夏に大枠が決定されるだろうと予想されています。
全国市長会も厚労省との協議の場で脱退一時金の実態調査を求めるなど、各所が動いています。
国側も個別の照会等を受けて問題を認識していますが、有権者と近い、民主主義の中核である地方議会から要求を受けることでさらにアクセルとなる、逃げることが許されない状況が作られます。
今回、地方議会の12月定例会での意見書採択について触れましたが、そろそろ閉会するタイミングです。そのため、多くは年明けの2~3月に予定されている定例会等での意見書採択が行われるかどうか、という話になってきます。
既に小坪慎也議員から1700自治体に対して陳情書と政策資料漫画が送付されていますが、通例、そうした動きがそのまま議題に上がることは少ないです。
資料も議会事務局から各会派に配布されるハズですが、個別の議員の手元に渡されているかは要確認。さらに、各議員・会派がその内容を受けて行動するかは未知数。
そのために当該自治体の有権者が改めて議員に陳情し、請願或いは議員発案として議事日程に上げてもらう動きがあればかなり有効。そのために何をすればよいのかは小坪議員が示しています。
ある程度の前提知識が必要なため、取り急ぎは以下の記事を置いておきます。
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