事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

安倍総理「自由で開かれた国際秩序」岸田総理「自由で開かれたインド太平洋」:高橋洋一の難癖に反論する

世界中で暗躍する中国に対し「自由で開かれた国際秩序」を求めるのは悪い事なのか?

「自由で開かれたインド太平洋が消えた」というデマ

産経新聞で安倍元総理のスピーチライターであり元内閣官房参与の谷口智彦が「岸田政権では"自由で開かれたインド太平洋"という概念が外交の辞書から消えた」とする記事が掲載されました。

しかし、これは全くのデマであり、「自由で開かれたインド太平洋」は岸田総理も発言し、「自由で開かれた国際秩序」は安倍総理時代から場面によって使い分けられていた、「法の支配」などの中核的要素が重要、ということを上掲記事では示しました。

17日中に産経新聞のツイートにコミュニティーノートが付加されて以降も、なお岸田政権における自由で開かれたインド太平洋=FOIPの扱いに疑義を呈する者が出現しています。

同じ内閣官房参与だった高橋洋一氏の言動を取り上げます。

高橋洋一「事務方の外務省HPではなく総理の発言の変化・置き換え増」

https://archive.is/pO41i https://archive.is/wtNoD https://archive.is/SY8LU

嘉悦大教授の高橋洋一氏はX(旧Twitter)で「事務方の外務省HPではなく総理の発言の変化がポイント」「「自由で開かれた国際秩序」に置き換えているケースが増えている」などと投稿。

「~インド太平洋」という表現がどこにあってどこに無い、ということを示して「微妙に揺れてるな」「一人コミニティーノートをやってしまった笑」などと悦に浸っている様子が見て取れます。

では、その「総理の発言」を確認してみましょう。

安倍総理の時代から。公的な記録で。

故安倍元総理も「自由で開かれた国際秩序」と複数回発言

故安倍元総理も「自由で開かれた国際秩序」と複数回発言しているのが分かります。

平成29年3月27日 | 首相官邸メールマガジン | 首相官邸ホームページ

安倍総理からのメッセージ
3月22日(水)

欧州各国で会談したドイツ・フランス・EU・イタリアの首脳とは、日米欧が手を携え、自由で開かれた国際秩序の維持と強化に取り組む決意を確認しました。

平成29年3月20日 日独共同記者会見 | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

【安倍総理冒頭発言】

~省略~ 

 世界で保護主義や内向き志向の台頭が懸念される中、本日、私はアンゲラと自由で開かれた国際秩序こそが平和と繁栄の礎であるとの点について一致をいたしました。

日・リトアニア首脳会談|外務省平成30年10月12日

3 日EU関係
(1)両首脳は,法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が挑戦を受ける中,その維持・強化こそ,基本的価値を共有する日本と欧州が共に取り組むべき課題であることを確認しました。

彼らは安倍総理をも否定するのだろうか?

岸田総理も「自由で開かれたインド太平洋」と10月以降も発言

谷口氏は「岸田総理が10月国会の所信表明演説で「自由で開かれたインド太平洋」が皆無」と書いていましたが、所信表明演説に限る意味が分からない

10月25,26日の衆参両議院での答弁で、岸田総理は「自由で開かれたインド太平洋」=FOIPに触れて発言しています。

そして、その後も当該用語は消えてもないし、不必要に少なくなっている、ということも伺えません。ウクライナ-ロシア関係についての言及が多くなる結果、相対的に「インド太平洋」に言及する回数が少なく見えているだけです。

それは「置き換えている」ではありません。

高橋氏の言う、「総理の発言」も、岸田総理の発言・寄稿として「自由で開かれたインド太平洋」は言及があります

令和5年12月16日 岸田総理によるジャパン・タイムズ紙への寄稿文 | 総理の指示・談話など | 首相官邸ホームページ

 現在、国際社会は歴史的な転換点にあり、法の支配に基づく国際秩序は重大な挑戦を受けています。また、我々は気候変動、公衆衛生危機、社会的格差など、複雑で複合的な課題にも直面しています。
 次の50年に向けて、我々は、長年にわたり培ってきた相互の信頼と尊重に基づき、引き続き緊密に協力していきます。既存の、そして新たな課題に共同で取り組み、自由で開かれたインド太平洋地域を確かなものとし、全ての人々に繁栄をもたらします。

日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議(概要)|外務省

日ASEAN友好協力特別首脳会議共同議長記者発表記録
令和 5 年 12 月 17 日(日曜日)14 時 19 分 於:ホテル・オークラ東京)

(岸田総理)
 先ほど、日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を成功裏に終えました。まずは、共同議長であるジョコ大統領はじめ各国首脳及び代表団の皆様に感謝申し上げます。

~省略~

 全ての国が平和と繁栄を追求でき、民主主義、法の支配、良い統治、人権と基本的自由の尊重といった原則が守られる世界、これが我々の目指す世界のビジョンです。

 その上で、我々は、第一に、「世代を超えた心と心のパートナー」として、長年の信頼関係を次世代に繋ぎ、強化していきます。

 第二に、「未来の経済・社会を共創するパートナー」として、共通の課題への解決策を見出していきます。

第三に、「平和と安定のパートナー」として、自由で開かれたインド太平洋を推進します。

なお、日本ASEANの共同ビジョンにも表れています。

日本ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント信頼のパートナー

AOIP 及び日本の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)ビジョンの双方が、地域の平和、安定及び繁栄を促進する上で、関連する本質的な原則を共有していることを認識し、

世界中で暗躍する中国に対し、「~国際秩序」を求めることは悪いのか?

そもそも、元の谷口氏の主張にもあった、「~国際秩序」という言い回しが増えることの懸念とは、いったい何なのでしょうか?

「インド太平洋」というワードに固執してるようですが、大事な事を忘れています。

中国は世界中で暗躍している】ということを。

インド太平洋以外だとアフリカ諸国で顕著で、中国による野放図な支援と称した借金漬けの状況が生まれています。

それに対しては、一定の統制下に置こうという動きが日本・米国など他国によって行われ、その成果なのか中国の態度が変わり、債務免除の例もみられるようになりました。

ほかにも安倍総理が提唱したものには「信頼あるデータの自由な流れ」(DEFT)といった概念があります。

「自由で開かれたインド太平洋」概念のベースにある法の支配などの価値観、それを全世界においても適用する「自由で開かれた国際秩序」という展開を否定すべき理由など、どこにも無いはずです。

単語の有無とその定量的出現回数だけで論じようとする、その不毛な議論がなぜ起こるのか。岸田政権が嫌なのは別にいいが、デマを拡散して安倍総理まで貶めないで欲しい。

以上:SNSシェア,はてなブックマーク,ブログ,note等でのご紹介をお願いします