池江璃花子選手への五輪出場辞退要求等のバッシングについて。
既に歴史修正が為されているのでここでしっかりと整理します。
- 池江璃花子選手の5月7日のツイート
- 池江璃花子選手への五輪出場辞退要求:80%がリベラル
- オリンピック開催の広告塔としてアスリートが政治利用された問題?
- 「スポーツの政治利用」という開催反対派によるゴリ押し
- 池江璃花子選手への人格否定・誹謗中傷のツイート
- 匿名ではなく実名顔出しアカウントからの圧力
- 「ツイートが出てない時点で記事が書かれた」という勘違い
- まとめ:五輪出場辞退要求・誹謗中傷事件の歴史修正
池江璃花子選手の5月7日のツイート
いつも応援ありがとうございます。
— 池江 璃花子 (@rikakoikee) 2021年5月7日
Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、↓
池江璃花子選手の5月7日の5つのツイートでは、池江選手にオリンピック出場辞退を要求するコメントに関して見解を述べています。
このツイートの前から出場辞退を要求する声があるというのも驚愕ですが(開催中止を組織委員会に要請することを要求するツイートも見られる)、この一連のツイートに対しても人格否定・誹謗中傷が行われています。
池江璃花子選手への五輪出場辞退要求:80%がリベラル
池江璃花子選手への五輪出場辞退要請は誰が行っているのか(鳥海不二夫) - 個人 - Yahoo!ニュース(魚拓)
鳥海教授による「五輪出場辞退要求」のツイートに関する分析。
どのくらいが批判でどのくらいが応援メッセージなのかを5月7日~5月9日10時までに寄せられた7,676のツイートを対象に分析してみました.
最後に,引用リツイートも含めた池江選手に関連するツイートのクラスタ分析を行いました.
応援系である下の二つのクラスタが圧倒的に多く20,000を超えるアカウントが拡散を行っています.一方,上の辞退を求めるクラスタは1500弱のアカウントによる拡散でした.この点からも,応援をする人たちの方が圧倒的に多いということが分かります.
ところで,この分析をしていて気になったのが,辞退を求めるツイートを拡散しているアカウントの80%近くが過去のツイートから「リベラル系」とラベリングされていたアカウントだった点です.そして,その拡散されたツイートの中には誹謗中傷に近いのではないか?と思えるようなツイートも含まれていた点を非常に残念に思います.もちろんリベラル系のすべてのアカウントが参加していたわけではなく,ラベリングされたアカウントの中では0.35%と極一部のアカウントではありましたが,保守系のアカウントでは0.05%だったことを考えても党派性の強さが気になりました.
80%がいわゆるリベラル系のアカウントだったという実態が暴かれています。
オリンピック開催の広告塔としてアスリートが政治利用された問題?
「アスリートファースト」ではなく、「アスリートを利用したい人たちファースト」。
— 武田砂鉄 (@takedasatetsu) 2021年4月14日
自民の世耕弘成参院幹事長は7日の議員総会で「(世論調査で)池江さんの活躍に期待するかの質問の後、五輪を開催すべきかと聞けば9割の人が開催するになるんじゃないか」と述べた。https://t.co/5tYwRpap6A
4月7日の自民党議員総会において世耕弘成参議院議員が「(世論調査で)池江さんの活躍に期待するかの質問の後、五輪を開催すべきかと聞けば9割の人が開催するになるんじゃないか」と述べたとする報道等が出回りました。
初報は朝日新聞4月14日
これ以降、池江璃花子選手を「オリンピック『開催の』広告塔として政治利用している!」という反応が多くなりました。
しかし、世耕議員の発言は自民党議員総会という政治家のみのクローズドの中での話であり、その内容は公開されているわけではありません。
世耕議員が報道機関に向けて発信したというものでもありません。Twitterアカウントも、4月7日午前中のツイートから5月10日までの間、ツイートを更新していません。
そして、これは「世論調査」における仮定的な話として為されたとあるのですが、その後、そのような設問の世論調査が行われたという現実はありません。
したがって、このような意味での「政治利用」の実態は観測されていません。
発言の前後が分かりませんが、世論調査一般の話の文脈の中で「キャリーオーバー効果」に関する例示として話した可能性があります。現に、朝日新聞の記事ではかっこ書きで「(世論調査で)」とあることから世論調査の文脈における発言を切り抜いたことが分かりますし、この朝日新聞記事は純粋な事実報道ではなく論説交じりの記事にもかかわらず、この発言につき何ら価値判断を示していません。
なお、新型コロナ禍以前の話として、政治家による以下のような発言がありましたが、当時はオリンピック開催が危ぶまれていた状況ではないので、無関係です。
橋本聖子氏「五輪の神様が池江選手の体を使って…」 - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル
「スポーツの政治利用」という開催反対派によるゴリ押し
「スポーツの政治利用」 pic.twitter.com/O9oM5IAgga
— 能川元一 (@nogawam) 2021年5月7日
今回のツイートに関しては、たとえば「月刊正論」が池江選手のツイートをリツイートしただけで「スポーツの政治利用」などと意味不明な事をツイートしている「リベラル系のアカウント」が居ました。
こういう形で「オリンピック『開催の』ためにアスリートが政治利用」というナラティブが作られているということです。
なお、チェンジオルグという署名数水増しが可能で不正チェックできないサイトにおいて、オリンピック開催のための署名を集める文章中に池江璃花子選手の名前を使っているところがありますが、これは「池江選手を利用している」と言われても仕方がないと思います。
池江璃花子選手への人格否定・誹謗中傷のツイート
さて、一選手に対する「辞退要求」だけでも論外なのですが、池江選手の一連のツイートに対してはさらにそのツイート自体を非難し、池江選手の人格否定或いは誹謗中傷にわたるツイートまで見られました。
池江選手は押し売り感動五輪の広告塔を担っており、利益もあるから引き受けたのだろうし、矢面に立たざるを得ないのは致し方ない。それでも、二十歳そこそこの彼女に東京五輪を背負わせる事は酷だ。池江選手の背後にいて、感動五輪を押し売りする連中は実に薄汚い。今回も彼女を出しに使っている。
— 大下賢一郎 (@kemuchiman) 2021年5月8日
「池江選手は押し売り感動五輪の広告塔を担っており」などと、池江選手の認識を超えて自身の願望(オリンピックは感動の押し売りだ)を投影。人格否定でしょう。
「広告塔だから矢面に立たざるを得ない」というのがなぜなのか意味不明だし、他にもオリンピックのスポンサー企業に所属する選手は居るのになぜ彼女だけを狙うのか。
それは「池江選手だから」にほかならず、「あの手この手で池江選手をだしに使」っているのは誰なのか。
「押し売り感動五輪」だと評価されるものがあるとしても、それは(日本の)テレビ局のアナウンスや加工映像の演出、報道によるものであって、競技そのもの、オリンピック大会そのものの評価では無いでしょう。
少しでも五輪開催へと流れをつくりたいのだろう。例え世論の多数が開催を望んでいたとしても、今の状況下で五輪開催など無理である。あの手この手で池江選手を出しに使うのはやめろ。
— 大下賢一郎 (@kemuchiman) 2021年5月8日
大下賢一郎氏は「オリンピック開催賛成派が池江選手を政治利用している」と言っていますが、利用しているのは誰なのか?「そういうストーリー」を作りたいんだなというのは理解できます。
池江さんのtweetを見ました。
— Koichi Kawakami, 川上浩一 (@koichi_kawakami) 2021年5月7日
亡くなられた方にお悔やみも言えないのか?
と思いました。
国立遺伝学研究所の川上浩一氏は、池江選手のツイートを見た感想として「亡くなられた方にお悔やみも言えないのか?」とツイート。その傍らに自身は以下ツイート。
148人ですか、、、
— Koichi Kawakami, 川上浩一 (@koichi_kawakami) 2021年5月7日
N501Y英国型変異株は、これまでの緊急事態宣言下の対策では乗り切れそうもありません。関西圏、首都圏は、エッセンシャルワーカーを除いて通勤を止め、学校を休校(オンライン)にしないと。 pic.twitter.com/FzqtirwYMV
新型コロナの死亡者に関する話題でもない池江選手のツイートに対して、常にお悔やみを要求するというのは、単なる感想ではなく理不尽な強要であり、それをしていない事を咎めるのは誹謗中傷でしょう。
しかも自身の言動とも矛盾しています。川上氏の場合はダイレクトに新型コロナウイルスによる死亡者に関する発言です。ダブルスタンダードと言うことすら生ぬるい。
匿名ではなく実名顔出しアカウントからの圧力
少なくとも、池江選手には「今のコロナ禍でオリンピック中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だ」という認識は持っていることは分かった。十分だろう。 pic.twitter.com/aJXnSNFM9C
— 伊丹和弘@マリサポ兼記者 (@itami_k) 2021年5月8日
池江璃花子選手に対する言動について、「匿名の圧力」と報道するところが目立ちます。確かにリプライや引用リツイートの形で直接的に池江選手に出場辞退を迫った者としては実名アカウントと思われるものはほぼ居ません。
しかし、既に見てきたように、5月7日のツイートを起点とした池江選手に対する人格否定・誹謗中傷については、匿名ではなく実名・顔出しアカウントが、直接的なリプライや引用リツイート以外の方法で行われており、そうした発信によって形成される言論空間は、「圧力」と言えるでしょう。
「ツイートが出てない時点で記事が書かれた」という勘違い
なお、「池江選手のツイートが出てない時点でメディアによる記事が書かれた・ツイートからノータイムで記事が書かれた」という勘違いが一部でありましたが、池江選手の一連のツイートが最初のもの(21時01分 · 2021年5月7日)から最後のものまで25分あり、その間にリアルタイムで更新している記事が、最初の投稿時のタイムスタンプを更新していなかっただけです。
デイリー新潮のページソースを見ると、初稿は21時12分のもので、最初のツイートから11分遅れ。その後追記・タイトルも修正されています。
魚拓1:https://archive.is/Kwjw2 魚拓2:https://archive.is/SI7OX
まとめ:五輪出場辞退要求・誹謗中傷事件の歴史修正
- 出場辞退要求
- 開催中止要請の要求
- ツイートそれ自体に対する非難
池江璃花子選手への一連の五輪出場辞退要求・誹謗中傷は「事件」でしょう。
しかも、その出来事を「オリンピック開催賛成派が池江選手を政治利用している」というストーリーに改竄しようとしているのが見て取れたと思います。
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