「意図的に書きました」という自白
- 共同通信社国際局「上川大臣の発言の解釈として『childbirth』という表現を用いた」
- 共同通信の当初記事「産まずして」が「うまずして」に変更、さらに修正・追記があった
- 共同通信英語版の記事も大幅追記・タイムスタンプ改竄が行われていた
共同通信社国際局「上川大臣の発言の解釈として『childbirth』という表現を用いた」
外相「うまずして」英訳記事、男性に言及あり「明示なくても『出産』比喩」 共同通信回答 - 産経ニュース
共同通信社国際局は21日、上川陽子外相が静岡県知事選の自民党推薦候補の応援演説で「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」と発言したことを巡る同社の英語版記事について、「一連の発言は『出産』を比喩にしたものと考えられます。上川氏が『出産』と明示的に述べなかったとしても、発言の解釈として『childbirth』という表現を用いました」とコメントした。「childbirth」は出産と訳される。産経新聞の取材に答えた。
共同通信社国際局が「上川大臣の発言の解釈として『childbirth』という表現を用いた」と産経新聞に堂々と答えています。
本件の経緯について整理します。
共同通信の当初記事「産まずして」が「うまずして」に変更、さらに修正・追記があった
共同通信の上川大臣発言に関する報道の全体像は以下の通りです。
①47NEWSや共同通信の当初記事のタイトルの記述は「産まずして」だった。「出産したくても困難な状況にある人への配慮に欠けるとの指摘が出る可能性がある」と記述。
②すぐに「うまずして」に変更。地方紙のHPに痕跡が残り、沖縄タイムスが訂正した旨を追記するなど異例の対応をしたところも。
③さらにその後、記事本文の内容も修正し、『「この方を」うまずして』という発言の対象を記述し、趣旨の説明も知事を当選させるものだということを明確化。
④ただしタイムスタンプは改竄されて立憲民主党の逢坂誠二議員による批判を追加
⑤共同通信英語版の上川発言を報じた記事(記事1)ではタイトルに「上川大臣が選挙演説で出産を伴わない女性の価値を問う」と訳される「Japan minister queries women's worth without birth in election speech」と書き、本文も「子供の出産の重要性を新しい知事を選ぶことと同一視した」という意味の文章があった。
⑥共同通信英語版はさらに上川大臣が発言を撤回した事を報じた別の記事(記事2)でタイトルと記事URLに「childbirth」という、女性による子供の出産を意味するほかない単語が使われ、記事本文では「women's giving birth」という語を使い、何らかの価値などを「生みだす」という比喩的な意味には解されない用語法だった。
⑦当該記事は約7時間後に大幅に追記・変更され、タイトルの「childbirth」は「"birthing"」に、「women's giving birth」という言い回しも無くなったが、その部分が「出産しない女性の価値に疑問を呈すると広く解釈された発言」があったとされる
⑧タイムスタンプも改竄され、さらにはなぜか立憲民主党の逢坂誠二議員による批判の紹介が削除され、泉健太代表による批判の紹介が代わりに追記されていた。
日本語の記事については以下でまとめています。
共同通信英語版の記事も大幅追記・タイムスタンプ改竄が行われていた
産経新聞記事にある共同通信の英語記事は、前項で言う「記事1」であり、「記事2」についてどのように回答したのかは明らかではありません。
むしろ悪質性は記事2の変更前の方が大きく、単に比喩的表現をしましたと言い逃れができるレベルではなく、事実の誤りをベースとした「捏造」と言い得るものでした。
この主張は間違いで、朝日新聞英語版ですら
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年5月21日
"this person"=この人を、という目的語を付けて報じています。
共同通信の英語版が印象操作すら下手すぎたという話です。 https://t.co/8zAnnIrUe7 pic.twitter.com/ffJVeDz8mw
朝日新聞英語版ですら、共同日本語記事の修正後が追加したように「うまずして」の対象として「"this person"=この人を」を記述しており、「新知事誕生」という趣旨であることが本文を読めば分かるように明確化されています。
(朝日新聞英語版記事は、タイトルだけや導入文だけを見ると「出産」について述べたように勘違いする者が出てくるような構成になってはいる)
さらに、「記事2」の変更後の問題点として、「出産しない女性の価値に疑問を呈すると広く解釈された発言」と追記されたことが挙げられます。
日本語記事でもそうですが、「女性の出産」についてのことであると最初に喧伝したのは共同通信自身です。その「犯人」本人が、「広く解釈された発言」などと修正後に書いているのは、事態の経緯を隠蔽し、他者に責任を押し付けて自身の誤りを糊塗する意図があると言うほかありません。タイムスタンプの改竄が、その要素を色濃くしていると言えます。
立憲民主党議員に責任を擦り付けているようにも見えてしまいます。
- メディアが全く問題ない発言について「批判が予想される」などと書く
- 野党議員が呼応して批判する
- メディアがその批判を掲載する
この流れがセットになっているのが日本のマスメディアの報道の常ですが、共同通信の英語版は、それを一つの記事の編集前後でやっていたということになります。
本当は①日本メディアが騒ぐ⇒②海外メディアが取り上げる⇒③日本メディアが「海外メディアが批判している」と報じる、というセットもやりたかったのでしょう。そうした動きも過去に夥しいほど存在し、最近では群馬県草津町の冤罪事件について発生していました。*1
共同通信英語版の上川大臣発言に関する2つの記事の展開については以下でまとめています。
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