事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日韓首脳電話会談韓国ムンジェイン大統領「日韓請求権協定の解釈に違いがある」⇒仲裁委員会は?

日韓首脳電話会談ムンジェイン

日本側の立場と韓国の狙いが報じられていない。

日韓首脳電話会談

日韓首脳電話会談|外務省

令和3年10月15日

 10月15日、午後6時40分から約35分間、岸田文雄内閣総理大臣は、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。

冒頭、岸田総理大臣から、内閣総理大臣就任の挨拶と共に、就任直後に祝意の書簡を頂いたことに謝意を伝達したのに対し、文大統領から、内閣総理大臣就任への祝意が示されました。
岸田総理大臣から、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題等により日韓関係は引き続き非常に厳しい状況にある旨述べた上で、これらの問題に関する日本の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めました。
岸田総理大臣から、地域の厳しい安全保障環境の下では、北朝鮮への対応を始め、日韓・日米韓の連携を一層深めていくことが不可欠である旨述べるとともに、拉致問題について、引き続きの支持と協力を求めました。これに対し、文大統領から、拉致問題についての日本の立場への支持が示された上で、両首脳は、日韓・日米韓の連携の重要性について改めて一致しました。
両首脳は、新型コロナ対策等の課題に共に取り組んでいくことで一致しました。

https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1015kaiken.html

日韓首脳電話会談の中身、岸田総理からの具体的な要求内容は不明です。

韓国ムンジェイン大統領「日韓請求権協定の解釈に違いがある」

日韓首脳、徴用工で平行線 岸田氏、関係改善へ対応要求―初の電話会談:時事ドットコム

岸田文雄首相は15日、韓国の文在寅大統領と就任後初めて、約35分間電話会談した。首相は、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工をめぐる問題で、解決に向けた前向きな対応を要求。文大統領は「(双方の)法的解釈が異なる問題だ」と述べ、議論は平行線をたどった。

元徴用工をめぐっては韓国の地方裁判所が先月、日本企業の資産に関し売却命令を初めて出した。「現金化」の動きが進めば、日韓関係の悪化が決定的になると懸念されている。

岸田首相 初の日韓首脳電話会談 慰安婦問題などへの対応求める|TBS NEWS

日韓首脳、懸案でかみ合わず 初の電話協議 : 日本経済新聞

岸田氏は元徴用工問題に関し、1965年の日韓請求権協定を踏まえ「適切な対応を強く求める」と要請した。韓国大統領府によると、文氏は「請求権協定の適用範囲を巡る法的解釈に違いがある問題だ。両国で外交的解決を模索するのが望ましい」と返答した。

一番詳しいのが韓国大統領府のHPを見たであろう日経新聞とはね。

日本からどういう要求をしている(きた)のかどこも伝えてない。

仕方ないのでここで書きます。

ちなみに外務大臣会見は首脳電話会談前だったためよくわかりませんが、韓国の東亜日報のキム記者が「電話会談に対する日本のスタンス」などという意味不明な質問をしており、茂木大臣も当たり障りのない回答しかしてません。

茂木外務大臣会見記録|外務省

これが悪用されてないかは気になります。

日韓請求権協定に基づく仲裁委員会から逃げている韓国

朝鮮人戦時労働者(徴用工)差押え後の協議要請は請求権協定通り - 事実を整える

朝鮮人戦時労働者に関する問題は、日本側から仲裁委員会開催を要求しています。

日韓請求権協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)

第三条

1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。

日韓請求権協定では最初に外交ルートでの協議が前提です。

韓国のムンジェイン大統領が「解釈に違いがある」「外交的解決が望ましい」と言っているのは、この条項の事を指していると考えるべきでしょう。

外交的解決が破綻した場合、締約国は1名ずつ仲裁委員を選定するべきことになっています。そして、最終的に第三国の仲裁委員が決定され、仲裁委員会が構成されます。

しかし、この段階は既に2019年には通り過ぎています。

仲裁委員会の設置を拒否しています。

仲裁委員会の後の国際司法裁判所

  1. 外交ルートの協議
    ⇒破綻なら2へ
  2. 仲裁委員の選定
    ⇒紛争仲裁要請の公文受領から30日以内
  3. 第三国の仲裁委員を締約国が合意選定or第三国の政府が指名
    ⇒上記の後の30日以内
  4. 仲裁判断:両政府は仲裁判断に服することに
    ⇒服さなかった場合には5へ
  5. 国際司法裁判所での審理
    ⇒相手国の同意が必要

以上のような手続を踏んで、はじめて国際司法裁判所(ICJ)が出てきます。

国際司法裁判所で審理が行われるためには2パターンあります。

  1. 相手国の同意を得た上でICJに付託する
  2. 一方の国が単独提訴した上で相手国の同意を得る

日本は国際司法裁判規定36条2項に規定されている選択条項受託宣言をしていますが、韓国はこの条項を受託していないので、同意が必要になるということです。

で、結局今まで韓国側がこの仲裁要請にも応じずに放置してきましたし、国際司法裁判所での審理に同意もしないという態度で、結局なにもできないという状態が続いています。

つまり、今回の日韓首脳電話会談でムンジェインが言っていることは、2019年から何も変わっていないどころか、日本側の要求を無視し続けているということです。

さらに言えば日本は「実施」の問題としなければならない。

2019年の段階では以下談話を出しています。

大韓民国による日韓請求権協定に基づく仲裁に応じる義務の不履行について(外務大臣談話)|外務省

岸田総理は日本政府の立場を明確に発言し、メディアは報道しろ

日本政府は日韓請求権協定の「解釈」ではなく「実施」に関して争いがあるとしなければいけないし、ムンジェイン大統領の言っている事は日本が日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置の要請を無視しているという条約違反であり、且つ、条約を守らないというウイーン条約違反ですから、それを強く訴えなければいけません。

その経緯をメディアは報じるべき。

岸田総理も「韓国側に適切な対応を強く求めました」だけでなく、より具体的な内容を発信するべき。

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