「基準日前一箇月以内に退職」した職員も貰える。
岸田翔太郎総理大臣秘書官の退職と期末手当=ボーナスの支給について
- 法令上は岸田翔太郎総理大臣秘書官の場合には期末手当が出ることとなっている
- これは6月1日に在職していることとされるか否かは関係ない
- ただ、本人は返上の意向を示しているところ、そもそも支給されないような措置が採れるのかは現時点では不明確
- その他の特殊事情があるかも現時点では不明確
岸田翔太郎総理大臣秘書官の退職と期末手当=ボーナスの支給について騒がれていますが、とてつもなく簡略化してまとめるとこうなります。
次項では、もう少し詳しく見ていきます。
法令上の建付けと議員ではない岸田翔太郎総理大臣秘書官の場合
法令上の建付けと、議員ではない岸田翔太郎総理大臣秘書官の場合についての箇条書き
- 総理大臣秘書官とは、内閣法第22条の「内閣総理大臣に附属する秘書官」として内閣官房に置かれ、内閣官房組織令第11条によりその定数は5人と定められている
- 岸田翔太郎は、この秘書官に該当する
- 特別職の職員の給与に関する法律において、国家公務員法第二条第三項第八号に掲げる秘書官として内閣総理大臣秘書官が適用対象として挙げられている
- 特別職の職員の給与に関する法律第七条の三で、秘書官については一般職の職員の例によるとされている。
- 一般職の職員の給与に関する法律第十九条の四では、「期末手当は、六月一日及び十二月一日にそれぞれ在職する職員に対して、それぞれ基準日の属する月の人事院規則で定める日に支給する。これらの基準日前一箇月以内に退職し、又は死亡した職員(第二十三条第七項の規定の適用を受ける職員及び人事院規則で定める職員を除く。)についても、同様とする。」と規定されている
- 後段の「人事院規則で定める職員」については人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)で規定されているが、第二条の「期末手当を支給しない」者として総理大臣秘書官は規定されていない。また、岸田翔太郎氏について、他に同条の適用があり得る事情は存在しない
- したがって、5月31日をもって退職しようが、6月1日に在職した後に退職しようが、期末手当=ボーナスが支給されることとされているのは変わらない
- 全額支給か減額された金額が支給されるかどうかの問題が残るだけ
- 「期末手当及び勤勉手当の支給について(昭和38年12月20日給実甲第220号)」では、「基準日に離職し、又は死亡した職員及び同日に新たに職員となった者は、給与法第19条の4第1項及び第19条の7第1項の「それぞれ在職する」職員に含まれる。」とされている。
- よって、岸田翔太郎総理大臣秘書官は、満額支給されることとなっているのではないか?ただし、給与法19条の5や19条の6に該当する事情がある場合にはこの限りではない
- その上で、岸田翔太郎総理大臣秘書官は全額返上の意向を示しているが、支給そのものを止めることができるのか?という疑問がある
- たとえば2021年に菅原一秀議員が退職した際にも期末手当の扱いが問題になったが、本人が全額返上の意向を示しても結局は支給・入金がなされた
- ただ、その理屈は、「(元)国会議員だと国庫に返納することは、広い意味で選挙区への寄付にもつながるゆえに、返納不可」というものであった
- これは政治資金規正法や公職選挙法で「公職の候補者等」を名宛人とした、寄付に関する縛りがあるためであり、総理大臣秘書官である岸田翔太郎氏の場合、今後の身分がどうなるのかにもよるが、このような理屈はそのままでは当てはまらない
- したがって、「そもそも期末手当等が支給されない」のか、「支給しなければならないため受け取り拒否はできないが、支給されたのちに寄付される」のかは現時点では不明確
- その他、一般職の職員の給与に関する法律第十九条の五や六に該当する事情は現時点では明らかではない
なお、産経新聞や日経新聞が以下のように報じていますが、特別な事情を把握した上でなのかなんなのか。
翔太郎氏にはボーナスが支払われないこともわかったので、記事に追記し、タイトルを一部変更しました。
— 産経ニュース (@Sankei_news) 2023年5月29日
更迭の岸田首相長男は退職金受け取らず、ボーナスも支払われず 公邸内で不適切行動
2023/5/30 00:10岸田文雄首相が29日、事実上の更迭を決めた長男の翔太郎首相秘書官(政務担当)は、退職金を受け取らない意向を示していることが分かった。6月1日に辞職するためボーナスに当たる期末・勤勉手当は支払われない。官邸関係者が明らかにした。
首相、長男の岸田翔太郎秘書官を更迭 公邸「忘年会」に批判 - 日本経済新聞
翔太郎氏は辞職に伴う退職金を受け取らない意向を示している。夏のボーナスにあたる期末・勤勉手当は支給の対象外になる。
2021年6月に辞職した菅原一秀議員(当時)の場合は本人が以下報告しています。
特別職国家公務員たる秘書官の場合の関係法令一覧と関係する条文
関係法令について、適用関係が分かるように順を追って掲載します。
内閣法
第二十二条 内閣官房に、内閣総理大臣に附属する秘書官並びに内閣総理大臣及び各省大臣以外の各国務大臣に附属する秘書官を置く。
2 前項の秘書官の定数は、政令で定める。
内閣官房組織令
第十一条 内閣総理大臣に附属する秘書官の定数は五人とし、内閣総理大臣及び各省大臣以外の各国務大臣に附属する秘書官の定数はそれぞれ一人とする。
特別職の職員の給与に関する法律
第一条 この法律は、次に掲げる国家公務員(以下「特別職の職員」という。)の受ける給与及び公務又は通勤による災害補償について定めることを目的とする。
~省略~
四十四 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項第八号に掲げる秘書官 以下省略
国家公務員法
第二条 国家公務員の職は、これを一般職と特別職とに分つ。
② 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
③ 特別職は、次に掲げる職員の職とする。~省略~
八 内閣総理大臣秘書官及び国務大臣秘書官並びに特別職たる機関の長の秘書官のうち人事院規則で指定するもの
特別職の職員の給与に関する法律(再掲)
第七条の三 秘書官の地域手当、広域異動手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、期末手当、勤勉手当及び寒冷地手当の支給については、一般職の職員の例による。ただし、一般職給与法第十九条の四第五項(一般職給与法第十九条の七第四項において読み替えて準用する場合を含む。)において人事院規則で定めることとされている事項については、政令で定めるものとする。
一般職の職員の給与に関する法律
(期末手当)
第十九条の四 期末手当は、六月一日及び十二月一日(以下この条から第十九条の六までにおいてこれらの日を「基準日」という。)にそれぞれ在職する職員に対して、それぞれ基準日の属する月の人事院規則で定める日(次条及び第十九条の六第一項においてこれらの日を「支給日」という。)に支給する。これらの基準日前一箇月以内に退職し、又は死亡した職員(第二十三条第七項の規定の適用を受ける職員及び人事院規則で定める職員を除く。)についても、同様とする。
人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)
第二条 給与法第十九条の四第一項後段の規則で定める職員は、次に掲げる職員とし、これらの職員には、期末手当を支給しない。
一 その退職し、又は死亡した日において前条各号のいずれかに該当する職員であつた者
二 その退職の後基準日までの間において次に掲げる者(非常勤である者にあつては、法第六十条の二第二項に規定する定年前再任用短時間勤務職員(以下「定年前再任用短時間勤務職員」という。)、育児休業法第二十三条第二項に規定する任期付短時間勤務職員(以下「任期付短時間勤務職員」という。)その他人事院の定める者に限る。)となつた者
イ 給与法の適用を受ける職員
ロ 検察官
ハ 行政執行法人の職員のうち人事院の定める者
ニ 特別職に属する国家公務員(行政執行法人の役員を除く。第六条第一項第一号ニにおいて同じ。)
三 その退職に引き続き次に掲げる者(非常勤である者にあつては、定年前再任用短時間勤務職員、任期付短時間勤務職員その他人事院の定める者に限る。)となつた者
イ 行政執行法人の職員(前号ハに掲げる者を除く。)のうち人事院の定める者
ロ 独立行政法人等役員(国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第八条第一項に規定する独立行政法人等役員をいう。第六条第一項第二号ロにおいて同じ。)のうち人事院の定める者
ハ 公庫等職員(国家公務員退職手当法第七条の二第一項に規定する公庫等職員及び特別の法律の規定により同項に規定する公庫等職員とみなされる者をいう。第六条第一項第二号ハにおいて同じ。)のうち人事院の定める者
ニ 地方公務員(人事院の定める者に限る。
期末手当及び勤勉手当の支給について(昭和38年12月20日給実甲第220号)
(人事院事務総長発)最終改正:令和4年11月18日給実甲第1307号1 基準日に離職し、又は死亡した職員及び同日に新たに職員となった者は、給与法第19条の4第1項及び第19条の7第1項の「それぞれ在職する」職員に含まれる。
なお、国会議員の公設秘書に関する【国会議員の秘書の給与等に関する法律】は、立法府の側である一般の議員の秘書に関する法律であり、行政府の側(内閣)である総理大臣秘書官の場合とは異なります。
よって、本件には不適当ですが念のため当該法律の期末手当部分の規定を掲載します。
(期末手当)
第十四条 議員秘書で六月一日及び十二月一日(以下この条においてこれらの日を「基準日」という。)に在職する者は、期末手当を受ける。議員秘書でこれらの基準日前一月以内に退職し、又は死亡した者(当該これらの基準日においてこの項前段の規定の適用を受ける者及び第四項又は第十六条第一項の規定の適用を受ける者を除く。)についても、同様とする。
以上:ランキングバナークリック,はてなブックマーク,ブログ,note等でのご紹介をお願いします