虚偽の表記だよ
西村康稔・武田良太への「裏金・不記載」表記をするメディア
10月27日に投開票があった衆議院議員選挙に関して、メディア各社が開票速報番組において自民党の候補者にのみ「裏金」といったラベルを名前に貼っていた問題があります。他党の候補者で同様かそれ以上の行為があった者には、何らのマークもありませんでした。
これについては既にまとめておりNHKから国民を守る党の浜田聡議員が問題視していますが、本稿では特に西村康稔・武田良太の両氏に関しては【「不記載」ですらない】「誤記載」であるということを整理していきます。
西村康稔と武田良太のケースは「誤記載」報告書の項目の振分け問題
私が衆議院政倫審に出席し、今回の事案を説明した際に、立憲民主党を代表して質問された枝野幸男議員の発言です。「裏金」でも「不記載」でもありません。
— 西村やすとし NISHIMURA Yasutoshi (@nishy03) 2024年10月22日
「…計上しているので、確かに裏金にはなっていない。西村さんの分については、裏金にはなっていない。…その分が誤記載になってるわけです。」 https://t.co/0ek8jEdidk pic.twitter.com/Q8Lgmj33xA
西村康稔氏のケースは「誤記載」と言うべきものであり、その事は立憲民主党の枝野幸男議員も3月の衆議院政治倫理審査会で言及していました。
2024年3月1日 (金) 衆議院政治倫理審査会 の1h04m30s過ぎ
※議事録は10月30日時点で無し
「誤記載」の意味は、政治資金収支報告書上で、どういう収入であったかの振り分け方が誤っていたと指摘されたということです。
具体的に言うと、政治資金パーティー収入のノルマ超過分の還付金(これ自体は適法)は、当初は西村氏の収入として計上していたが、清和会からの寄付として計上すべきであった、ということです。
金額としては全て間違いなく報告書に記載されていたわけで、「不記載」ではないし、ましてや「裏金」などという嫌疑が生じる余地は一切無かったわけです。
こうした記載の仕方は西村氏の他、武田良太議員(当時:衆院選で福岡11区で立候補も落選)が行っており、その旨については2月29日の政倫審で説明されてました。このことも枝野議員が指摘しています。
それでも、西村氏や武田氏は派閥の幹部だったため、他の議員の不記載に関する道義的責任も一定程度あるし、本人もそういう認識でした。
しかし、派閥における立場から来る責任というのは、自民党という党内での関係です。候補者個人として扱われる有権者に対する選挙の関係において、「ウラ金💰」「裏金」マークを付けられるというのは、余りに実態からかけ離れたレッテル貼りであり、虚偽と言っていいでしょう。
政治資金規正法・政治資金収支報告書の趣旨と「虚偽記載」という表現
西村氏・武田氏も、派閥からの資金の移動が生じており、実態と乖離した会計処理をしていた、という点では日常用語としての「虚偽記載」という表現は妥当し得るかもしれません。
しかし、政治資金規正法上で刑罰の対象となるところの「虚偽の記載」とは異なるし、混同を避ける必要はあると言えます。*1
刑罰対象とならなかったのは、「同じ一つの行為によって自分が売り上げ、自己の懐に入る収入」という意味ではノルマ超過分の還付金として扱っても、自分の収入そのものとして扱っても、本質は同じだ、収益が発生した原因行為は同じであるという事が影響しているように思われます。
(※ただし、例えば事業所得を雑所得とするといった単なる項目上の振り分け問題とも異なる。)
ところが、政治資金規正法・政治資金収支報告書の趣旨として収支の流れを透明化する、特に入金の出所を明らかにするというものがあるので、実際には派閥からの資金の移動があったものを自己のみで完結した収入として記載することは、違法ではないとしても不適切な記載方法と言わざるを得ないもので、上述の性質論と併せて政治活動の自由とのバランスから不処罰*2となったに過ぎないと言えます。
他の議員に関しては、素直に派閥からの寄付金として処理すれば全く問題ないのに敢えて「不記載」にしていたのは、実際の金額を誤魔化した裏金作りに利用しているのでは?という疑念が浮かぶのは仕方のない事です。
ただ、それは嫌疑としての正当性であり、現実に確定した事実・法的評価ではありません。令和6年10月末の検察が捜査をした上で衆院選に立候補した者については不起訴の終局処分をしている段階で、「裏金」とレッテル貼りをするのは「無罪推定原則」の観点からも間違っているでしょう。
ましてや、中立公正が求められている報道機関の放送において、他党の候補者には同様の行為があってもラベルを付けずに自民党議員のみラベルを付けているのは、それ自体が別個の問題でしょう。対象候補者の行為の悪質性は、当該報道の正当化理由にはなりません。
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