何でも「性差別」という事にしないと気が済まないらしい。
- 社民党大椿ゆうこ「天声人語でこの国の性差別構造が阪神・淡路大震災時女性死者が1000人多かった背景」
- 夫に先立たれた一人暮らし老齢女性が多く犠牲になったと書いている朝日新聞天声人語
- 1月17日の朝日新聞天声人語から女性死亡者数が多かったことについて「性差別」と読解することは不可能
- 震災時には体力の無い女性や高齢者が建物倒壊からの耐性が無かったという要因が強い
社民党大椿ゆうこ「天声人語でこの国の性差別構造が阪神・淡路大震災時女性死者が1000人多かった背景」
今日の #朝日新聞 #天声人語 が胸に迫る。阪神・淡路大震災の時、男性よりも女性の死者が約1000人多かった。この国の性差別構造が、その死をもたらした背景にあることに触れられている。ぜひ、読んで。
— 🌺大椿ゆうこ/茨木から府議会に挑戦🌺 (@ohtsubakiyuko) 2023年1月17日
社民党の大椿ゆうこ氏が「天声人語でこの国の性差別構造により阪神・淡路大震災時に女性死者が約1000人多かった」という趣旨のツイート。
当然、炎上しています。
エセフェミニズムをキメるとこうも認知が歪むのか。
いや、わかっていて読者を誤導しようとしているのか。
あれですか?当時の総理は「社会党」の村山富市氏で、自衛隊の自主派遣をせずに兵庫県知事の派遣要請を待ったために自衛隊派遣が遅れた(「道路状況が悪いから到着が遅れた」というのはその後の要素に過ぎない)ことがあるから、その後継団体である社民党の大椿氏は、それを覆い隠したいからこんな歪曲をしているのでしょうか?
夫に先立たれた一人暮らし老齢女性が多く犠牲になったと書いている朝日新聞天声人語
1月17日の朝日新聞の天声人語ではこう書かれています。
阪神・淡路大震災から、きょうで28年となる。亡くなった6434人で、女性が男性より約千人多かったことをご存じだろうか。子育てを終え、親の介護や看取りをし、夫に先立たれた高齢女性が多く犠牲になった▼理由の一つは、少ない年金で暮らす彼女たちが都市部の「古い住宅に身を寄せ合うようにして住んでいた」(『災害助成額をつくる』からだ)。木造の文化住宅など、高度成長期に建てられた耐震性の低い住居だ。大都市直下型地震で、死因の約8割は建物の崩壊などによる「圧死」だった
夫に先立たれた高齢女性が少ない年金で暮らすために木造の古い住宅など耐震性の低い住居に住んでおり、そのため建物の崩壊などによる犠牲者が多かった、というのが女性死者が多かった理由の一つである、と書かれています。
これ以降は震災を生き延びた者についての話であり、本稿ではその事実関係の正否や主張の当否は扱わないが、一応は紹介しておきます。
▼社会のひずみは生き延びた者にも犠牲を強いたそして、災害時に助成の視点が必要だという教訓を残した。いまでは世界の常識となりつつある「被災地のジェンダー視点」だが、日本でそれが提起された帆単は、この震災である▼避難所ではトイレが男女共有で行きづらく、夜は暗くて怖い。間仕切りがなく、着替えや授乳の場所がない。離乳食や生理用品が支援物資にない。当事者ならわかって当然だから、災害分野の主体には女性が必要なのだ▼女性支援団体には性暴力の被害が報告された。震災を機に解雇された約10万人の多くは、パートやアルバイトの女性だったとされる。夫の親類を自宅に受け入れたら火事で「嫁」の役割を強いられた、いらだつ夫や恋人に暴力を振るわれた、などの相談も▼弱者へのしわ寄せは非常時に増す。だからこそ平時から平等、多様な社会でありたい。私たちは、どれだけ進歩しただろう。
1月17日の朝日新聞天声人語から女性死亡者数が多かったことについて「性差別」と読解することは不可能
朝日新聞の記事には、地震による女性死亡者数が多かったことについて「性差別が背景」とは一言も書いていません。
が、大椿氏は言外にそう匂わせるかのような記述がある、と考えているのでしょう。
確かに、「少ない年金で暮らす」という部分はあります。
しかし、ここには「妻の方が夫よりも年金額が低い」という事情、「妻の方が専業主婦としてずっと夫の扶養に入り、だから妻の分としては厚生年金分を貰えていない」などという事情は書いていません。
書いていない以上、どういう年金の配分構成だったのかは不明で、女性は男性よりも年金が少ない(国民年金のみの額しかもらえない)から木造の古い=耐震性の低い住宅に住むしかなかったのだ、それは性差別構造だ、という話をするのは、単なる想像でしかなく、「天声人語に書いてあった」などとは言えない。
もっとも、社会的な知識を前提とすると、一般的に女性は夫の扶養に入っていた期間が長く、年間の年金受領額も低いは言えます(女性の方が長生きしていて生涯貰える額としては多少のバランシングが為されるとしても)
しかし、仮にそういう実態があったとしても、夫が死亡するまでは、夫と妻の共同生活を営んでいたわけであり、夫の年金受領額による恩恵を妻も受けていたわけです。財産を完全に分離して管理していた、という特殊な家庭でなければ。日本の場合、家計を握るのは妻の方が多い。
したがって、「夫よりも妻の方が年間の年金受領額が少ない」というところから、高齢女性について一般的に「耐震性の低い木造住宅に暮らさざるを得ない」と導くことはできません。そうなる原因は「社会のせい」ではなく、その家庭における家計の問題です。
さらに言えば、それが直ちに「性差別構造」である、などとは言えないということは論を待たないわけです。
そのように言うためには相当の論証が必要であり、天声人語に書かれた文章からそれを読み取ることは不可能です。
また、実態としてもそのような分析が正当であるという評価は存在していません。
震災時には体力の無い女性や高齢者が建物倒壊からの耐性が無かったという要因が強い
総合都市研究 第61号 1996 阪神・淡路大震災:神戸市における死亡者発生要因分析
ここで「性別でみると、女性が男性に比較して2-3割程度死亡者率が高」とあります。
要するに、高齢者だとか木造住宅だからだとかいう要因抜きにして、女性の方が死亡者率がベーシックに高かったということです。
これは阪神淡路大震災の被害実態として建物の倒壊による下敷きが多かったことが影響していると考えられています。
また、この研究では以下の指摘もあります。
宅地崩壊があった町通では、 65才以上人口比率が高いほど死亡者発生率が低下するという結果であり、仮説とは相反する結果となっている
さらに言えば、耐震性の低い木造の文化住宅に男性はどれくらい住んでおり、どれくらい犠牲になったのか、女性との比較はどうだったのか、という点も、朝日の天声人語からは不明です。
そして、地震による死者の特性として女性比率と高齢者比率が高いのは地震被害については一般的な特性であるといわれており、全体の死者数に女性が多いことについては、阪神淡路大震災に限った特有の現象であるとは捉えられていません。
そもそもの朝日新聞の天声人語についても、理解の仕方に注意が必要だという事です。
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