堂々と行われるフェイクの伝言ゲーム
- 「カタールワールドカップのスタジアム建設で6500人死亡」はデマ
- 政府統計への疑問と死因と関連業務の因果関係は不明だが
- SNSや他メディア・サッカーメディアなどで「6500人が建設現場で死亡」が拡散される
「カタールワールドカップのスタジアム建設で6500人死亡」はデマ
Deutsche Welle (DW)というドイツの国際放送局がファクトチェックをしています。
Fact check: How many people died for the Qatar World Cup? – DW – 11/16/2022
- 「カタールワールドカップ決定以来、移民労働者6500人死亡」の出所は2021年2月の英ガーディアン紙の記事⇒魚拓(表では南アジアの各国:バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタン、スリランカの6750人と記載)
- ガーディアンは 、6500人すべてがスタジアムの建設によって死亡したとは一言も書いていない
- ガーディアンの当該記事の見出しが「ワールドカップの準備のために」から「ワールドカップ開催決定から」に変更され、リード文も「2022年大会に向けた準備が進む中」から「過去10年間で」にサイレント修正されていた。
- 「6500人」という数字は否定されていないが、この中には出稼ぎの移民労働者に限らず、ワールドカップ関連のプロジェクトに雇用されているかどうかという限定も無い
- スタジアム建設に関連して死亡したとする公式統計は40人(現場は3人)
ガーディアン紙の人数のデータは各国大使館が元とありますが、スタジアム建設現場だとかワールドカップ関連の仕事で、などという限定はありません。単に「カタールがワールドカップ開催権を取得した2010年以来」としか書かれていません。
よって、「カタールワールドカップのスタジアム建設で6500人死亡」はデマですし、それを「英ガーディアン紙が報じている」もデマです。
なお、カタール政府広報のガーディアン紙に対する応答⇒https://www.gco.gov.qa/en/2021/02/gco-statement-guardian-article/
政府統計への疑問と死因と関連業務の因果関係は不明だが
もっとも、ガーディアンの記事とドイツ放送局のファクトチェックでは、カタール政府の統計に対する疑問も呈されています。
ガーディアンは、「インド、ネパール、バングラデシュの労働者の死亡の 69% は自然死に分類される」「死因の中で最も一般的なのは、いわゆる「自然死」であり、多くの場合、急性心不全または呼吸不全が原因」とあります。
が、記事全体の書きぶりから感じ取られるニュアンスは、「自然死に分類されたものは検視解剖されず、それに至った根本的な原因が明らかにされていないから、ワールドカップ関連の事業の労働に従事していた者が、その労働環境の過酷さによって陥った結果ではないか」というものや、加えて、「ワールドカップのために大規模な予算が組まれ広大な開発が行われていることから多くの事業がワールドカップに関連していると予想され、さらにカタールの猛暑の存在から、自然死とされた労働者の現場外での死亡も、「ワールドカップ関連死」に含めるべきでは?」という仄めかしをしています。
このあたりの因果関係は不明としか言えません。
ファクトチェックをしたドイツ放送局も真偽不明の状態だという扱いです。
SNSや他メディア・サッカーメディアなどで「6500人が建設現場で死亡」が拡散される
1/ One of the most pervasive and re-occurring pieces of #disinformation about the Qatar has been the figure that 6500 migrant works have died in connection with the World Cup. I wanted to do a thread on how this piece of news has been transmitted on Twitter over the past year pic.twitter.com/1xLfrEzu7F
— Marc Owen Jones (@marcowenjones) 2022年10月15日
しかし、タイトル変更前のガーディアン紙すら言及していない「出稼ぎ・移民労働者6500人が建設現場で死亡」論がSNSで拡散されていきます。
それについて検証したのがハマド・ビン・カリファ大学(Hamad Bin Khalifa University)准教授であるマーク・オーウェン・ジョーンズ氏。
仄めかしの表現で書かれた記事を曲解した認識が何度も拡散された結果、他のメディア・サッカーメディアなどでも「出稼ぎ・移民労働者6500人が建設現場で死亡」が確定事実として記述・拡散されて言っています。
2022年11月23日現在の日本でも、以下の例が見つかります。
カタールW杯のスタジアム建設に携わったことで命を落とした6500人超(英紙『ザ・ガーディアン』調べ)の外国人労働者の気持ち ~以下略~
これは明確にフェイクです。
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