TBSによる思想強制。
- TBS「選択的夫婦別姓“反対文書”に丸川大臣、男女平等は?」
- 選択的夫婦別姓に反対しても男女平等には反しない
- 選択的夫婦別姓制度は憲法24条の問題
- 「両性の本質的平等」の要請?
- 思想信条の自由を:思想強制を求める男女平等論者という矛盾
TBS「選択的夫婦別姓“反対文書”に丸川大臣、男女平等は?」
【選択的夫婦別姓“反対文書”に丸川大臣の名前】#男女共同参画 担当大臣に就任したばかりの #丸川珠代 議員。ところが #埼玉県議会 の議員宛てに「 #選択的夫婦別姓 に賛成する意見書」を採択しないよう求める文書に名前が。大臣として #男女平等 の実現をどう進めていくのでしょうか?#news23 pic.twitter.com/mLthxnYBrB
— TBS NEWS (@tbs_news) 2021年2月25日
TBSが「選択的夫婦別姓“反対文書”に男女共同参画担当大臣の丸川珠代の名前が。男女平等をどう進めるの?」と記述。また、動画では丸川大臣の発言を男女平等の観点から非難する構成になっています。
TBSは明言していないものの、これは明らかに【選択的夫婦別姓に反対すると男女平等に反する】という前提で記述しているのが分かります。
選択的夫婦別姓に反対しても男女平等には反しない
選択的夫婦別姓に反対しても必ずしも男女平等には反しません。
戸籍法改正で旧姓続用を認めるという方法もありますし、むしろ海外では選択的夫婦別姓を導入していても「女性には夫の氏の使用を認めない」という規定がある国も存在しますからね。
なお、私は、ここで問題になっているのは「夫婦平等」の話であり、裸の「男女平等」ではないと考えています。婚姻に関する諸制度によって定義づけられた「夫婦」関係に際する平等の話であると。これは、憲法14条の「平等」と24条の「両性の本質的平等」が完全に同一のものと見られてはいないことからも肯定できるはずです。
選択的夫婦別姓制度は憲法24条の問題
日本国憲法
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
選択的夫婦別姓制度は憲法14条の平等ではなく、憲法24条の問題です。
最高裁大法廷判決平成27年12月16日 平成26年(オ)第1023号 損害賠償請求事件
直近の夫婦別姓訴訟の最高裁判決は以下判示しています(現在も最高裁に係属している訴訟がある)。
- 「本件で問題となっているのは、…自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるというものではない」。氏に「社会の構成要素である家族の呼称としての意義があることからすれば、氏が…婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは、その性質上予定されているといえる」。「現行の法制度における氏の性質等に鑑みると、婚姻の際に『氏の変更を強制されない自由』が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえ」ず、「本件規定は、憲法 13 条に違反するものではない。」
- 「本件規定は、…夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって、その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく」、「本件規定は、憲法 14 条 1 項に違反するものではない」。
- 「婚姻及び家族に関する法制度を定めた法律の規定が憲法 13 条、14 条 1 項に違反しない場合に、更に憲法 24 条にも適合するものとして是認されるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべきものとするのが相当である」。
- 「現行の民法の下においても、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる」。「近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ」、夫婦同氏制に伴う「不利益は、このような通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである」点などを総合的に考慮すると、夫婦同氏制が「直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはでき」ず、「本件規定は、憲法 24 条に違反するものではない」。
「本件規定」とは、民法750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」のことです。
なお、最高裁は、選択的夫婦別姓制度にすることがダメとは言っていません。
「両性の本質的平等」の要請?
夫婦別姓を認めない現行民法750条は憲法24条違反とする裁判官の意見を見ると、「両性の本質的平等」に反している理由として以下の指摘があります。
岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官,鬼丸かおる裁判官も同調)
夫の氏を称することは夫婦となろうとする者双方の協議によるものであるが,96%もの多数が夫の氏を称することは,女性の社会的経済的な立場の弱さ,家庭生活における立場の弱さ,種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって,夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても,その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである。そうすると,その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは,多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ,また,自己喪失感といった負担を負うこととなり,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない。
なお、各裁判官の「意見」「反対意見」は、「通称」に関する現行制度を考慮してもなお憲法24条には反するという主張です。
私はこの理論に与しません。
「意見」では暗黙の「圧力」が婚姻に際しての氏の選択時に共通して存在している前提だが、「社会進出」している女性ならともかく、そうではない女性においてそのような実態があるのかは疑わしいし、「社会的経済的な立場の弱さ」を女性の側が積極的に選択している疑いがある。(それが悪いと言っているのではないし、これを「弱さ」と表現するか否かはまた別の問題としてあるだろう。)
データを新しいものに変更しました。
— すもも (@sumomodane) 2021年1月17日
この記事は日本の女性がいかに男性に対して社会的地位(学歴、収入)を求めているのかをデータで明らかにした記事です。
日本女性の上昇婚・上昇婚志向|すもも @sumomodane #note https://t.co/vNUxfzwetc
また、仮に上述のような「圧力等」があるために本質的平等に反するとすると、意思決定に「圧力等」が作用している場合というのは男性も含めて膨大な場面に及ぶ。そのような認定は法的不安定性を意図的に作出するものだろう(選択的夫婦別姓制度が成立しても、子の姓選択は夫婦の協議によるとする改正案がある。)
最高裁の寺田逸郎裁判官の補足意見を読むと、民事上の法律制度として当事者の合意を契機とすることにより制度を複雑にすることについて抑制的な力学が働いていることや、本件について司法府による違憲判断を出すことに対する慎重な姿勢がありますが、後者は民主主義の根幹に触れた主張でもあり、深みを感じます。
思想信条の自由を:思想強制を求める男女平等論者という矛盾
私個人としては、選択的夫婦別姓制度にしても別に良いとは思っていますが、それが「憲法上必然的な要請である」とする主張には与しないということです(積極賛成ではないが、反対もしない。ただし、決定権が自分にあるなら反対派に回るだろう)。
丸川珠代議員に選択的夫婦別姓への賛成を強要し、思想強制をする者は、彼女の思想信条の自由(憲法19条)を何だと思っているのだろうか。
以上