事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

TBS報道特集の「甲状腺がん特集」が酷すぎる:金平茂紀と津田敏秀の主張の誤りについて

TBS金平、福島原発放射線によるがん

これが風評加害

TBS報道特集「甲状腺がん特集」が酷すぎる

TBS報道特集甲状腺がん特集

令和4年5月21日のTBS報道特集「甲状腺がん特集」にて福島に対する風評加害がありました。TVerのアーカイブは29日まで視聴可能⇒https://tver.jp/episodes/epjq0b7cmo

番組の構成は、福島第一原発の事故で放出された放射線が原因で甲状腺がんになったとして東京電力を訴えた裁判の原告団側の主張のみを一方的に報じるものです。

その中で一人の女性に焦点を当て、甲状腺がんの手術を受けたがその影響からか体調不良が続いているということを強調。医師から原発事故とがんの因果関係は無いと言われたが信じられない様子。

この方の主観は仕方がない。問題なのはTBSがUNSCEARという第三者による客観的な報告書が出ているのにそれについて一切触れていないことです。

また、「専門家」として岡山大学環境生命学科の津田敏秀教授のみが出演しているが、そもそも彼の論文は「科学的根拠が無い」と指摘されている

その上、番組中の発言にも非科学的な内容がある。

金平茂紀「放射線による健康被害は誤った情報って、なぜ断定できる?」

TVerにはVTRのみがUPされていますが、VTRの後にはスタジオで金平茂紀氏がこのような発言をしていました。

「自分が差別されるのではないかとおびえさせてしまっているのは、私たちの社会の側の責任」

「岸田総理が『福島県に住む子供たちが放射線による健康被害が生じているという誤った情報が伝わっている』みたいなことを言っていたでしょう。誤ったって、どうして断定できるんですかね。」

福島県民や福島第一原発事故による放射性物質の影響を受けた者が差別されるのは、メディアの責任が大きいでしょう。「日本社会」などという主語を大きくし、さらには責任転嫁をしているのはただの開き直りです。

このように『福島県に住む子供たちが放射線による健康被害が生じているという誤った情報』は、幾度となく、マスコミが垂れ流していました。

このことは「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か [ 林智裕 ]にて様々な角度から指摘されています。放医研のニュースについても林氏が独自に取材し、私と同様の認識に至っています。

UNSCEAR2016白書で否定された津田敏秀の論文

UNSCEAR2016白書

津田敏秀教授の論文は、UNSCEARによって否定的評価を受けています。

UNSCEARの報告はなぜ世界に信頼されるのか――福島第一原発事故に関する報告書をめぐって/明石真言氏インタビュー / 服部美咲 - SYNODOS

明石 科学的なクオリティが十分ではないとしても、「社会的に影響が大きい」と判断された場合には、あえてとりあげた上で「研究の手法として科学的に十分ではない」と報告することがあります。

たとえば、岡山大学の津田(津田敏秀・岡山大学教授)さんという人が「福島第一原発事故による放射線の影響で福島の子どもに甲状腺がんが増えている」という趣旨の論文を出しました。これは科学的に不足がある研究にもとづいて書かれた論文なので、科学的なクオリティとしては採用に値しません。

ただ、この論文は「社会的に影響が大きい論文である」と判断されたため、あえて採用されました。その上で、研究手法が「あまりにも偏りが生じやすいもの」(注3)であり、「このような弱点と不一致があるため、本委員会はTsuda et al. による調査が2013報告書の知見に対する重大な異議であるとはみなしていない」(注4)と「UNSCEAR2016白書」は評価しています。

UNSCEAR2016白書とは以下のものです。「報告書」とは別物なので注意。⇒https://www.unscear.org/docs/publications/2016/UNSCEAR_WP_2016.pdf

概要について記述されたページ⇒https://www.unscear.org/unscear/en/publications/Fukushima_WP2016.html魚拓

環境省_UNSCEAR2016 年白書(1/5)経緯と概要

Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan 2011 to 2014 Tsuda, Toshihide; Tokinobu, Akiko; Yamamoto, Eiji; Suzuki, Etsuji

なお、この津田の論文、なぜか彼の研究室のHPにある業績欄には存在していません

岡山大学大学院環境生命科学研究科 人間生態学講座 津田・�ョ藤 研究室 | 最近の業績

津田敏秀「5ミリシーベルトでもがんの増加」???

津田敏秀

さらに、報道特集のVTR中、津田敏秀教授は「5ミリシーベルトでもがんの増加」などと言っていましたが、この根拠はいったい何なんでしょうか?

彼の論文中には見ることはできません。

私に思い当たるものがあったのですが、それは放射線被ばくと白血病の労災認定の際に用いられている判断手法として「5mSvの追加被曝があったら医学検討会の協議を経たうえで、業務以外の要因が明らかでない限り、労災として認定する」というものです。

これは年間5mSv 以上の放射線被ばくをすれば発症するという境界を表すものではなく、労災認定されたことをもって科学的に被ばくと健康影響の因果関係が証明されたものではありません。

まさか、津田氏はこの事を念頭に置いていたのでしょうか?

だとすれば、明らかに科学的な話から乖離した主張です。

渡辺議員「福島県は過剰診断と主張していない、嘘がある」

TBS報道特集「甲状腺がん特集」があまりに酷い件 – 渡辺康平公式ウェブサイト

また、明確な誤報としては、番組は「福島県が過剰診断と主張」と報じていますが、明確に間違いです。
福島県は過剰診断を認めてません。だから、私は県議会で知事に過剰診断問題を質問しました。

福島県議会議員の渡辺康平議員は、「過剰診断」に関する福島県の立場に関して「明確な誤報」と指摘しています。

TBS放送基準、BPOの放送倫理違反、放送法違反では?

報道特集の放送は、TBS放送基準、BPOの放送倫理違反、放送法など、各種ルールに違反しているのではないでしょうか?

TBS放送基準|番組向上への取り組み|TBSテレビ

6 政治、経済、その他社会上の諸問題に対しては、公正な立場を守り、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする
7 社会の良識や良俗に反する放送は行わない。
8 報道番組は、すべての干渉を排し、事実を客観的かつ正確、公平に取り扱うとともに、電波の特性を生かして機動性と速報性の発揮に努める。ニュ-スと意見は、区別して取り扱う。

よりよい放送のために | 一般社団法人 日本民間放送連盟

6章 報道の責任
(32) ニュースは市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づいて報道し、公正でなければならない。

ー省略ー

(34) 取材・編集にあたっては、一方に偏るなど、視聴者に誤解を与えないように注意する。

報道特集の甲状腺がん特集は、「公正」さに欠けているのではないでしょうか?

「報道は…国民の「知る権利」に奉仕するもの」という最高裁判例を踏まえたルールがあるにもかかわらず、一部の人間の主張のみを取り上げているでしょう。
最高裁判所大法廷 昭和44年11月26日判決 昭和44(し)68(博多駅テレビフィルム提出命令事件)

また、参考資料 | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |において、各放送局が遵守すべき外部ルールが掲載されています。

放送倫理基本綱領 | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |

放送は、その活動を通じて、福祉の増進、文化の向上、教育・教養の進展、産業・経済の繁栄に役立ち、平和な社会の実現に寄与することを使命とする。 放送は、民主主義の精神にのっとり、放送の公共性を重んじ、法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応えて、言論・表現の自由を守る

放送は、意見の分かれている問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持し なければならない。 放送は、適正な言葉と映像を用いると同時に、品位ある表現を心掛けるようつとめる。また、万一、誤った表現があった場合、過ちをあらためることを恐れてはならない。

報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない。放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる。

放送法

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

福島原発による放射性物質の拡散と大規模検査による甲状腺がんの発見との因果関係については、もはや「意見の分かれている」問題ではありません。それらは科学的には否定されている内容です。むしろ、過剰診断による害が指摘されているのが現実です。

「訴訟になっているから意見が分かれている」などと言おうものなら、無理筋でも訴訟を起こせばよいという事に。

今回の訴訟を取り上げるなら、公平性を保つために科学的知見を有する第三者機関はどう見ているのか、反対当事者はどう主張しているのか、専門家で反対意見があると予想されるならその者はどう主張しているのか、という点を盛り込まなければいけないでしょう。

2014年のインタビュー映像を引っ張ってきておいて、TBSという資本が充実しているはずのメディアが、「それは過剰な負担だ」などと言える義理など無い。

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