国民民主党玉木代表による議論
- 国民民主党玉木代表「国葬に法的根拠はある、手続の整備が必要」
- 閣議決定で行うという共通認識だった:国会の不作為も相まって国葬の際の手続が不明確に
- 内閣府設置法制定時の逐条解説が1999年当時に存在?「国の儀式」に位置付ける民主的手続に瑕疵無しか
国民民主党玉木代表「国葬に法的根拠はある、手続の整備が必要」
「国葬儀」の法的根拠とされる内閣府設置法について、1999年の制定時の逐条解説を内閣府から入手。これを見ると、内閣府の所掌事務として
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
①国の儀式
②内閣の行う儀式
があり、さらに①は
a.憲法7条10号(天皇の国事行為)の儀式
b.閣議決定で「国の儀式」と位置付けられた儀式
に分けられている。
aの例として「即位の礼」、bの例として「故吉田茂元総理の国葬儀」が具体的に書かれている。⁰「国葬儀」「国民葬」「合同葬」の別を認識しつつ、いずれも内閣府の所掌事務として、省庁再編前の総理府設置法にない条文を新たに法定していることから、「国葬儀」の法的根拠がないとの主張は無理がある。
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
国民民主党の玉木雄一郎代表から国葬について今後の国会で議論を深めていくべきという提言がなされたことが報道されましたが、TwitterやYouTubeのチャンネルでも玉木氏による問題意識と整理が行われました。
まずは「国葬(国葬儀)には法的根拠はある」とする立場を明示しつつ、「手続の整備が必要」という見解を示しています。
しかし、問題は①bの閣議決定によって「国の儀式」と位置付ける際の「基準」と「手続き」の定めがないことだ。ただ、仮に「基準」を定めたとしても叙勲のように「国家に功労ある者」といった定性的なものにならざるを得ず、時の内閣の政治判断が入ることは避けられない。
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
「国葬とする際の基準を設けるべき」という声もありましたが、叙勲の制度を例に挙げながら、「どうしても抽象的・定性的評価にならざるを得ないため時の内閣の政治判断が入ることは避けられない」という見解を示しています。
令和4年春の叙勲等 : 日本の勲章・褒章 : 日本の勲章・褒章 - 内閣府
そこで、考えられる解決策としては
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
・国会の関与などの「手続き」を定める または
・国葬の対象を天皇陛下、上皇陛下の大喪の礼に限定する
ことなどが考えられる。
今回のような混乱を避けるため、こうした議論を冷静に行っていきたい。
この国会の「関与」については様々な含みがあり得るものになっていると言えます。
衆院法制局の橘長官が「国会の関与が必要」と言ったことが一部で報道されましたが、その意味は「国民代表たる国会議員の党派間の合意調達の努力こそが肝要」であり、「閣議決定後の閉会中審査」がその一つではないか、というものでした。
たまきチャンネルで解説しましたが、昭和52年の国会で政府は「法律というよりも閣議の決定によって国葬は今後行われてしかるべきもの」と答弁しています。こうした整理も踏まえ1999年の内閣府設置法が制定されたと考えます。ただ、閣議決定を行う際の基準と手続きがないので、整備が必要だと考えます。 pic.twitter.com/qExKxZ4hg1
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
そして、玉木氏は「閣議決定で国葬をするか否かを決める」ことが妥当であり、さらには昭和52年時に国葬は閣議決定で行うのが適切と考えていると政府答弁がなされていたことを指摘。これに対して特段の反対も無く、現在まで続いていたということです。
第80回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 昭和52年4月7日
藤田正明 総理府総務長官
それから国葬のことでございますけれども、これも旧国葬令は私たちは失効したものだ、かように考えておりまして、国葬に関しましては、吉田総理が亡くなりました四十二年のことでございますが、このときには内閣の決定で行っております。ですから、法律というよりも閣議の決定によって国葬は今後行われてしかるべきものだというふうな考え方を持っております。
これらは以下のチャンネルでも解説されています。
閣議決定で行うという共通認識だった:国会の不作為も相まって国葬の際の手続が不明確に
要するに今般の安倍元総理国葬儀に関しては
- 国葬の決定は閣議決定で行われるということは昭和52年以来、国会議員の間で共通認識だった(現在の議員個々の認識は無視して考えるべき話)
- それが突然、「法的根拠が不明確」「閣議決定で決めるとは民主主義ではない」などの非難が巻き起こった
こういうことです。
ただ、やはり手続が不明確であったという点で混乱が生じた面はあるため、玉木氏としては、国会の「関与」について、後の国会で何かしらの共通理解を作ろう、ということを提案しているということです。
内閣府設置法制定時の逐条解説が1999年当時に存在?「国の儀式」に位置付ける民主的手続に瑕疵無しか
1999年の内閣府設置法制定時の逐条解説(コンメンタール)の一部↓ pic.twitter.com/1ovgFZrqOC
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) 2022年9月28日
1999年の内閣府設置法制定時の逐条解説、と説明がありますが、読売と産経の報道では内閣府設置法成立後の2000年4月のものとなっていましたから、もしこの説明が本当であれば、法律案の審議の時期にこの逐条解説が存在していたことになります。
仮に議員がアクセスできるものであれば、国葬を内閣府設置法4条3項33号の「国の儀式」に位置付ける際の民主的手続(閣議決定ではなく、国葬という制度そのものの事前の位置づけの話)として国会による審議を経た、ということにまったく瑕疵が無いと言えるでしょう。
そうでなくとも、国葬令の時代も、国葬令以前も内閣が決定していたもの(形式としては「特旨」=天皇の思し召しによるものとされていたが輔弼されていた)であり、且つ、行政府が国葬を実施することに法的根拠はあるのだから、内閣府設置法上の文言への振り分けの手続を殊更に厳格に捉える必要はないでしょう。
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