事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

米国大統領選でのデマ拡散アカウントはロシアのウクライナ侵略をどう発信しているのか:コーネル大学の分析を基に

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壮大な答え合わせ

鳥海教授『「ウクライナ政府はネオナチ」を拡散したのは反ワクチンアカウントが多い』

 

  • 「ウクライナ政府はネオナチ」という情報を拡散したアカウントの87.8%が反ワクチン関連ツイートを拡散※反ワクチン=クラスタDという訳ではない

東京大学大学院工学系研究科の鳥海教授不二夫教授がこうした結論を出しています。

つまり、ロシア側のナラティブを拡散しているのは普段から反ワクチンを叫んでいるアカウントに多いという事が明らかになったわけです。

「反ワクチン」の情報を拡散している者の中にはロシアメディアがあるということは従前からその傾向を把握していたので2021年1月に以下でも書いています。

反ワクチンとロシア側のナラティブ拡散アカウントの傾向

これに加えて【新型コロナに関する誤情報や反ワクチン論はアメリカ大統領選でトランプ支持(を装った)の者でデマ拡散をしている者が多い】ということは大勢のツイッタラーは気づいていました。

トランプアイコンやハンドルネーム部分に「🗣」が付いてるアカウントが多いので。

そして、【そのようなアカウントはロシア側のナラティブを拡散している】ということも従前から言われていたところ、ここに来て【答え合わせ】が出来ています。

つまり、①アメリカ大統領選⇒②反ワクチン⇒③ロシア侵略という大きな枠組みで捉えた場合、相当数が同じアカウントによって誤情報が拡散されているということが伺えるということです。

そこで、2020年のアメリカ大統領選挙において「不正選挙であるという言説を拡散した者」とコーネル大学の研究者を中心とした研究上で定義されたアカウントの発信を調べてみました。

※すべてが「デマ拡散アカウント」というわけではない

※なお、この研究では当然ながら「意図の有無」については調べていないため、以下の項でも各アカウントの「意図」については触れない。結果としての言説の流布について述べる。

藤原直哉:タス通信などロシア側の情報を積極拡散

藤原氏は普段から報道内容をシェアするスタイルであり、自身の意見を付け加えることは稀ですが、ロシアによるウクライナ侵略に関しても同様でした。

が、彼自身の見解を付加するツイートも若干ですがみられます。

一連のツイートを見ると気づきますが、ウクライナ当局側が発信している情報はほとんどシェアしておらず、ロシア国営のタス通信の情報を積極的にシェアしているのが分かります。

私はコーネル大学の分析の時点では、彼については判断を留保していたんですがね。

なお、藤原氏は新型コロナワクチンに関しては一貫して反対の立場で、ワクチン接種に反対する医師や米国の従業員に関する報道を逐一シェアしています。

こたママ:ロシアを非難しつつロシアのナラティブを拡散「フェイクは一方のみであると感じている」

「こたママ」アカウントは、ロシアを非難するという基本的スタンスは維持している体裁です。

ただ、要所要所で疑問符が付く発言が多い。

「かつての日本は今のロシア、邪悪な侵略者と認定されています」という認識が漏れ出ている。

「周りからそうみられている」という意味だとするなら、時代背景が異なる(当時、戦争自体は国際法上、違法であるという認識が「完成」はしていなかった。そのようにする議論と萌芽はあったが。)。日本の戦争が許されない侵略戦争だったという意味なら通るが、そうではないのだ、という立場なら、ロシア側への免責的発言となる。

「事実そうだ」という意味なら日本をdisっていることになり、この場合、大日本帝国は侵略はしたが「邪悪」とはなんだろうか。

魚拓

「プロパガンダ」は宣伝という意味で、内容の真否についての価値判断を含まない用語として用いていながら、「フェイクは一方のみであると感じているという発信が。

これは「フェイクは双方で有るのを理解しないと。」という指摘をするツイートへの返信ですから、相当その信念は強固のようです。

そして、「ウクライナ側」に関する情報についてはほとんど触れてません。

特に【ゼレンスキー大統領の言説についてまったく触れる所が無い

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https://archive.ph/5vHkL

が、プーチンに関する言説はこのような状況。

こういう背景があるんだろうとは思いますが、ならばウクライナ・ゼレンスキー大統領の言説も少しは精査してはどうだろうか?

なお、新型コロナワクチンに関しては以下のように(やはり)懐疑的な態度を取っています。

随時更新

miya397156651:全面的にロシアのプーチン推し「ウクライナのゼレンスキーは悪」という構図

説明不要ですね。

反ワクチンの中でも筋金入りです。

アメリカから見た日本@yamatogokorous:「西側のプロパガンダの存在・ウクライナの政治腐敗」をアピールし続ける

「ウクライナの事態」という言葉遣いにピンと来たので「侵略」ワードで検索。

やはり、「ロシアのウクライナ侵攻は侵略なのか」と書いていました。

「西側のプロパガンダの存在・ウクライナの政治腐敗」をアピールし続けているのがわかります。

要するに「価値相対化」をしているわけですが、いいかげん、アメリカのイラク戦争(侵略と言っても良いだろうし、イラク戦争は間違いだと私も思うが)をロシアのウクライナ侵略と同列視するのは、様々な点で誤りだということは整理されるべきだろう。

外務省:イラクにおける大量破壊兵器問題(参考)

  • イラクの大量破壊兵器使用の「前科」の存在
  • イラクが査察に非協力的だった(妨害していた)
  • こうしたイラクの姿勢を非難して協力を求める安保理決議があった(イラク戦争そのものを認める決議があったわけではない)

こうした事情が伏流にあったことは、本件と一線を画す事情として無視してはいけないだろう。

これに至っては意味不明過ぎる。

似たような話に「習近平がチャイナ国内の江沢民派と戦って抑え込んでいる、だから習近平と協力するべきだ」というナラティブがありました(この提唱者もコーネル大研究者らによるリストに掲載されている)。

なお、ワクチンについてもこのような態度でした。

マスクについても危険だということを書いていました。

その他のアカウント:目立った動きは無し

その他の研究においてリストアップされたアカウントですが、露骨な親露・ウクライナdisの論調はありませんでした。ロシアの侵略を批判する論調がほとんどです。

凍結しているアカウントや運用を止めたもの、更新がとまっているアカウントもいくつかありました。

また、ロシアによる侵攻とはほぼ無関係なナラティブ(ウクライナの政治腐敗の実態を語るものやアメリカの過去の戦争への批判をロシアのウクライナ侵攻と結び付けるものなど)へのアクセスも一部を除いてほとんど見つけられませんでした。

何度も書きますが、研究においてリストアップされたアカウントの全てが2020年のアメリカ大統領選において「デマ拡散をした」わけではないので注意です。

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