事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

安倍晋三議員「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯」ワクチン架空予約の不正アクセスで

安倍晋三議員

「極めて悪質な妨害愉快犯」というパワーワード

安倍議員「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯」

元内閣総理大臣の安倍晋三議員が、AERAドットと毎日新聞による自衛隊大規模接種センターでのワクチン架空予約事件(脆弱性の指摘)について、岸防衛大臣の両社への抗議ツイートを引用して「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯」とツイートしました。

ワクチン架空予約:不正アクセス禁止法や刑法違反なのか

岸防衛大臣「AERAと毎日新聞の不正の手段でのワクチン接種予約は極めて悪質」と抗議

アエラと毎日の自衛隊大規模接種センター予約ワクチン架空予約については岸防衛大臣が抗議のツイートをしていました。

これについては上掲記事にて不正アクセス禁止法と刑法上の罪に問われる可能性について指摘しましたが、刑法的な非難を受けるべきかはよくわかりません。

なお、軽犯罪法1条31号の悪戯による業務妨害も抽象的な可能性としては考えられる。

脆弱性の発見行為と法的な問題点

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脆弱性の発見行為と法的な問題点について論じた高橋郁夫弁護士の論文がありますが、ここではoffice氏事件判決を例に脆弱性の公表の在り方が論じられています。

東京地裁平成17年3月25日判決によると、セキュリティホールを把握しながらACCSに知らせず、自己の能力・技能を誇示したいという動機でセキュリティに関するイベントで発表するために不正アクセス行為をしたことは、関係機関にセキュリティ対策を広く知らせるためであっても到底正当化できない、という旨が判示されています。

※上掲図は平成17年時点の情報。最新はIPAの下記サイトから要確認。

IPAへの脆弱性関連情報の通報とアエラ・毎日新聞

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脆弱性関連情報の届出受付:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

上掲図にあるようなIPAへの通報は、法的な義務ではなく、セキュリティ関係者の紳士協定のような扱いであり、また、上掲図の手順に従ったからといって不正アクセスの違法性阻却がなされる関係にはないというのが平成17年当時の高橋郁夫弁護士による説明でした(情状には影響するかも)。

アエラや毎日新聞は、この手順を踏んでいれば非難される謂れはなかったかもしれません(※キャンセルのタイミング次第。記事では即座にキャンセルしたか不明)。

架空予約は多数存在し、報道機関が検証した以外にも検証をしていた者が居た可能性は十分あり、そのうちの誰かがIPAに脆弱性通報していた可能性もあります。

よって、「アエラや毎日新聞が検証したから脆弱性が見つかった、だから感謝するべき」と言えるのかは、かなり怪しいのではないかと思います。

防衛省が違法性を匂わせて抗議するのはただしい

仮にアエラや毎日新聞の行為(不正アクセス(?)しての予約+記事発信)が公益性があるとしても防衛省・防衛大臣が抗議の姿勢を示すことは不可避だったと思われます。

なぜなら、「すぐキャンセルしたから悪くない」理論が横行してしまうと、今後の愉快犯の出現を誘発してしまうからで、そういった風潮が出現しないように抑止力を働かせる必要があるからです。

アエラや毎日新聞との関係では「悪」だろうとも、ワクチン接種を停滞させてはいけない現時点では、社会的にそのような言論空間が望ましいと言えます。

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