安倍前首相が事実誤認です。
- 安倍晋三前首相「植村隆の捏造が確定」
- 「植村隆の捏造」は西岡力氏に対する東京訴訟で認められている
- 東京地裁・高裁は日本軍の強制連行も事実と異なるものと認定
- 対櫻井よしこ札幌訴訟では植村の誤導的部分を指摘、捏造したと信じたことに真実相当性が認められた
- まとめ:安倍晋三議員は「確定」と事実誤認してしまった
安倍晋三前首相「植村隆の捏造が確定」
https://www.facebook.com/abeshinzo/posts/3418803871576365
安倍晋三前首相は植村氏の櫻井氏に対する訴訟で植村氏の敗訴が最高裁で確定したことについて「植村記者の捏造が確定」とFacebookコメントをしていますが、これは事実誤認と言わざるを得ません。
植村氏が櫻井氏を相手に名誉毀損訴訟を提起した「札幌訴訟」では、札幌地裁・札幌高裁ともに、櫻井氏が「植村隆が捏造をした」と信じたことの相当の理由=真実相当性を認めたにとどまり、捏造をしたことが真実であるとは認定していません。
「捏造」の意味については、裁判所は「事実と異なることを知りながら敢えてその旨を主張した」の意味として扱っており、単に事実誤認があったというだけでは捏造とは扱っていません。
「植村隆の捏造」は西岡力氏に対する東京訴訟で認められている
植村隆が名誉毀損訴訟を提起しているのは、櫻井よしこ氏に対するものだけではなく、西岡力氏に対するものもほぼ同時並行で行っていました。
「植村隆の捏造」は、西岡力氏に対する東京訴訟で認められているのです。
東京地裁・東京高裁で認定され、現在は上告受理申立てをしている最中と思われます。
本件で争点となった記述の一つに、よくわかる慰安婦問題 [ 西岡力 ]における記述が挙げられます。
東京地裁・高裁は日本軍の強制連行も事実と異なるものと認定
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東京地方裁判所 令和元年6月26日 平成27年(ワ)390号
裁判所の判決文中の記述について以下書きだします。
「※」については私が説明を付加したものです。
名誉毀損訴訟における「事実」とは、①「論者が適示した事実」=必ずしも「現実に存在した事象」ではない前提があるの意味と、②「客観的に存在した事象」を意味するものがあるので注意。
現実に存在した、とする場合には「真実」となります。
第3 当裁判所の判断 -省略-
3 争点2(違法性・責任阻却事由)について -省略-
(2)真実性・相当性について -省略-
(ア) 裁判所認定適示事実3について (※「(ウ)」の間違いと思われる)
a 原告記事Aが報道する事実の意味内容について
ー中略ー以上によれば、原告記事A(※平成3年8月11日付朝日新聞大阪本社版朝刊に掲載された従軍慰安婦問題に関する署名記事)は、金学順が、日本軍(又は日本の政府関係機関)により、女子挺身隊の名で戦場に連行され、従軍慰安婦にさせられたとの事実を報道するものと認めるのが相当である。
b 原告が意図的に事実と異なる記事を書いたことについて
ところで、原告は、原告記事A執筆前の取材において、金学順につき、同人はだまされて従軍慰安婦になったものと聞いており、金学順が日本軍に強制連行されたとの認識を有してはいなかった(認定事実(3)イ、甲115、乙8、24、原告本人)のであるから、上記aで認定した原告記事Aが報道する内容は、事実とは異なるものであったことが認められる。この点については、認定事実(13)イの通りで、朝日新聞社も、この女性(金学順)が「挺身隊の名で戦場に連行された事実はありません。」として、原告記事Aに対するおわびと訂正の記事を掲載している。そして、原告は、日本政府による従軍慰安婦の強制連行の有無に関する国会質疑(認定事実(1)エ)をきっかけに従軍慰安婦問題について関心を持ち、原告記事Aを執筆したこと(認定事実(3))、原告は、原告記事Aを執筆した当時、朝日新聞社の吉田供述を紹介する記事(認定事実(1)ウ)の存在を知っていたこと優に推察されることからすれば、原告は、原告記事Aを執筆した当時、日本軍が従軍慰安婦を洗浄に強制連行したと報道するのとしないのとでは、報道の意味内容やその位置づけが変わり得ることを十分に認識していたものといえる。これに加えて、原告は、一般に記事中の言葉の選択には細心の注意を払うであろう新聞記者として、原告記事Aを執筆しているところ、問題となっている原告記事A中の文言は、一読して原告記事Aの全体像を読者に強く印象付けることとなる前文中の「日中戦争や第二次大戦の際、「女子挺(てい)身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり」との文言であることを考慮すると、原告記事A中の上記文言は、原告が意識的に言葉を選択して記載したものであり、原告は、原告記事Aにおいて、意識的に、金学順を日本軍(又は日本の政府機関)により戦場に強制連行された従軍慰安婦として紹介したものと認めるのが相当である。すなわち、原告は、意図的に、事実と異なる原告記事Aを書いたことが認められ、裁判所認定適示事実3は、その重要な部分について真実性の証明があるといえる。
このように、東京地裁は
- 日本軍の強制連行が事実と異なるものと認定した上で
- そのような内容を植村が書いたのは意識的=捏造であることが真実と認定した
明確に、このように書いています。
他2点の争点について西岡氏が真実と信じた事につき相当の理由が認められています。
なお、控訴審の東京高裁でもこの判断内容は変わっていません。
一般論だが、民事事件の高裁で、事実認定で負けた弁護団が上告にあたってカンパを募るということは許されないだろう。やるなら、上告審は事実審理がされないこと、したがって、高裁判決の事実認定が最高裁で覆ることはまずないを、世間によくよく説明してからにすべきだ。
— 弁護士神原元 (@kambara7) 2018年10月19日
カンパビジネスが目に余る。
対櫻井よしこ札幌訴訟では植村の誤導的部分を指摘、捏造したと信じたことに真実相当性が認められた
他方で、植村氏による櫻井氏に対する訴訟では
- 櫻井氏が「植村が捏造をした」と信じたことについての真実性は認定せず
- 植村氏の記事に誤導的部分がある事と櫻井氏の主張に事実誤認がある事を認定
- 櫻井氏が植村氏が捏造をしたのは真実であると信じたことにつき相当の理由がある=真実相当性が認定
- 訴訟ではそもそも被告である櫻井や西岡の捏造があったかは争点ではないので何も触れていない
したがって、「裁判において櫻井や西岡の捏造が明らかになった」というのは、明確にデマです。
本件の争点となる記述の一つとして月刊WiLL 2014年 4月号【電子書籍】[ ワック ]が挙げられます。
まとめ:安倍晋三議員は「確定」と事実誤認してしまった
- 札幌訴訟では植村の「捏造」の真実性は認定していない
- 札幌訴訟は植村が捏造したのが真実と櫻井が信じたことにつき相当性を認めた
- 札幌訴訟は最高裁で確定
- 東京訴訟では植村の「捏造」の真実性を認定した
- その前提事実「日本軍の強制連行」も事実とは異なるものと認定
- 東京訴訟は最高裁に上告の方針だったようだが現在の状況は不明
したがって、安倍晋三議員は植村隆が捏造をしたことが「確定」と言ってしまったことについて、事実誤認であると言えます。
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