事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「桜を見る会」の前夜祭(懇親会)安倍前総理に適用され得る罰則など法的整理

「桜を見る会」の前夜祭(懇親会)に関して状況が変化したので25日午前までの情報整理。

「不足分」の補填

安倍氏側、「桜を見る会」夕食会に5年で916万円負担:朝日新聞デジタル

 関係者によると、同法違反(不記載)罪の時効(5年)にかからない15~19年のそれぞれの費用総額は約407万~約634万円で、増加傾向だった。一方、各年の参加者は450~750人規模で、集まった会費の合計は約229万~約384万円だった。

 各年の不足分は約145万~約251万円で、安倍氏側が負担していたとみられる。ホテル側はそれぞれの年に、不足分の支払いを受けた金額の領収書を安倍氏の資金管理団体宛てに発行していたという。

まず「不足分」という表現で正しいのか。これが参加者への饗応接待のものと捉えられるか、単に会場費分なのか、などによっては呼称も考える必要があります。

集まった会費の合計が約750人で約384万円なら、一人当たり約5000円の計算ということで、従来の報道通りです。

公選法上禁止された寄付行為には当たらない

次に、「不足分」の上限が251万円ということですが、これを人数上限の750人で割ると一人当たり約3300円程度です。

なので、仮に饗応接待のものと捉えられたとしても、社会的儀礼の範囲内です。

よって、公選法上禁止されている寄付行為には当たりません

安倍氏側が不足分を補塡(ほてん)していたことを示す証拠とみて、政治資金規正法違反(不記載)にあたるかどうかを調べている。

検察も、政治資金規正法違反(不記載)で調べているということからも、そういうことでしょう。

政治資金規正法違反(不記載)の行為者と会計責任者

さて、仮に「不足分」として支出があったとするなら、政治資金規正法上は政治団体の会計責任者に対して、支出のすべてを義務付けていますので(同法12条1項2号)、今回は「不記載」として刑事罰対象となる可能性があるということです。

一応条文を…

第十二条 省略

二 すべての支出について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出一件当たりの金額(数回にわたつてされたときは、その合計金額)が五万円以上のものに限る。)について、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日

第二十五条 次の各号の一に該当する者は、五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
一 第十二条…書面の提出をしなかつた者
省略
二 第十二条…の規定に違反して第十二条第一項…書面に記載すべき事項の記載をしなかつた者
三 第十二条第一項…書面に虚偽の記入をした者
2 前項の場合(第十七条の規定に係る違反の場合を除く。)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、五十万円以下の罰金に処する。

会計責任者が行為主体であり、政治団体の代表者が監督責任を問われ得るという構造になっています。

支出の区分としてその名称が他と混ざっているために夕食会のものと判別がつかないということなんでしょうか?

政治団体の代表者:晋和会と安倍晋三後援会

報道にあらわれた情報からは、桜を見る会の夕食会(懇親会)で問題となるのは、当会を主催した「安倍晋三後援会」と、「ホテルが発行した領収書の名宛人」である「晋和会」です。

安倍晋三後援会は安倍晋三氏が代表ではなく、別の方が代表のようです。

他方、晋和会は安倍晋三氏が代表となっています。

安倍晋三後援会

晋和会

領収書の「名宛人」と代表者:監督義務違反となるか

ところが、政治資金規正法上の行為者=記載義務者になるのは実際に支出をした団体の会計責任者であるところ、ホテルの領収書の名宛人がたとえ「晋和会」であっても、安倍晋三後援会が支出したならそれに付け替えることが可能ということです。

それなら領収書が廃棄されてしまったのはなぜなのかよくわかりませんが。

ということで、現在までに出そろっている報道からの状況の整理

  1. 政治団体の会計責任者が政治資金規正法違反に問われ得る状況(確定ではない)
  2. ただし、公選法上禁止されてる寄付行為・買収、という話にはなり得ない
  3. 安倍晋三議員は「晋和会」の代表者として監督責任(50万円以下の罰金)を負うかもしれないが、実際に支出したのが「安倍晋三後援会」ならその可能性も無い

その他、若干の補足をします。

告発状:共謀共同正犯の主張を「共謀罪法案」に反対した共産党が支持しているのはちょっと面白い

 

第4 告発事実1(政治資金規正法違反)について 

第5 告発事実2(公職選挙法違反)について

第6 被告発人安倍に共謀共同正犯が成立することについて

告発状を見ると、上記3つの構成を考えているようです。

共謀共同正犯の可能性を見ているということですが、この場合なら安倍晋三議員も会計責任者と同じく「五年以下の禁錮こ又は百万円以下の罰金」の刑事罰を受けることに。

ただ、総理レベルが事務の段階の話を逐一認識しているとは思えず。現段階でこのような事情を推察するべき情報は出回っていません。

あと、テロ等準備罪について「共謀罪法案!」「居酒屋で会話もできなくなる!」などと批判していた共産党が、共謀共同正犯の主張について賛同しているというのはちょっと面白いなと。

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