事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

BONDプロジェクトは社会福祉法122条違反なのか?赤い羽根共同募金から1年間の寄附金募集制限

形骸化してる可能性

NPO法人BONDプロジェクトと赤い羽根共同募金の助成

NPO法人BONDプロジェクトが赤い羽根共同募金の助成を受けていましたが、平成30年度のある配分について「847万円、20人」という表記が問題視され炎上しました。

その結果、当該配分のページ上で「延べ1000人に3102個」という表記に変更された上、「物品の配分である」との説明書きが追記。

他の配分ページ(平成30年度、令和2年、3年度)の表記も修正されました。

併せて、別サイト上で「物品寄付」の助成額として記載されているのは商品の何らかの計算による評価額であり、金銭配分は無かった、という説明が為されました。

さて、この問題はここで終わりではありません。

BONDプロジェクトは社会福祉法122条違反なのか?

社会福祉法

(受配者の寄附金募集の禁止)
第百二十二条 共同募金の配分を受けた者は、その配分を受けた後一年間は、その事業の経営に必要な資金を得るために寄附金を募集してはならない。

Colaboに関して話題になった社会福祉法122条ですが、そちらは本法上の「共同募金」ではなく、別建てで寄付の募集が実施された「赤い羽根福祉基金」からの助成であったため、問題はありませんでした。

が、BONDプロジェクトが配分を受けていた助成は、明らかに社会福祉法上の「共同募金」です。
(※「はねっと」での記載上、そうとしか読めない)
(※社会福祉法上、「助成」と「配分」があるが、各地の共同募金会HP等で書かれている「助成」は、基本的に法律上の「配分」の意味。ここでも特に両者を使い分けない。)

したがって、配分を受けた後一年間は「その事業の経営に必要な資金を得るために寄附金を募集してはならない」ことになります。

で、BONDプロジェクトは、令和3年度令和4年度も、寄付金の募集をHP等で行っていました。

ですから、この規制にかかるのではないか?という疑問がネット上で出てきています。

なお、BONDプロジェクトの「一般寄付」のページでは以下の記述がありますが…

  • 3,000円で、一人の女の子に温かい飲み物が提供できます。
  • 5,000円で、虐待や犯罪被害に遭い、家に帰れない女の子を緊急保護することができます。(食事、着替え、衛生用品など)
  • 10,000円で、虐待や犯罪被害に遭い、家に帰れない女の子を緊急保護することができます。(食事、着替え、衛生用品、病院診察代、交通費など)

寄付するためのページでは、これらの金額に限らず、任意に金額を指定できます。

「その事業の経営に必要な資金を得るために寄附金を募集」

そこで「その事業の経営に必要な資金を得るため」という要件がどういうものなのか、国会議事録や社会福祉法の逐条解説書である社会福祉法の解説 /中央法規出版/社会福祉法令研究会に当たりましたが、言及はありませんでした。

昭和の議事録では、昔の社会福祉法81条に、現行法122条に相当する規定があったようで、「八十一條には例外規定がない。これは共同募金の金額が非常に少額で、とても経費を補うことができないような時分には、民間の社会事業家はどうすることもできないことになります」という問題意識から質疑が為されていました。答弁は以下。

第10回国会 参議院 厚生委員会 第15号 昭和26年3月19日

○政府委員(木村忠二郎君) この点は共同募金の性格といたしましては、一応共同募金は任意に相成つておりまして、共同募金を受けるということにいたしますと、その共同募金の金を寄附した側、これは一般大衆になりまするが、ここでは再びその目的では募集はされないという趣旨が一つ共同募金の本来の性質として入つておりますので、その本来の性質から見まして、大体その一年間のその必要な資金がどのくらいであるかという点につきましては、勿論福祉協議会等におきまするその事業の必要性の認定というものによつて来るだろうと思われるのでありますが、そういうことで一応認定されましたものに充当される。それ以外のものにつきましてはしないというふうになつておりまするような関係から、これが寄付金募集を許しますると、共同募金そのものの生命を先ほど御指摘になりましたように失うことになりますというようなところから、共同募金の性格を明らかにするという意味でこの規定を置いたわけでございます。従つてこれにつきましてはそれほど強い意味を持つておるのじやないので、共同募金の性質としてはこういうものであるということを明らかに宣言いたしたものでございます。従いまして募集せずして集まりまする金の寄附金の受入れ、これは一向差支えない、任意の寄附がございました場合に、これを受入れることは差支えございませんし、又一方におきまして特別なる、何と申しますか、或る事情に対しまする特別なる同情者がおりまして、これが必要な資金を提供するというようなことにつきましても、何ら妨げないというようなことで以て、それらで以て足りない部分を共同募金で補うとい建前を飽くまで貫くというような考えから、こういう規定をいたしたわけでございます。六十九條によりまして、そういう場合を全部不許可にするという形をとるような形にするよりもむしろこれはこうするほうがよいのではないかというふうに考えた次第でございます

この答弁中、69条とあるのはその後の改正を得て2001年時点では73条として存在し、寄付の募集をする際には一定の条件の下に厚生労働省の許可が必要というものでした。

が、平成23年の改正法で、この許可は不要になりました。

第177回国会 衆議院 本会議 第39号 平成23年8月23日

社会福祉事業の経営に必要な資金を得るための寄附金募集については…近年の当該寄附金募集の実態を考慮して、許可を要しないこととしたものである。

これはおそらく「寄付文化」の形成のために除去されたものと思われますが、そうすると、共同募金の寄付を受けた社会福祉事業者の1年間の募集禁止の規定は、どういう風に解釈・運用されるのでしょうか?

赤い羽根共同募金からの配分後、1年間の寄附金募集制限の規定の解釈運用は変化したのか?

  1. 現行法122条の1年間の規制は、寄付の募集に所轄庁の許可を要しないこととした代わりに厳格化される
  2. 従来と変わらない解釈
  3. もはや実態と合わないため、死文化された

どれでしょうか?

共同募金会や配分を受けている団体らの間では、何やら③の雰囲気がありますが、所轄庁、行政側としてはどうなんでしょうか?

なお、旧法では許可なく募集した場合には刑事罰となる罰則規定が設けられていましたが、122条違反に対しては罰則規定が存在しません(従前からも不存在)。

本条の実質的な意義も含めて、確認されるべき事案ではないでしょうか。

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