事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝日新聞 HPVワクチンの副反応「スクープ」記事を削除するも謝罪せず

朝日新聞がHPVワクチンの副反応に関する「スクープ」記事を1か月後には削除していたことがわかりました。

なぜ「スクープ」と書いているのかはこちらを参照:朝日新聞がHPVワクチンを否定する論調の発端だとする論文|Nathan(ねーさん)|note

朝日新聞 HPVワクチンの副反応「スクープ」記事

子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能に 2013年3月8日9時28分

https://web.archive.org/web/20130308164252/https://www.asahi.com/national/update/0308/TKY201303070493.html

朝日新聞のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの副反応「スクープ」記事はこちらですが、URLを見て分かるように、魚拓です。

この記事は1か月後には削除されていました。

しかし、とくに謝罪も訂正もしていません。

なぜなんでしょうか?削除した理由もなんなのかよくわかりません。

朝日新聞の紙面版の扱い

朝日新聞HPV子宮頸がんワクチンの副反応の記事

朝日新聞2013年3月8日朝刊37面

朝日新聞2013年3月8日朝刊37面にはこのような構成になっています。スクープ扱いというわけではなく、1面の中の10分の1程度しかスペースを使っていません。

Twitterで当時のツイートを見ても、ほとんど拡散されていません。

このような扱いで影響力があったとは思えません。

これはテレビで取り上げられたのが影響していると考えざるを得ません。

朝日新聞がHPVワクチンを否定する論調の発端だとする論文では、新聞メディアしか確認しておらずテレビメディアの報道はチェックしていないため、それも含めるとまた違った見方になると思われます。

読売新聞のHPVワクチン副反応記事はデジタル版のみ

HPVワクチンの積極勧奨の取りやめについては、「読売新聞の3月11日の報道がきっかけである」と言われることがありますが、かなり疑問です。

なぜなら、月11日の東京版の紙面にはそのような記事は存在しないからです。

読売新聞はデジタル版のみでそのような記事が存在していたものと思われます(関西版がどうなのかは調べていないが、内容が東京都杉並区の話なので、関西版にのみ掲載されていたとは到底考えられない)

女子中学生、子宮頸がん予防接種で副作用 2013年3月11日 読売新聞

東京都杉並区が無料で行っている子宮頸けいがん予防ワクチンの接種で、区内の女子中学生が2011年10月に接種後、手足のしびれなどの症状が出ていたことがわかった。1年以上通学できないほど重い副作用の症状だったことから、区はワクチン接種が原因として医療費などの費用を支給する。

 生徒の母親によると、生徒は中学1年の時に、子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」を区内の診療所で接種。直後に、発熱や嘔吐おうとのほか、腕、肩、背中のしびれの症状が出て、翌日から10日間入院した。

 退院後も足のしびれで車いすを使う状態が続き、今年1月までほとんど通学できない状態だったという。その後、症状が快方に向かっているため、通学を再開したが、関節痛と頭痛は続いているという。

 厚生労働省によると、同ワクチンは2009年12月から使用が始まった。12年8月末までの間に、失神や発熱など956件の副作用が医療機関から報告されており、死亡例も1件あるという。

 区の担当者は「任意の予防接種とはいえ、区も国も勧めている予防接種で副作用があった。お見舞いを申し上げ、誠心誠意対応したい」としている。

こちらは確認できる時期としては11月までは記事が残っていましたが、こちらも現在では削除されていて魚拓以外では見ることができません。

内容を見ると、朝日新聞の後追い報道ですので(この点からも朝日の記事が「スクープ」の扱いだというのが分かる)、HPVワクチンの積極勧奨の取りやめについて、「何が起点であったか」を論じる際には朝日新聞の3月8日の記事を指摘するのが適切でしょう。

なお、読売新聞が最初にHPVワクチンに関して危険性を報じたのは2011年9月13日の死亡例に関してです。

http://ikedatoshie.com/vaccine.pdf

このイメージがあったので「ワクチン積極勧奨の取りやめに関する運動は読売新聞が火をつけた」と考える者も居るようですが、実態は異なり、上述の通りです。

仮にこれが発端なら、その間1年半、何をやっていたのか?ということになりますし、何よりその間にワクチンの積極勧奨の方針が決まっていることからしてあり得ません。

予防接種法2条2項11号で「A類疾病」としてヒトパピローマウイルス感染症が定義され、8条1項でA類疾病の予防接種は「勧奨するものとする」とされていますが、こうなったのは2013年の改正法からで、法案提出が同年3月1日、可決が同29日、公布が同30日、施行が一部を除いて同年4月1日からとなっています。

予防接種法の一部を改正する法律案:参議院

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