朝日新聞の20日の「ノルウェーワクチン接種で高齢者死亡」記事の問題点。
朝日新聞の「ノルウェーワクチン接種で高齢者死亡」記事
ワクチン接種後、高齢者23人死亡 持病も ノルウェー ロンドン=下司佳代子 2021年1月20日 10時13分
朝日新聞は数日遅れてノルウェーのワクチン接種の話を取り上げました。
「ノルウェーで新型コロナワクチン接種の高齢者が死亡」の実際:各社の印象操作報道 - 事実を整えるで整理した以下の要点に照らして朝日新聞報道を評価します。
- ノルウェーは、高齢者を含め、新型コロナウイルスに感染した場合に最もリスクが高いと考えられる人々に焦点を当ててワクチン接種をさせている
- ノルウェーでは重篤な基礎疾患のある高齢者や、「ナーシングホーム」人口のほぼすべてに接種が進行中であり、18日午後の時点で48,000人以上が予防接種を受けている
※ナーシングホームとは、医療提供や看取りまでをも行う老人ホームのようなもの - ビオンテックとファイザーのワクチンの予防接種後に死亡した75歳以上の33人は、すべて深刻な病気に罹っていた
- ノルウェーのナーシングホームでは通常時に毎週平均400人が死亡している(医薬品庁の発表。公衆衛生研究所はナーシングホームで毎日平均45人・毎週300人と指摘)ため、この結果は予想されていた
- ノルウェー当局の認識:ワクチン接種と死亡との因果関係が判明したわけではないが、通常の副反応が重篤な疾患を持つ患者の経過に影響した可能性は排除されていない
- ノルウェー当局の認識:ワクチン接種の利点が最終的な副作用のリスクを上回るかどうかについて、個々の患者ごとに評価を行う必要があると勧告したが、ノルウェーの予防接種戦略に影響は無い。
朝日新聞はノルウェーのワクチン接種方針と高齢者の中身以外は伝えている
朝日新聞記事で気になる点は2つ
- ノルウェーのワクチン接種対象者が不明確
- 「高齢者」の中身が不明確
1:ノルウェーのワクチン接種政策の対象者が不明確
ノルウェーのワクチン接種政策は、高齢者を含め、新型コロナウイルスに感染した場合に最もリスクが高いと考えられる人々に焦点を当ててワクチン接種をさせています。
つまり、重篤な基礎疾患のある高齢者や、「ナーシングホーム」に入所している高齢者に対して重点的に接種が進んでいるのです。
この情報が抜けていると、【世の中全体で接種が進んだ結果、ナーシングホームに入所している高齢者が死亡した】という認識になってしまいます。
もちろん、朝日新聞記事では「施設入居者の平均余命は短く、毎週300人以上が亡くなっており、ワクチン接種によって死亡リスクが高まったという分析結果は出ていない」というノルウェー当局の主張も載せています。
しかし、たとえば「国民4万人に接種したら入所してる高齢者等(重篤な疾患あり)が30人死んだ」と言われるのと「入所してる高齢者等を中心に4万人接種したら高齢者(重篤な疾患あり)が30人死んだ」と言われるのとではまったく事態が異なります。
ノルウェー当局の主張まで確認しているならば、当然、この接種政策は知っているはずです。なぜ、この点を落としたのかは気になります。
2:「高齢者」の中身が不明確
朝日新聞では「高齢者」とだけ書いています。
しかし、「23人死亡」報道時点では80歳以上、「33人死亡」報道時点では75歳以上の高齢者として扱われています。
日本で「高齢者」と言えば、65歳以上を指しますから、10年も属性が異なる集団を読者に想起させていることになります。
なぜ、こんなことをするのでしょうか?
これらの情報はノルウェー当局の認識・主張ではなく、客観的な事実ですから、知っていたなら情報を落とす必要はゼロです。
また、この記事は他のメディアによる報道から1日以上経過してからのものであるのに、不思議で仕方がありません。
朝日新聞記事は「印象操作している」のか?
正直、他の日本語記事よりは1月20日の朝日新聞記事はマシです。
「印象操作してる」という評価は、不当だと思います。
ただ、正確な事実認識に至る事が可能な記事かというと、ブレ幅が大きいと思います。
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