事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

66歳男性「写楽」の侮辱匿名ブログの魚拓画像とヘイトスピーチ報道

侮辱罪、写楽、66歳男性、ヘイトスピーチ

66歳の男性が匿名ブログで川崎市の中学生を侮辱したとして科料が命じられた件。

実際の内容を確認してたら報道から察する以上に胸くそが悪いものでした。

その内容の紹介と、ヘイトスピーチについて改めて整理していきます。

66歳男性に侮辱罪の報道

中学生を匿名ブログで中傷 66歳男性に侮辱罪で略式命令魚拓はこちら

「写楽」ではこの新聞記事や生徒の本名を掲載した、「在日という悪性外来寄生生物種」というブログ記事を公開。

「日本国内に『生息』している在日」「おまエラ不逞朝鮮人」「チョーセン・ヒトモドキ」「通名か本名に統一しろよ」などという言葉を並べていたという。

匿名ブログ「写楽」の記事が問題のようです。

実際はどうだったでしょうか。

現在は消されているので魚拓から確認します。

匿名ブログ「写楽」の魚拓画像

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ブログの紹介に「日本が大好き」と書いて何かの免罪符にしている人はネット上にたくさんいますが、本当にやめてほしい。

私は報道を見て「非行少年か何かに対するものなのか?」と思っていたらそうではありませんでした(いや、たとえ犯罪者に対してであってもダメですが)。

普通の中学生に対してわざわざ親も含め氏名を特定して晒すのは完全にダメでしょう。

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侮辱の文言と報道で紹介されている文言

さて、実際にどういう文言が侮辱表現と認定されたかは定かではありませんが、報道には載っていない侮辱表現として

  1. 「〇〇〇・バクテリウム」
  2. 「通名などという在日専用の犯罪用氏名」
  3. 「ゲテモノ」

などが挙げられると思います(漏れがあるかもしれない)。

今回、報道された文言の選択はかなりまっとうなものだと思いますが、この種の報道においてはもっとも軽微と思われる文言や、それ単体では侮辱等にならない文言だけが紹介されることが多いです。

今回もなぜか「通名か本名に統一しろよ」という文言が紹介されていました。

ただ、もしかしたら検察がこれも含めた全体として侮辱罪を構成する文言の一つとして扱ったのかもしれません。この文言単体が侮辱罪を構成すると考えるのは間違いでしょう。

弁護士ドットコムでは『「如何にもバカ丸出しで、面構えももろチョーセン人面」「見た目も中身ももろ醜いチョーセン人!!!」などと記載した。』とあります。魚拓はこちら

ヘイトクライム・ヘイトスピーチの問題

このような事件が報道されると「罰が軽すぎる」ことや「ヘイトスピーチ規制法に罰則が無いこと」が問題視される傾向にあります。

しかし侮辱罪で捕捉できる上、科料の法定上限が低いことが問題視されるべきです。

別の法律である【ヘイトスピーチ規制法=本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】でわざわざ別個の罰条を設ける目的は何でしょうか?

ヘイト規制法は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とあるように「いわゆる純日本人」に対する言動は明示的には捕捉対象になっていません。

今回の事例で言えば、たとえば「在日」という文言を「チョッパリ(韓国語で日本人の蔑称)」に置き換えた場合、ヘイト規制法の捕捉対象になるかどうかは、条文の文言からは解釈問題になってしまいます(絶対に適用されないと言い切れるかは附則があるので不明)。

日本人に対するこのような侮蔑発言は韓国の掲示版を見れば至る所で見つかります。

魚拓はこちら

「ヘイトスピーチの定義」という誤魔化し

上瀧浩子弁護士:日本人は誰でも殺せ、ヘイトスピーチ

一部界隈では広義の「ヘイトスピーチ」ないし「差別」の定義や用語法として

  1. 変えられない属性に対するもの
  2. 少数者に対するもの
  3. 劣位にある集団に対するもの

などという理解があります。

しかし、1番であれば国籍は変えられますし、日本人の血を引いているという属性は変えられないので「日本人に対するヘイトスピーチ」もあり得ることになります。

また、2番がヘイトスピーチの要件であるとするならば、その境界線はどこにあるのでしょうか?

日本には60万人以上の韓国人が住んでいますが、中国人と並んで外国籍者の中では最大のグループです。日本人との関係で少数者だというなら、たとえば日本のある地方で外国人が大量に移住し、日本人よりも外国人が多くなったら、その外国人は少数者ではなくなるので、そのような外国人に対する憎悪表現は「ヘイトスピーチ」ではなくなる、ということで良いのでしょうか?

日本国内で中国人が台湾人に「民族浄化」的な発言をしてもヘイトスピーチではないとでも言うのでしょうか?

3番の劣位にある集団も何を持って「劣位」とするのか2番と同様の問題があります。

結局のところ、広義のヘイトスピーチの定義として上記1~3の要素を持ち出す者は、何がヘイトにあたるか?ということを恣意的に使い分けているに過ぎません。

用語の意味を恣意的に使い分けているのは一部のLGBT界隈も同様です。

人種差別撤廃条約の人種差別の定義とヘイト

あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約

第1条

1 この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。

ヘイト」とは異なる「人種差別」について。

人種差別撤廃条約を見れば、「人種差別」はマイノリティ・マジョリティ関係なく適用されることになります。

同条約の4条には「人種的優越の思想」に基づく憎悪表現=ヘイトに対する処罰規定を設けるよう規定されていますが(日本は留保)、「優越の思想」であって、現実的に優劣が発生していることがヘイトの要件や要素であるとは書いてません。

このように、一部界隈が言う「ヘイトスピーチの定義」は根拠がありません。

国籍による別異取扱いは人種差別でもヘイトでもない

人種差別撤廃条約Q&A(外務省)

Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。

A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
 ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。

重要なことが無視されがちですが(報道状況としては意図的に隠ぺいされていると言ってよい)、国籍による別異取扱いは人種差別でもヘイトでもありません。

これは人種差別撤廃条約で明確になっていますし、外務省も明言しています。

政策論でどうしても国籍の別に触れざるを得ない場合に、それすらヘイトだと言って言いがかりをつける輩が居ますが、そうした者に惑わされないようにしましょう。

昨年話題になった内閣府の国政モニターの件もその点が無視されがちでした。

まとめ:ヘイトスピーチ報道の在り方

「ヘイトスピーチ」「人種差別」の事件が起きたとき、報道の多くは比較的軽微な文言を抽出して報道するがために、萎縮効果を発生させる可能性があります。

また、「ヘイト」や「人種差別」の用語法についての正しい理解が広まっていないせいで、恣意的な解釈による用語法を広める連中が蔓延っています。

表現の自由等を行使できるように、正確な理解が広まってほしいと思います。

以上