事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝鮮学校無償化訴訟:福岡地裁小倉支部が請求棄却:補助金裁判など他の裁判はどうだったか

f:id:Nathannate:20190315114626j:plain

福岡地裁小倉支部で行われていた朝鮮学校無償化訴訟で原告の請求が棄却されました。

よくある誤解も含めて事案を整理します。

朝鮮学校無償化訴訟:福岡地裁小倉支部が請求棄却

朝鮮学校の授業料無償化除外、元生徒らが敗訴:朝日新聞デジタル 魚拓はこちら

判決は、改正前の省令が学校の「適正な運営」を求めていたことを踏まえ、朝鮮学校がこの要件を満たしていたかを検討。学校の人事、財政などに朝鮮総連の影響が見られるとする公安調査庁長官の国会答弁や、学校の資金が朝鮮総連に流用された疑いがあるとの報道などから、十分な確証が得られないと判断。除外措置は違法ではないと結論づけた。

これで東京・名古屋・大阪・広島・福岡の5都市で提起されていた無償化訴訟についてすべての地裁で判断が出そろったことになります。東京と大阪は高裁判断も出ており、いずれも原告(朝鮮学校側)の請求棄却になっています。

大阪地裁だけが朝鮮学校の訴えを認めましたが、高裁で覆っています。

補助金裁判も国が全面勝訴

司法の罪 – 無償化連絡会・大阪

大阪府と大阪市を相手取り2012年9月20日から6年以上の長きに渡り争われてきた「補助金裁判」が昨年末に終結しました。
最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、原告・大阪朝鮮学園の上告を退ける決定を下しました。これで学園側の訴えを棄却した1、2審判決が確定しました。決定は11月28日付。4裁判官全員の判断が一致した結論でした。
最高裁は弁論すら認めませんでした。

あまり目立ってないですが無償化訴訟とは別個に「補助金裁判」も進行していました。

そちらも最高裁で原告の請求を認めない判断が確定しています。

無償化訴訟の他の裁判の顛末

各所の裁判は朝鮮総聯の「不当な支配」があるかどうかが争点になりました。

裁判所がどうやって「不当な支配」の事実を認定したのかは以下でまとめています。

過去には産経新聞から「朝鮮学校」の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保となっており、そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が、同金融機関の破たんを受けて仮差押えがされているという報道がありました。

この疑念は払拭できないとされました。

よくある誤解1:「一条校じゃないから」

朝鮮学校は一条校じゃないから無償化にはなり得ない」と言う人が居ます。

朝鮮学校は学校教育法1条の「高等学校等」に当たらないという意味ですが、無償化や補助金支給の対象となるための要件は学校教育法とは別の法律に基づいています。

新制度は【高等学校等就学支援金の支給に関する法律】という法律に基づいており、「各種学校」に該当する学校も排除されていません。

確かに各種学校の場合には要件が別個に定められているため、一般的な高等学校に比べると対象になるハードルは高いのかもしれませんが(少なくともより面倒ではあるハズ)、区分が異なることから無償化や補助金支給の対象になる「資格」が無いということにはなりません。

たとえば各種学校であっても補助金支給を受けている学校は数十校あります。

一条校でないことを取り上げる人は、ハードルが高いことを指して言っているか、理想論として「そうであるべき」と言っていることが多いのだと思います。「一条校じゃないから対象ではない」と言い切ってしまうと、それはフェイクになります。

よくある誤解2:大阪地裁の西田隆裕元裁判長の人違い

大阪地裁判決を読み上げたのは、西田裁判長の後任である三輪方大裁判長です。西田氏が判決を書き上げた後に異動したため「判決代読」という手続を行っているだけです。

ネット上では三輪裁判長の顔写真でもって西田裁判長であるとしているものがありますが、明確に間違いなので注意しましょう。

なお、西田元裁判長は「判検交流」で裁判官の身分ではなく検察官の身分になっていますが、この制度が持つ問題は別稿を書くかもしれません。

とりあえず以下のツイートのツリーに問題点を書いています。

よくある誤解3:「(民族)教育を受ける権利の侵害だ」

朝鮮学校の側から主張されているものとして「子どもたちの教育を受ける権利を守れ!」「民族教育を受ける権利が侵害されている!」というものがあります。

これらは成り立ちません。

教育を受ける権利は何ら侵害されていない

彼らは朝鮮学校で学ぶことを妨げられていません。

また、教育内容を変更しなくとも朝鮮学校で教育を受けられる余地があります。

なぜなら、「朝鮮総聯の不当な支配」にあることが問題視されたに過ぎないからです。

教育内容が北朝鮮礼さんだから、とか、反日的だから、などの理由で無償化対象外になっているのではありません。

現在は、単に無償化のためのお金が学校に下りてこなくなるだけです。

それに、朝鮮学校に通っている生徒は、他の学校に進学・転校することも妨げられているわけではありません。自らの意思で朝鮮学校に通うことを選び取って来ています。

したがって、教育を受ける権利が侵害されているという事実は不存在です。

各地裁の判示においても、教育を受ける権利の侵害を認めているものはありません(侵害が正当化されると言っているかのような微妙な言い回しをしている地裁はあるが)。

「民族教育を受ける権利」など無い

駅前の予備校に通っている者が「塾代を無料にしていないから浪人生の受験教育を受ける自由の侵害だ」などとは言わないでしょう。それと同じことを言っていることになります。

民族教育をしても禁止されないという意味の自由はありますが、民族教育をすることを公に認めさせるような権利は、ありません。

まとめ:朝鮮学校は朝鮮総聯との関係を切れ

前々から言ってますが、朝鮮学校は朝鮮総聯との関係を切れば良いだけです。

例えば海外の日本人学校が中核派や革マル派からの支配を受けていたらダメでしょう。

日本国内の私立学校が指定暴力団の経営だとしたら、どうでしょうか?

本件は朝鮮学校の「コンプライアンス」の問題に過ぎません。

以上