事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝日新聞「朝鮮人虐殺、資料見つかる・朝鮮人らによる窃盗や放火などの14件を記した表も」

朝日新聞にヒントがあった

朝日新聞「朝鮮人虐殺、資料見つかる。神奈川県知事報告で145人」

朝鮮人虐殺、資料見つかる 神奈川知事名の報告書か 被害者名も記載
編集委員・北野隆一2023年9月5日 8時30分 朝日新聞デジタル

1923年の関東大震災での朝鮮人虐殺について、神奈川県が事件をまとめたとみられる資料が見つかったと虐殺の歴史を調べる地元団体が4日、明らかにした。県内で起きた朝鮮人への殺傷事件59件の概要のほか、殺害された計145人のうち14人の名前も記載している。

 資料は23年11月21日付で、当時の安河内麻吉・神奈川県知事から内務省警保局長にあてた報告書とみられる。「震災に伴う朝鮮人並びに支那人に関する犯罪及び保護状況その他調査の件」と題されている。

朝日新聞や東京新聞が「朝鮮人虐殺、資料見つかる。神奈川県知事報告で145人」などと報じていますが、この報告書の内容、果たしてそこまで重要なのでしょうか?

10年前に発見「震災に伴う朝鮮人並びに支那人に関する犯罪及び保護状況その他調査の件」

発見されたというのは「震災に伴う朝鮮人並びに支那人に関する犯罪及び保護状況その他調査の件」という名称の文書ですが、発見から10年経過しているものです。

「朝鮮人145人虐殺」神奈川県が国に報告か 政府の「記録なし」説明覆す 関東大震災2カ月後に作成の文書:東京新聞 TOKYO Web

 市民団体「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」によると、文書は虐殺研究の第一人者として知られる故・姜徳相カンドクサン氏が約10年前、古書店で発見。2021年に亡くなるまで、文書内容を裏付ける実地調査などを続けた。震災から100年に合わせ、実行委代表の山本すみ子さん(84)との共編で「神奈川県関東大震災朝鮮人虐殺関係資料」(三一書房)として発刊した。

本文書の内容は今年の9月6日に神奈川県関東大震災朝鮮人虐殺関係資料/三一書房/姜徳相に刊行したとあります。

しかし、被害者氏名が判明しているものが14名だけと報道にはあります。記事中の画像でも見て取れるように、加害者の情報も大多数は不明という有様です。

そのため、この記載内容の信憑性については注意が必要だということです。

朝日新聞「朝鮮人らによる窃盗や放火などの14件を記した表も」の信憑性

朝鮮人虐殺、資料見つかる 神奈川知事名の報告書か 被害者名も記載
編集委員・北野隆一2023年9月5日 8時30分 朝日新聞デジタル

加害者として検挙された日本人の住所や氏名欄もあるものの、大多数は「不明」「捜査中」とされている。朝鮮人や中国人を警察署などへ収容した状況や、朝鮮人らによる窃盗や放火などの事件14件を記した表もある。

朝日新聞記事では「朝鮮人らによる窃盗や放火などの14件を記した表も」とあります。

要するに、当時の神奈川県知事名義のこの報告書の内容を全て信用するのであれば、朝鮮人による放火の事案についても報告されているので信用すべきでは?ということになります。

そして、この報告書の内容が政府においてどのように扱われたのか?については、当時の政府文書から伺い知ることができます。

いわゆる後藤新平文書中の「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」

https://www.jacar.archives.go.jp/aj/meta/listPhoto?LANG=default&REFCODE=C08051013900&BID=F2008061910555439975&ID=&NO=9&TYPE=PDF&DL_TYPE=pdf

いわゆる後藤新平文書などと呼ばれる文書中にある司法省の「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」(刑事事犯調査書)ですが、これは司法省によって11月15日~11月30日現在までの調査結果を掲載している文書です。

そこでは「第四章 鮮人を殺傷したる事犯」として、横浜管内の事件としては2人の死亡者が居ると表にまとめられていることが分かります。

つまり、11月21日に神奈川県知事から145名の死亡の報告を受けた後、司法事件として扱うこととされたのはそのうちの2名分だったということです。

先述の通り、神奈川県知事の報告書では、被害者の氏名や加害者の氏名すら不明のものが多く、確度の低いものとして弾かれたものと思われます。

同じように、刑事事犯調査書の「第三章 鮮人の犯罪」では東京地裁管内と横浜地裁管内の事件表がまとめられていますが、横浜の事件表では公務執行妨害・傷害、窃盗の事件以外はなく、「放火」の項目はありません

つまり、朝鮮人による放火として報告された14件の事案については、確度が低いとして全て弾かれたと言えます。

そして、放火については「第一章 火災の原因」において以下書かれています。

横浜市に於ける火災原因に付ては独立発火の個所二百二十八件にして、震災直後より午後一時に至る間に於て発火したるもの実に百九十件を算せり、以て震災に因る倒潰家屋の多かりしことを推知するに足る。而して火災原因の放火に出づるものは一も存在せず。

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