新型肺炎を理由に「中国人は入店禁止」は違法なのか。
私は一定の場合には適法だと思います。
- 箱根の駄菓子屋・ラーメン屋が「中国人お断り」
- 新型肺炎コロナウイルスという感染症が理由、外国人を理由とした拒否ではない
- 店舗には契約締結の自由がある
- 平等の観点から社会的許容性の限度を超えるか
- 居住空間と一体になっているか、サービス内容が生存に関わるか
- 新型肺炎感染症の可能性を理由とした中国人利用拒否は違法ではない場合もあるべき
箱根の駄菓子屋・ラーメン屋が「中国人お断り」
新型肺炎を理由に「中国人は入店禁止」 箱根の駄菓子店:朝日新聞デジタル
静岡県のラーメン店が新型肺炎理由に中国人観光客を追い出し 中国ネットでは理解の声|ニフティニュース
本日より「新型コロナウイルス」の発生に伴う感染予防対策として「ハレルヤ3店舗、まんざら、ねぎま」の全店舗「中国人観光客の入店を禁止」致します。ご理解の程、宜しくお願い致します。 pic.twitter.com/pHRr4nDIfg
— 麺やハレル家 (@menyahareruya) 2020年1月29日
箱根の駄菓子屋・ラーメン屋が「中国人お断り」としたことがニュースになりました。
静岡のラーメン屋と上記ツイートのラーメン屋(札幌市)は別です。
新型肺炎コロナウイルスという感染症が理由、外国人を理由とした拒否ではない
新型肺炎コロナウイルスを理由とする中国人拒否は、基本的には「外国人であることを理由とした拒否」ではなく、「感染症を理由とした拒否」です。
したがって、中国人であれば新型肺炎の感染者であるということの可能性の高さが問題視されます。
ただし、そういう関係が明らかに認められない場合や、他の事情から本当は別の理由(外国人蔑視など)から拒否をしているとされた場合には、人種差別として違法になるでしょう。
「外国人であることを理由とした拒否」は、近時、以下の2件が問題視されました。
この際に企業が外国人の利用を断った場合の判例などを調べたので、今回のケースにおいて一定の基準を示そうと思います。
店舗には契約締結の自由がある
三菱樹脂事件最高裁判決では思想信条による入社拒否が問題になりましたが、その前段に以下述べています。
憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、二二条、二九条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。
この判旨は株主会員制のゴルフクラブの入会に外国人を拒否した事例を適法とした裁判例でも引用されています。
平等の観点から社会的許容性の限度を超えるか
ただし、社会的許容性の限度を超える場合には違法になるとされます。
実際に、外国人であることを理由にゴルフクラブの入会を拒否した事例や、外国人のマナーが一般的に悪いことを理由に公衆浴場の入場を拒んだ事例が違法とされています。
これらの事例では、公衆浴場は公衆浴場法に基づく北海道知事の許可を得て営業していることから「公共性」があるため、安易な外国人排除は認められないとする役割が裁判所から指摘されました。また、ゴルフクラブ事例でもゴルフというスポーツの娯楽としての位置づけから、「社会性」を有するため運営の裁量権に一定の限界があるとされました。
これらの公共性・社会性が認められるかが一つの分水嶺ではないかと思います。
居住空間と一体になっているか、サービス内容が生存に関わるか
【店舗が居住空間と繋がっているか、或いは近接しているか】
私は、この点は公共性・社会性認定について大きく司法判断を分けると思います。
自営業の店舗の多くは居住空間と連続性のある空間でサービス提供をしている場合があると思います。そのような職場空間は、私的な要素が残っているのであり、感染症のおそれを許容せざるを得ないということになると、安心して生活ができません。
これは店舗側の自己決定権が強く阻害されることになり、妥当ではないと思います。
実際、箱根の駄菓子屋は3階建てで、上階に人が住むことができるように見えますから、実際に人が住んでいたなら感染リスクを恐れるのは人として当然じゃないでしょうか。
さらには提供しているサービスも、食事と駄菓子屋では微妙に重みが変わってくるはずです。たとえば現段階においてホテルが無症状の中国人(無症状病原体保有者は別)の利用を拒否するのは違法です。宿泊は生存に関わる行動だからです。
ゴルフ場の裁判例でも、「ゴルフは趣味的に行われるスポーツの一種であって、これを楽しむ機会が失われたとしても直ちに衣食住のような生活の基盤が損なわれたり、健康で文化的といえる最低限度の生活が困難となったりするような性質のものではない」と指摘されたことがあります(東京地裁平成13年5月31日判決平成7年(ワ)19336号)
この点、ラーメン屋が提供している食事は生存に必要とみることもできますが、駄菓子屋では生存に不必要な商品も売っており、違法と判断される可能性がどちらが高いのかと言えばラーメン屋の方だと思います。
新型肺炎感染症の可能性を理由とした中国人利用拒否は違法ではない場合もあるべき
弁護士ドットコムや他のメディアの記事では、弁護士に「違法ではないか」と言わせるものばかりです。
しかし、実際の店舗の運営実態を見ていけば違法では無い事例もあるハズです。
私は、「居住空間と一体になっている店舗で生存に必須ではないサービスを提供している所」については、新型肺炎を理由に中国人を拒否しても違法では無いとするべきだと思います。
特に、現時点ではもうアメリカが中国人を入国禁止・大使館員も全員引き上げをしているのですから。
以上