事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

新型コロナ専門家会議の議事録公開に関する議論の前提

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新型コロナ専門家会議の議事録公開に関して議論がありますが、それをする最低限の前提として①現状の情報公開状況、②主張の類型、③地方自治体の現状と政府の比較、④他の国の状況などを整理します。

議事録の作成・公開に関する主張の諸類型

「議事録」の意味するところは民間と政府で異なりますが、一般用語レベルでは議事録・議事要旨・議事概要もひっくるめて議事録と呼称しても間違いではありません。

民間では発言者名を明示せず決定事項のみをまとめたものを議事録と呼んでいるところが多いですが、政府内では様々なバリエーションがあります。

議事録の作成・公開に関する主張の諸類型は以下に大別できます

  1. 議事録即公開派
  2. 議事録作成、後年公開派
  3. 議事録不作成、後年書き起こし派
  4. 議事録完全不要派

私個人の立場は、1は完全否定、4寄りの2・3は否定しない派です。

なお、議事要旨・議事概要等との違いについては以下参照。新型コロナの専門家会議は「議事概要」は公開済みです。

1:議事録即公開派

議事録は直ちに作成して公開するべきだと言う考え方。

立憲民主党系の議員らに多い考え方です。

ま、現在の政府の対応はガイドラインの運用通りでそのガイドラインは民主党政権下で作られたものなのですが。

2:議事録作成、後年公開派

議事録は会議後直ちに作成するべきだが、公開するのは後年にするべきという考え。

公開までの長さにも所説あり、大体10年~100年の間に収まると思います。

専門家会議の議事録等の情報開示請求をしたおしどりマコに対して政府からはほぼ黒塗りの「速記録」が開示されました。

少なくとも政府としては速記録も実質的な公開はしない方針のようです。

議事録は作成・公開を原則として、一定の場合には後年に公開するべき、という見解が音喜多駿議員です。

3:議事録不作成、後年書き起こし公開派

こちらは当面は議事録は作成しないが、後年に速記録やICレコーダーから書き起こして議事録を作成するという考え方です。

内閣官房は現時点では議事録は作成しない方針ですが、この可能性は残ります。

この考え方も許容している可能性のある者としては維新の足立議員と橋下徹氏が居ます(文面からは2寄りだが、それが無理な場合の次善策として考えていそう)。

2との違いは何かと言うと、開示請求をしても「不存在」で回答可能という所でしょうか。黒塗りする無駄な労力がかからないハズ。

ただ、速記録からの書き起こしだと判読困難の問題(それに伴う発言者に対する発言の正確性確認の必要性)、音声記録からだと音声記録自体の公開要請が出てくる可能性(書き起こされた内容が本当に音声通りなのか、同音異義語の区別など)といった問題があるように思います。

4:議事録完全不要派

議事録は専門家会議の目的からは作成不要であり、現在公開している議事概要で充分であるという考え方。

文面上はこの考え方の人も、1番の見解に対する反論として述べていただけであり、2・3番の可能性を否定しているわけではない場合があり得ます。

専門家らの見解・大阪などの地方自治体との違い

さて、どう考えるべきか。

専門家会議は5月29日の記者会見で「どちらでもいい」「それを決めるのは政治家」「我々としては取りまとめを政府に示すことが大事」「委員の中から議事録について話題に上がったが会議として何か決定したわけではない」という見解を示しています。

専門家会議の議事録を公開する問題点

上記回答をしたのは「「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月29日)」が作成公表された日であり、過去のバージョンに比して包括的であり長文のものであったのですが、議事録の方にやや比重が置かれた記者らの質問の姿勢はかなり疑問でした。

新型コロナ専門家会議の話に限らずおよそ「公開が当たり前」になるとすると、以下の問題点があると思います。

  1. 具体例を前提としたプライバシーに関わる議論ができない
  2. 機微に渡る議論に対する萎縮効果(発言予定内容の変化)
  3. 国家戦略に関わる議論ができない
  4. 利害関係人への情報提供・動きの察知をさせてしまうことになる
  5. 専門用語を誤解する者による不毛な議論
  6. メディアによるエンタメコンテンツ化

ここでそれぞれを論じることはしませんが、「発言内容の公開」の場合の行動の変化を指摘する論文があるようです。

(「議事録作成」というのは誤りと本人が引用リツイートで言及してます) 

これらを議論の出発点として提示します。

次は地方自治体ではどうなっているか、政府のものとの比較をしていきます。

大阪府の新型コロナウイルス対策の各会議と「議事録」

大阪府/第1回大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議

大阪府新型コロナウイルス対策本部会議」と「大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議」があるのが分かります(幹事会など細かいものは省略)。

専門家会議の構成員ですが、名称の通り「対策本部の専門家会議」なので専門家+本部会議のメンバーであり吉村知事・大阪府健康医療部長等、大阪市長・大阪市健康局長等が名を連ねています。

大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議の主な概要を見ればわかりますが、政府の「議事概要」と同じレベルの情報量であり、発言者名の記述がなく議論した事項の箇条書きです。

とはいえ、専門家会議の内容は動画として公開されていますから、実質的に議事録(さらに忠実に発言を再現した逐語録と言える)を作成公開しているようなものです(ただし「大阪維新の会」のYouTubeアカウントであり、大阪府の新型コロナ対策本部会議のHPとして残しているものではない)。

なお、「大阪府新型コロナウイルス感染症対策協議会」もありますが、こちらは議事概要も現時点で公開されていません。各医師会の会長や医学教授などの専門家のみで構成されており、政府の専門家会議は弁護士が一名いる以外は構成としてはこちらに近いです(政治側の人間が出席していない)

東京都の新型コロナウイルス対策会議

東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議・東京都危機管理対策会議資料|東京都防災ホームページ

東京都は「東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議(その前身の東京都危機管理対策会議)」と「東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会」があります。

「審議会」は書面会議の場合には弁護士一名と医療専門家だけで議事録とされるものは発言者名を明示した要約であり、集合した会議の場合には小池都知事など都の行政部局の人間も複数参加し、発言者名を明示した時系列に沿ったやりとりが記述されています。

集合した会議の動画は都のものとして公開されています。

本部会議も動画は同様ですが、議事録・議事概要など発言を書き起こしたものはありません。

特定の専門家のみが出席する会議で発言者名を明示した詳細議事録を残すことはほぼ無い

大阪と東京を引き合いに出しましたが、地方の中で情報量が比較的多いからです。

それでも、「特定の専門家のみが出席する会議で」「発言者名を明示した」「発言内容を時系列に沿って詳細に書き起こした議事録」を残してはいませんでした。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の議事概要の扱いは、他の自治体の運用と比べてもそんなにおかしくないということが言えます。

理想論としてどうあるべきかは別ですが、懸念点は既に示しました。

海外ではどうなっている?イギリスとアメリカを例に

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デュー・プロセスが重視されているイギリスとアメリカではどうでしょうか?

と思っていくつかのページを調べてみましたが、日本のような専門家による対策会議が公開されているという話は聞きません。

知ってる人が居たら教えて欲しいです。

ちなみにイギリスとの比較で「日本は情報公開が遅れてる」とTwitterで言ってる人に質問しても、知ってる人は居ませんでした。

以上