事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「陸自,反戦デモもグレーゾーン事態」⇒「報道」も対象なのに批判しない謎:共産党穀田恵二議員の質疑と陸上自衛隊の今後の取り組み

「報道」は騒がない謎

「陸上自衛隊の今後の取り組み,反戦デモもグレーゾーン事態」

反戦デモを「新たな戦い」に例示 防衛省、記者向けの資料で 2022年3月31日 12時54分 朝日新聞

テロと反戦デモを同列視、松野官房長官が「誤解招く表現」と釈明 陸幕の文書廃棄も「不適切」 2022年3月31日 18時49分 東京新聞 

問題の行政文書は、陸幕が2020年2月4日に開いた記者向け説明会で配布した「陸上自衛隊の今後の取り組み」と題する資料。自衛隊が警察当局や米軍と連携して対応する事態にテロやサイバー攻撃、特殊部隊による破壊活動などと並んで反戦デモと明記した。
 その場で参加者から不適切だと指摘されたため、「暴徒化したデモ」という用語に修正したが、回収した当初の資料は保存期間が1年と指定されているのに2月5日に廃棄したという。
◆「文書は誤って廃棄。隠蔽ではない」と防衛省
 鬼木氏は、防衛省として一般的なデモをグレーゾーン事態とみなしているわけではないと釈明。内部規則に反して廃棄したのは、文書管理の担当者が「1年未満の保存期間とすることができる資料だと誤った認識を持っていた」と陳謝した。

陸自が「反戦デモ」もグレーゾーン事態として扱っているということが共産党界隈を中心に騒がれています。

政府の認識として松野官房長官も記者からの質問に「誤解を招く」と答えています。

令和4年3月31日(木)午後 | 令和4年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ

なお、「グレーゾーン事態」は法的な用語では無く実務用語。防衛省では『グレーゾーンの事態』という用語を用い、「武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題に関わる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況」と説明しています。

防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|コラム|<解説>「グレーゾーンの事態」と「ハイブリッド戦」

共産党穀田恵二議員の質疑:3月30日衆議院外務委員会

発端は3月30日衆議院外務委員会における日本共産党の穀田恵二議員の質疑です。

そこではロシアによるウクライナ侵攻が行われ、世界中で『反戦デモ』が行われているという事を指摘した上で、当該資料の文言を問題視していました。

衆議院インターネット審議中継

「報道」もグレーゾーン事態の対象なのに批判しない謎

反戦デモとグレーゾーン事態

赤旗3月31日https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2022-03-31/2022033101_03_0.html

非常に奇妙なのは「報道」も対象になっているのにそこには文句が出ないという点

反戦デモとグレーゾーン事態

「暴徒化したデモ」への変更後も、「報道」は維持されています。

反戦デモとグレーゾーン事態:陸上自衛隊の今後の取組み

30日、定例会見。「物価高騰・生活防衛対策本部」立ち上げを報告。「反戦デモ」敵視の防衛省文書を告発! | こくた恵二site

それは当然で、「全ての報道」が対象じゃないから。鈴木宗男がTV出演してロシア側の認識を流布して誘導するような事象の拡大版…電波ジャックなどを懸念したものでしょう。

「反戦デモ」も同じで、暴徒化して器物損壊・傷害行為等に及ぶような場合と理解するのが通常。

つまり、こういう概略図の表現をあげつらってたということ。

「反戦デモ」で騒いでるのはロシアの侵略への対抗を意味する反戦デモと紐づけて、そういうようなものも一般的に対象にするのだ、と印象付けたいだけ。

表現の問題であり、陸自の認識の問題ではない。

もっとも、なぜそのような表現になったのか?という点は重要。

それは、過去に行われた「反戦デモ」の実態という事実をベースにしているから。

「反戦デモ」とは何だったか?安保法制改正で「戦争をしたいのか」

当の穀田議員は『「反戦デモ」を、いつ暴徒化するか分からないと敵視する認識』と書いていますが…

少し前に日本では安保法制改正やテロ等準備罪への反対、辺野古移設やオスプレイ配備反対をかかげる「反戦デモ」が起きて国会前バリケードを突破した数百人が出現したでしょう

国会前大集合デモ:道交法違反のバリケード突破決壊動画2018年4月14日

他にも、沖縄の米軍基地前で米軍車両の進行を妨害する市民らなど。

もっと遡れば、60年安保闘争時代には現実に火炎瓶や投石などが行われていました。

つまり、日本における「反戦デモ」は、国防関係の制度変更をしようとすると、日本が戦争を仕掛けるわけでもないのに、さもそのような事態を起こすのが目的であるかの如く主張される種々の抗議活動の名を借りた政治運動だったという歴史的事実

警察の機動隊員が焼かれて死んだ例もあります。

そこに外国勢力の関与が無かったと言えるだろうか?

公安調査庁も、過激派が恒例行事として「反戦デモ」を行っていることや、一般市民によるデモの中に過激派が混じっていることは、既に前々から指摘していました。

回顧と展望 | 公安調査庁

したがって、陸自の資料における「反戦デモ」は、そうした事例を超える暴徒化した集団を想定してるということが、関係者の間では共通理解だということです。

しかし、「記者向けの説明」という場で外国へのプロパガンダに利用されかねない表現を使ったという意味で、非難対象となるのは避けられないでしょう。

ロシアのウクライナ侵攻への反戦デモと結び付ける印象操作

朝日新聞の編集委員が、2020年時の話をロシアのウクライナ侵攻への反戦デモと結び付け印象操作をしている図。ツイートの文言上はそうとしか読めない。表面的な文言を問題視しているんだから、そう言われても仕方ないですよね。

こうしたナラティブに引きずられて、「現在の問題」として理解する者がそれなりに観測されました。これこそが「報道」のグレーゾーン事態…にはなりませんが、一種のプロパガンダであることは間違いありません。

なお、当該陸自資料は文書保管期間1年のルールが適用されるべきものが指摘を受けた翌日に廃棄したというルール違反の問題があり、それは遺憾だと思います。

それにしても、この者も「報道」には騒いでません。

そういうことです。

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