事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

萩生田文科相トリエンナーレ補助金不交付決定「実現可能性・継続性」の観点から

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萩生田文科相が文化庁のトリエンナーレ補助金不交付を正式に決定しました。

やはりNHK、朝日新聞の報道に表れていた理由づけはフェイクでした。

萩生田文科相トリエンナーレ補助金不交付決定「実現可能性・継続性」

 「実現可能性・継続性」の観点から不交付を決定したと言っていますね。

NHKや朝日新聞は関係者の弁として「申請時に少女像など具体的な作品が記載されていなかった」という報道をしていましたが、まったく違いますね。

さて、この理由づけはどこから来ているのでしょうか?

文化庁の補助金事業申請の募集要項

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日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業(文化資源活用推進事業)の募集 | 文化庁

愛知県が事業者としてトリエンナーレの国際現代美術展が補助事業となっている補助金事業の【募集案内】を見ると、審査の視点が書かれています。

そこで「実現可能な内容」「事業の継続が見込まれるか」という観点があります。

補助対象事業において、このような要素が欠けているということが事後的に判明した場合には補助金交付を取り消すことができると文科省は考えているのでしょう。

補助金交付決定の取消しは補助金適正化法にも規定があります。

補助金適正化法での補助金交付の取消し

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

第四章 補助金等の返還等
(決定の取消)
第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。
4 第八条の規定は、第一項又は第二項の規定による取消をした場合について準用する。

根拠法令は何か?と言われればこれが該当すると思います。

これを受けて愛知県はどうアクションを取るでしょうか?

※2020年3月28日追記:最終的に国と愛知県が協議して、愛知県側が減額したものを申請し、全体として交付決定されました。9月の段階では「交付決定の取り消し」ではなく、「交付しないことを決定した」もので、この場合の扱いは補助金適正化法上には規定が無いものでした。

愛知県は係争処理委員会にかけるのか?

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国の関与に不服があった場合には地方公共団体は国地方係争処理委員会に対して不服を申し立てることができます。

この制度を利用して国に対する是正勧告を導いたのが、ふるさと納税制度の対象外となった泉佐野市です(対象外とする措置を是正しろ、という勧告がなされた)。

愛知県側が文科省の理由づけに不服がある、違法性があるという主張をする可能性はあります。

まとめ:補助金の不交付決定は違法性はあるのか、大村知事の責任は?

文科省の不交付決定(交付決定の取消し)は違法なのでしょうか?

そうでない場合には7800万円の「損害」を愛知県が蒙ることになるので、大村知事の責任問題が生じるでしょう。少なくとも政治的な責任が。

さらには法的な責任として大村秀章個人に対して愛知県が請求するよう住民が請求する可能性もあります。こちらはかなり無理のような気がしますが、そういう行動をとる方がたが出てこないとも限りません。

以上