事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「橋下徹が特別永住者・外国人に参政権を与えようとしている」はデマなのか?

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 「橋下徹が特別永住者・外国人に参政権を与えようとしている」はデマなのか?

橋下徹と特別永住外国人の参政権

2012年の橋下徹氏のツイートが何度も取り上げられています。

多くの方はこちらのツイートを見て

「橋下徹は特別永住者には参政権を与えろと言っている!」

と思っているんじゃないでしょうか?

でも、次のツイートも同じ年の2か月前にしてるんですよ。

魚拓:http://archive.is/Kuj9j

被選挙権や公権力の行使にかかわらない

そのような「純粋な地域コミュニティーのルール作り」に限ってと言っています。

現状、一般の外国人にも地方自治体の職員への途を開いているところはあります。橋下氏は、そういうものには反対であるということです。

参政権とは

ところで、「参政権」とは政治参加に関する権利の総称です。

選挙権・被選挙権・公務就任権・請願権などが含まれます。

最高裁判所裁判官の国民審査も参政権と呼べるのではないでしょうか?

特に「選挙権・被選挙権」を指して参政権と呼ばれる場合がありますが、橋下氏に言わせれば「地域コミュニティーのルール作り」は参政権ではないのでしょう。

特別永住外国人の公権力の行使と選挙権

では、「公権力の行使にかかわらない」と「選挙権」についてはどうなのでしょうか?

公務就任権:公権力の行使にかかわる外国人

公権力の行使」というのは(通常の)外国人の公務就任権について判示した最大判平成17年1月26日 平成10(行ツ)93 における「住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)」を念頭に置いているものと思われます。

一応は「管理職であるか否か」が基準になりそうですが、以下判示されています。

最大判平成17年1月26日 平成10(行ツ)93 

地方公務員の中でも,管理職は,地方公共団体の公権力を行使し,又は公
の意思の形成に参画するなど地方公共団体の行う統治作用にかかわる蓋然性の高い職であるから,地方公務員に採用された外国人が,日本の国籍を有する者と同様,当然に管理職に任用される権利を保障されているとすることは,国民主権の原理に照らして問題がある。しかしながら,管理職の職務は広範多岐に及び,地方公共団体の行う統治作用,特に公の意思の形成へのかかわり方,その程度は様々なものがあり得るのであり,公権力を行使することなく,また,公の意思の形成に参画する蓋然性が少なく,地方公共団体の行う統治作用にかかわる程度の弱い管理職も存在する。したがって,職務の内容,権限と統治作用とのかかわり方,その程度によって,外国人を任用することが許されない管理職とそれが許される管理職とを分別して考える必要がある。そして,後者の管理職については,我が国に在住する外国人をこれに任用することは,国民主権の原理に反するものではない。

地方自治体の職員に与えられている権限によっては、管理職であっても公権力の行使をするような立場に無い者も居るということです。基本的にはその可能性は高いですが。

蛇足ですが、公務員とは言えないのかもしれませんが、幕末~明治時代には「お抱え外国人」を雇って西洋文化を吸収していたこともあります。

「在日」にも選挙権を付与するのか?

また、被選挙権ではなく「選挙権」はどうなのか?という疑問も湧きます。

橋下氏は基本的に「特別永住者」ではなく「特別永住外国人」という用語を使用した上で、「外国人参政権には反対」であるとはっきり言っています。

ただ、明示的に「特別永住外国人の選挙権付与には反対」とは言っていないので、もやもやしている人が多いのが現状でしょう。

実は、地方公共団体における選挙権について争点になった最判平成7年2月28日(平成5年(行ツ)第163号)においては以下判示されています。

憲法九三条二項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体
における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。

普通の外国人の参政権は憲法上保障されていないが「永住者等であって居住する自治体と特段に緊密な関係を持つに至った者」には、法律によって「選挙権」を付与することは禁止されていない、と最高裁が言っているのです。

単に特別永住外国人であるというだけで「特段に緊密な関係」であると言えるかは不明ですが、単なる永住者も含めていることから、その可能性は高いでしょう。

そうだとするなら、仮に橋下氏が主張している内容が「特別永住外国人への参政権の付与」を含むとしても、最高裁判例の見解に沿ったものではあると言えるでしょう。

 

純粋な地域コミュニティールールとは

上述のように、「公権力の行使」「被選挙権」とは異なる「純粋な地域コミュニティーのルール作り」とは、ごみ集配のルール・保育所設置や入所のルールにかんする事柄が含まれるようです。

ただ、これは特別永住外国人本人がルールを作るというよりは、ルール作りの主体に対して意見を具申することができる状態を指しているように思われます。

橋下徹と特別永住外国人制度の解消

魚拓:http://archive.is/PHDcM

このように、明確に特別永住外国人制度を解消する方向の考えを持っています。

映像もあります。

特別扱いすることは、かえって差別を生む

しかもさらに踏み込んだ発言もしています。

全文表示 | 橋下徹「在日の特別永住者制度を見直す」 これでヘイトスピーチも差別もなくなる? : J-CASTニュース

在日韓国人らについて、「特別扱いすることは、かえって差別を生む」と記者団に答え、在特会のヘイトスピーチで標的の1つになっている特別永住者制度を問題視したのだ。報道によると、橋下氏は、ほかの外国人と同じように制度を一本化していく必要があるとの考えを示した。つまり、特別永住者制度を止めて、一般永住者制度だけにするということだ。 

まとめ:橋下徹は特別永住制度を解消する方針

  1. 橋下徹氏は特別永住外国人の制度を解消する方針
  2. 現行制度下においては特別永住外国人に限って「純粋な地域コミュニティールール作り」への関与は認める方針
  3. その中身には選挙権や公務就任権が含まれているのかは完全には否定されておらず不明
  4. ただし、仮に含まれていたとしても最高裁判例の枠を超えるようなものではない 
  5. 「橋下が特別永住者に選挙権を与えようとしている」はデマとは言い切れないが確定的でもない

特別永住外国人に対して一部の選挙権や公務就任権が認められることが特別永住制度解消を促進するのか、固定化されるのかは分かりません。

分からないからこそ、有権者が理想をもって橋下氏を含む政治家に対して意見をしていく必要があると思います。私は、特別永住権者への選挙権付与は反対です。

以上