東京大学名誉教授の早野龍五氏が伊達市民の外部被ばく線量に関する論文について。
【70年間の生涯被ばく線量】が誤って3分の1になっていたため訂正しました。
訂正後は生涯被ばく線量の中央値が50~60ミリシーベルト(mSv)になるとのことです。
これは1年間の被ばく線量だと1ミリシーベルト(mSv)以下になります。
※追加被ばく線量なので、自然被ばくは含まない。
1年間で100mSv以下の場合に発がん率に有意な差があるという研究はありません。
さて、この報道について、勘違いをさせようと印象操作する向きがあります。
- 東京大学名誉教授の早野龍五名誉教授のツイッター
- NHKのWEB記事は正しい理解が可能
- 共同通信を読んで一般人はどう思うか?
- 木野龍逸による印象操作
- まとめ:3分の1過小評価訂正報道は風評被害に配慮せよ
東京大学名誉教授の早野龍五名誉教授のツイッター
本日1/8,文科省記者クラブに「伊達市⺠の外部被ばく線量に関する論⽂についての⾒解」を貼出いたしました.70年間の累積線量計算を1/3に評価していたという重大な誤りがあったことと,その原因,意図的ではなかったこと,今後の対応,伊達市の方々への陳謝などを記したものです→ pic.twitter.com/OuHJKXZmY2
— ryugo hayano (@hayano) January 8, 2019
2019年1月8日の13時05分のツイートです。
早野教授の元の論文はこちら、疑義を呈した黒川氏の指摘はこちらです。
ここでは【70年間の累積線量計算】とあります。
添付資料に説明がありますが2018年11月28日に論文誌に訂正申入れ済みです。
さて、これはどのように報じられたでしょうか?
NHKのWEB記事は正しい理解が可能
平均的な一生涯の被ばく量を18ミリシーベルト以下としていましたが、別の研究者から疑義が寄せられたため調べたところ、計算プログラムのミスが見つかり、実際はその3倍程度の50から60ミリシーベルトだったということです。
このため、早野名誉教授らは、去年11月学術誌に論文の修正を申し入れ、手続きを進めているということです。
また、この論文をめぐっては、およそ5万9000人分のデータのうち、およそ半数が住民の同意を得ないまま使われていたということで、住民が東京大学に研究倫理違反の申し立てを行っています。
早野名誉教授は「重大な誤りだが、計算プログラムの書き間違えによるもので、意図的ではない。被ばく量が3倍になっても1年の平均では1ミリシーベルトを超えないレベルに収まると考えている。住民の同意を得ていないデータが含まれていることは知らなかったが、データを使ったことは事実で申し訳なく思う」と話しています。
- 平均的な生涯の被曝線量が実際は50~60mSvである
- 3倍になっても1年の平均では1mSvを超えないレベル
- およそ半数の住民の同意を得ないままデータが使われていた
「3倍にしても年間1mSvを超えないレベル」
この結果が重要です。
論文の該当部分は以下です。
Abstract
ー省略ー
As a result, we found that the external exposure contribution to the mean additional lifetime dose of residents living in Date City is not expected to exceed 18 mSv.結果として、伊達市に居住する者の平均追加生涯線量に対する外部被ばくの寄与が18 mSvを超えるとは予想されない、ということがわかった。
今回の問題で重大なのは、むしろ「同意の無いデータ使用」の方です。
早野教授自身も言及しているように、論文全体の成立自体に影響を与えかねません。
さて、他の報道ではどうなっているでしょうか?
共同通信を読んで一般人はどう思うか?
福島、被ばく線量分析論文に誤り 3分の1に評価、修正求める - 共同通信 | This Kiji:魚拓はこちら。
東京電力福島第1原発事故後、福島県伊達市の住民の個人被ばく線量を分析した論文を巡り、著者の早野龍五東京大名誉教授(原子物理学)は8日、「累積線量を3分の1に評価する重大な誤りがあった」として、掲載した英専門誌に修正を求めたと明らかにした。論文に使用したデータのうち約2万7千人分は本人の同意が得られていなかったことが判明しており「報道で初めて知った。市民の皆様に迷惑を掛けた」とした。
「累積線量」となっています。
私たちが「被ばく線量」と聞いて報道で目にするのは「年間被ばく線量」がほとんど。
「累積」は「1年間」と思ってしまう人も居るんじゃないでしょうか?
そのような状態で、他のメディアやTV・ラジオの音声で「3倍」や「50~60ミリシーベルト」という言葉を聞いた場合、印象はかなり異なるものになるでしょう。
共同通信が意図的かは知りませんが、実際に今回の件で「やっぱり福島は危険だ」と思わせるような印象操作をしている者が居ます。
木野龍逸による印象操作
意図的かどうかはとまかく、論文の誤りを訂正すると、生涯線量が200ミリシーベルト前後になる人たちがかなりいることを示してる。それは今後の政策決定に活かすべきと思う、
— 木野龍逸 (Ryuichi KINO) (@kinoryuichi) January 8, 2019
→市民の被曝線量、3分の1に過小評価 東大名誉教授論文:朝日新聞デジタル https://t.co/8LDHkkcPi7
原発事故の取材をしているフリーランスのジャーナリスト木野龍逸。
『論文の誤りを訂正すると、生涯線量が200ミリシーベルト前後になる人たちがかなりいることを示してる』
生涯線量が200mSvなら、一年間だと70分の1なので約3mSvに過ぎません。
これは全身MRIを1回でも取れば被ばくする量より小さいものに過ぎません。
また、平均が生涯線量50~60であるデータの分布において200ミリシーベルト前後の人たちが「かなりいる」という表現は不適切に過ぎるでしょう。
そして、そのようなことは論文の誤りを指摘した黒川氏も言ってません。
早野教授は「被ばく量が3倍になっても1年の平均では1ミリシーベルトを超えないレベルに収まる」と言っています。
一読して、元の論文を3倍にしたものから木野氏が主張するような結論が導き出せるものであるとも思えません (3倍にしたものをさらに3倍にしているような気がしますが)。
まとめ:3分の1過小評価訂正報道は風評被害に配慮せよ
この記事の冒頭で示したような報道をしないところがなぜあるのでしょうか?
紙幅の関係などというものは影響しないはずです。
放射線被ばくの問題は、頭の中で計算できない人を対象に、福島県を貶める印象操作が蔓延っています。
報道の仕方、発信の仕方をかんがえて頂きたいものです。
以上