事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

「元徴用工弁護士有志声明」呼びかけ人:岩月浩二弁護士の誘導

「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」

こちらの呼びかけ人弁護士の岩月浩二氏から異常な主張が飛び出ています。

中には判決の内容と齟齬が生じる記事もあるので無視できません。

「元徴用工弁護士有志声明」呼びかけ人の岩月弁護士

「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」呼びかけ人・弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29

日韓請求権協定(以下、「請求権協定」とする)の解釈という、優れて高度な法律問題について、一国の法律専門家の超エリート集団が、そうそう容易に論破されるような軽率な判決を下すはずがない。頭から間違っているとする、韓国最高裁判決に対する非難には、韓国を下に置く、近代日本に深く刻まれた朝鮮差別意識が透けて見える。

何かがあるとすぐに「日本人の差別意識」を原因にして逃げる。

こういった姿勢は関東大震災関係の記述で多く出くわしました。

出鼻からこのような態度なので、この後の論もさもありなん、というものでした。

岩月浩二弁護士:不法行為の内容が事実と異なる

岩月弁護士は「人生被害」=挺身隊が慰安婦と混同されて発生した諸々の不利益も含めた事情を「総じて」名古屋高裁が不法行為であると断罪したと言っています。

「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」呼びかけ人・弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29

韓国では「挺身隊」がほぼ「慰安婦」の意味で使われており、日本での報道でもそうした用法が一般的であった。植村隆『真実――私は「捏造記者」ではない』(岩波書店、2016年)134-135、222―223頁を参照されたい。なお、特定の用語の混同を集中的に批難し、あたかも被害の事実まで否定しようとする歴史修正主義者の「包括否定」の主張は看過できない。こうした行為は、「正確さ」を持ち出しながら、かえって歴史の真実から目を背けるものであろう。この点は高橋哲哉『戦後責任論』(講談社、2005年)137-146ページで指摘されている。

 純潔を失った女性は「汚れた女性」と分類され、「遊ぶ相手」と見做されて、社会や家庭から排除され、婚姻生活に入ることは許されなかった。帰国後まもなくこれを知った原告らは、「挺身隊」に動員された過去に固く封印し、過去を知られることに怯える人生を送ることを余儀なくされた。固く封印しても秘密は漏れる。挺身隊の過去を知られた原告らは、離婚を強いられ、あるいは夫から虐待を受け、夫が家を出た。甚だしくは夫が、外で「汚れていない女性」ともうけた子どもを実子として育てることを強いられた原告もいた。提訴後に、初めて夫に「挺身隊」の過去を打ち明けた結果、離婚された原告もいた(こうした人生被害は「慰安婦」とされた女性も共通して被った人生被害である)。

 彼女たちの日本訴訟にかけた思いがひときわ深かったのも、被害者とみなされず、「汚れた女性」として社会や家庭から排除されるという、こうした人生被害のまさに、ただ中にいたからでもあっただろう。

(6)重大な不法行為
 上記名古屋高裁判決は、こうした事情を総じて、彼女たちに対して日本国と三菱重工が行った行為を「個人の尊厳を否定し、正義・公平に著しく反する不法行為」であったと断罪したのだ。

これは明白に事実に反します。

名古屋高裁判決

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名古屋高裁平成19年5月31日判決 平成17年(ネ)第374号

 イ)控訴人らは,大規模な軍「慰安婦」連行と,これと類似した状況と態様のもと勤労挺身隊の動員を行ったことを先行行為とし,同一視被害の予見可能性と結果回避可能性がある以上,被控訴人らは,調査,公表,責任を認めたうえでの謝罪をすべき義務があり,これを怠っている以上,被控訴人らの不作為については,本件協定の対象とはならない別個独立の国家賠償法上の違法行為や民法上の不法行為を構成すると主張する。
       しかし,控訴人らの主張する「勤労挺身隊」(さらには軍「慰安婦」を含めて)の実態に関する調査,調査結果の公表義務というのは,法令等によって規定されているものではない。また,先行行為に基づくものとして主張される義務内容も広範で抽象的なものであるうえ,結果回避の可能性の面においても抽象的な可能性に止まるものであること,加えて,控訴人らの主張する同一視被害についても本件協定の対象になるものと解すべきことからすれば,上記義務は政治上・道義上の義務・責任であるに止まり,強制連行・強制労働とは別個独立の違法行為や不法行為を基礎付ける作為義務を構成するものとはなお認め難いところである。控訴人らの上記主張は採用できない

「同一視被害」は先述の記事中の「人生被害」=挺身隊なのに慰安婦と同視されることでの諸々の不利益を指します。そのような被害が生じることまで雇い主=三菱が気を付けろという意味不明な主張がなされていたのです。

これが不法行為であるというのは、控訴人=韓国人側が主張した内容です。

しかし、裁判所の認定としては不法行為の成立を認めませんでした。

IWJの記事は岩月弁護士本人の寄稿文ですから、インタビューで勘違いした内容が掲載されてしまったという類の話ではありません。この記事は「字数制限がない依頼だった」(魚拓はこちら)ということで、紙幅の関係でまとめた、などという理屈もあり得ません。

この事実と異なる記述は、単なる誤認によるミスや形容不適切だったのでしょうか?

日韓請求権協定では日本側の義務は消滅しないというデマ

韓国大法院判決に対する安倍総理・河野太郎外相の反論は外交史に残る大失敗である!2007年、日本の最高裁は徴用工個人の請求権を認めている!! 徴用工を酷使した暗い歴史に目を背け、現代において奴隷的外国人労働力として再現しようとする安倍政権~岩上安身による岩月浩二弁護士インタビュー 2018.11.2

さらに岩月弁護士は、「日本が韓国に支払った5億ドルについて、『韓国政府が勝手にインフラ整備に流用して被害者に渡さなかったのだから、韓国政府が悪い』との言説は明らかにデマである」とし、「5億ドルは経済協力資金で、被害者救済に充ててはならないと日韓請求権協定に書いてある」と指摘した。

この内容は岩月弁護士のブログと思われるページでも確認できます。魚拓はこちら

しかも、「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟弁護団」の名義で同様の内容の主張をしています。PDF付き

2 日韓請求権協定における「5億ドル」について
 まず、多くのメディアが、事実関係として誤解を生みかねない報道をしていることを指摘したい。
 多くの場合、強制労働被害者の問題が解決したとされる根拠に日本が日韓請求権協定に従い、韓国政府に3億ドルを供与し、2億ドルを低利で貸し付けたことが挙げられる。5億ドルの提供と引き換えに被害者の請求権問題は解決したとする論調であるが、この点は多分に誤解を招きかねないことを懸念する。
 5億ドル提供の事実は、韓国政府が責任を負うべき立場にあることを指摘する理由にはなるが、個々の被害者に対して、加害企業や日本政府の責任を免責する十分な理由にはならない。
 日韓請求権協定では5億ドルは現金で払われるものとされていない。「日本国の生産物及び日本人の役務」で提供するとされている。5億ドル相当の円に等しい「日本国の生産物及び日本人の役務」が提供され、あるいは貸与されるとしている。しかも、「前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。」とされており、少なくとも法的には、5億ドルは被害救済に充ててはならない経済協力資金である。被害者に対する賠償に充てられる余地のない「経済協力資金」の枠組みは日本政府が主導したと言ってもよい。

ー以下省略ー

「韓国政府が責任を負うべき立場にある」と認めながら、日本側の責任を免責する理由にはならないと曲解しています。

日韓請求権協定の文面と韓国政府の方針を確認しましょう。

「文言解釈」に拘泥する法匪

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日韓請求権協定:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/A-S40-293_1.pdf

日韓請求権協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)の該当部分はこちら

岩月弁護士は3億ドルが生産物や労役であることから「5億ドルは経済協力資金で、被害者救済に充ててはならない」という主張ですが

これが直接的に補償金となるとは誰も言ってませんよ。

賠償請求権については日本が韓国に供与した無償3億ドルに「包括的に勘案された」のであって、それは韓国の政権も公式に認めています。

参考:徴用工訴訟 歴代韓国政府見解は「解決済み」、現政権と与党困惑:イザ!

韓国国内的には【請求権資金の運用及び管理に関する法律】によって個人に対して処理されることとなっていました。補償金として金銭を用意するかどうかは韓国政府の仕事です。

3億ドルの拠出と日本側の義務免除に対価性・牽連性を持たせ、韓国民の補償は韓国政府が行うという法的効果を生む合意がなされたという事実が重要であって、協定の文言解釈のみを行うのは事実を文字の解釈によって歪める法匪です。

交渉過程でも韓国側が韓国政府が支払うと主張

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第五次日韓会談予備会談 一般請求権小委員会会議録 第13次会談

何度も言いますが、日韓両国がどのような法的効果を発生させる合意をしてきたのか?という【事実の問題】 がすべてであって、解釈の問題にすり替えてはいけません。

まとめ:韓国側の主張は筋悪の者の典型例

【レーダー照射】北村晴男氏「論点を増やし、訳分らない状態にしようというのは嘘を言う人間の一番典型なパターン」

論点を増やして解釈を言い出すのは、筋悪の者の行動の典型パターンです。

それは北村晴男弁護士が一般的な傾向として指摘した通りです。

同じことは、レーダー照射事案における韓国政府にも言えます。

なお、日韓請求権協定の経済協力金について「賠償金ではない」という昭和45年11月19日参議院本会議での国会答弁を持ち出す者が居ます。これは賠償金という性質を否定し(韓国という国は存在していなかったのだから「賠償」になり得ない)たことに重点があり、日韓両政府が請求権協定によって国家間(政府・企業・個人レベルそれぞれで)の問題は解決されたという認識でいたということはその後の展開からも明らかです。

以上