事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「日本人と韓国人は双子の兄弟」は誰が言ったか?のアンケート結果

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日本人と韓国人は"双子の兄弟"」に言及した記事が一部で話題になりました。

この記事の理解についてアンケートを実施しましたのでアンケート結果を分析します。

これはマスメディアの印象操作の手法を考える上で示唆に富む結果となりました。

「日本人と韓国人は双子の兄弟」について書いた記事

日本人と韓国人は“双子の兄弟”“互いに劣等感”?元駐日韓国大使の発言に異議あり(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース:魚拓はこちら⇒target="_blank"1ページtarget="_blank"2ページ3ページ

アンケートツイートのリプライ欄に、元記事のURLリンクを貼りました。

ただ、この記事は3ページに跨っているのですが、敢えて2ぺージ目を貼りました。

正解を見る前に、是非とも記事内容を確かめてみてください。

アンケートの設問と結果

質問は【『日本人と韓国人は"双子の兄弟"』は誰が言いましたか?】でした。

選択肢の順番と選択率は以下のようになりました。

  1. 政治評論家・屋山太郎⇒12%
  2. 元駐日韓国大使・柳興洙(ユ・フンス)⇒65%
  3. 政治学者・サミュエル・P・ハンティントン⇒8%
  4. アメリカの生物地理学者⇒15%

さて、正解は何でしょうか?

元駐日韓国大使・柳興洙(ユ・フンス)の回答について

記事表題に『日本人と韓国人は“双子の兄弟”“互いに劣等感”?元駐日韓国大使の発言に異議あり』とあり、元駐日韓国大使の発言ということが示唆されています。

また、1ページ目の最後に「私の持つ知識から判断すれば理解不能だが、その謎を解く2つの発言をしている」と書かれています。

それは元駐日韓国大使に関する言及の流れでした。2ページ目冒頭も柳氏が主語になっているため、元駐日韓国大使についての言及が続いてることが分かります

したがって、正解は2番になります。

アメリカの生物地理学者を回答した方の分析

4番のアメリカの生物地理学者と答えた方がそれなりに居ました。これは2と迷った方が相当数居ると思われますが、ここでの正解からは外しました。

もっとも、元駐日韓国大使はアメリカ生物地理学者が書いたものに「日本人と韓国人は双子の兄弟」とあったものを引用したわけですから、アメリカ生物地理学者が初出です。

そして、社会的事実としてアメリカ生物地理学者がそのような発言をしていたと言っても差し支えないものであるでしょう。

よって、4番のアメリカ生物地理学者を解答した方も、誤りではありません

このアンケートですが設問にも問題があるということに後で気づきましたが、厳密にするとクイズにならない(質問で答えが分かってしまう)のでそのまま行いました。

テストであれば複数回答可能にし、4番も正解にしていたでしょう

ただ記事の言及の中心は2番という事が大切なのでここでは2番を正解にしています。

サミュエル・P・ハンチントンと回答した方の分析

3番の政治学者サミュエル・P・ハンティントン(ハンチントン)について。

この解答者は文章構造が分かりづらいため勘違いしたものと思われます。

この勘違いは2パターンあり得ると思います。

一つは「双子の兄弟」の引用の後に「しかし」などの接続詞が無いままハンチントンの名前が出ているのでその者の言葉と誤認したというもの。

もう一つは、直前の「アメリカ生物地理学者」と「政治学者のサミュエル・P・ハンティントン」が同一人物だと誤認した可能性が考えられます。

ただ、紹介されているハンチントンの見解を読めば「双子の兄弟」の認識を否定する内容なので、それをきちんと読めば気づけたはずです。

政治評論家・屋山太郎を回答した方の分析

1番の屋山氏を解答した方は、予想される一部を除いてかなり注意が必要です

記事文章を書いたのは屋山氏ですが、記事の1ページ目冒頭だけを見て判断し、引用された言葉であるという可能性を考えていなかったものと思われます。

しかし、記事タイトルには「""」つきで「双子の兄弟」が書かれており引用であることが示唆されていますから、記事を読んでなくとも判断保留にできたはずです。

そして、記事を読めば屋山氏がそう考えているわけではないということは分かりますから、それを怠った可能性があります。

さらに、記事を読んでも1を解答した方はアンケートの質問が「誰が言ったか」で「誰の主張・意見か」ではないから解答が複数あるものと考え、屋山氏も含まれる(引用した事が発言だ)と考えた可能性があります。

この解答者の中でも上述の解説の通りの思考過程を経た者であればいいと思います。

しかし、そうでなく短絡的に「屋山氏でもあり」と考えて解答した方は、日頃からそのように考えていると危険です。

意地悪な問題でない限り、最もありうるものを選ぶのが選択肢のある質問ですから、その思考過程をすっ飛ばして屋山氏を解答するとコミュニケーションが成り立たなくなります。

特に穿った見方もせず全部読んでも屋山氏だと考えた方はじっくり読めば正しく理解できるはずなので飛ばし読みをしていたのだと自覚すればいいでしょう。

この記事は確かに読みにくくあまり良い文章とは言えないと思いますので、ある程度仕方がない面があると思います。

タイトル詐欺等の印象操作事案への示唆

さて、回答者全体の80%が正しい理解を示してくれましたが、逆に言うと20%の方が誤解してしまったということは、どう考えれば良いでしょうか?

読解能力があるツイッターユーザー

まず、ツイッターのユーザーというのは文字を読む習慣がある人たちです。

一日中TVを見てるような人ではなく、アプリを利用しない老人は含みませんから、日本人の平均よりも読解能力が高い方であると推認されます。

そして、このアンケートは記事の内容を見てみようと思った方が回答されました。

そのような知的好奇心のある方であっても、(おそらく飛ばし読みをして)誤解してしまったというのは情報発信について考えさせられます。

わざわざ執筆者を確認するユーザーも居た

特に1番の屋山氏を選んだ方は、わざわざ1ページ目に飛んで記事の執筆者を確認するということまでした方です。屋山氏が書いた記事であるということが分かるのは1ページ目の冒頭のみです。

私が意図的に2ページ目のリンクを貼ったのは、そうした確認を取る必要を生じさせるためでした。

そうした「労力をかけた方」が誤解してしまったというのは、ある程度予想していたものの、ハンチントンよりも多いという事実に驚いています。

操作されていない印象で語られた例

上記の2つ記事は、報道機関のWEB記事が言及している内容とは異なる内容が、タイトル等からの印象で決めつけられて語られ、その認識がSNS等で拡散された事案を扱っています。

「岩屋防衛相はけしからん!」「河野太郎は弱腰だ!」

このような声が少なくない数ありました。

しかし、私が上記記事をUPしたところ、その内容を見た方の中にはそういった認識を改めた方もいらっしゃいました。

上記の事例は「マスメディアの印象操作」と言うには難しいものでした。

私もこうやって自分で検証してみて気づいた点は多くありましたが、実際の内容と異なる印象を持ってしまう可能性は誰しもがあり得るのだということに気づかされます。

人間は簡単に誤解するし、メディアは簡単に誤解させる構成を作れる

朝日新聞を読めば恐ろしいことに気づきます。

読者の認識がどうなるかを計算し文章構成によって読者自身に想像させているのです。

それは明らかに意図的なものです。

決して事実と異なる内容は書いていないけれども、新聞の読者には事実と異なる認識を植え付ける。そういうことはできてしまうのだと。

今回のアンケート結果は、そのような手法に絡め取られてしまう可能性のある人がどれくらいあるのか、ということを示唆するものとして興味深いものでした。

まとめ:誰もが誤読の被害者にも「加害者」にもなる

  1. 正しい回答をした方は80%だった
  2. ツイッターユーザーは平均的な日本人より読解力があると思われる
  3. 本アンケートに参加した方は文章に親しんでいると思われ、読解力が比較的高いと思われる
  4. そのような方であっても20%が誤解してしまった

私は題材にした記事を一度流し読みをしたのですが、誰の言葉なのか?が分からなくなったので改めて冒頭からペースを落として読み直しました。

それをしなかったら、もしかしたら私も「日本人と韓国人は双子の兄弟」と言ったのは屋山氏やハンチントンと思い込んだかもしれません。

その認識で「〇〇はけしからん」など、人に対する否定的な評価を含む情報をツイートで拡散してしまったら、比喩的に言えば「加害者」となってしまいます。

それは気を付けようと思いますし、老獪なメディアは読者の一定数はそういうものだということを見越して記事を構成している場合があるので、そのような記事は卑怯なものとして指摘していきたいと思います。

以上